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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
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なりすまし

篠川の話に和みながらも、他の場所では緊迫した状況に変わりはなかった。


「そういえば咲宮。さっきの広報部みたいに、第一高校の制服を着た奴は多いのか?」


咲宮に聞くと、首を傾げてしまった。


「さあな…。俺たちも偶然、見知った相手がいただけだからな」

「そうか」


しばらく考え込んでいると、俺の携帯電話がなった。電話に出てみると、相手は雪平先輩だった。


「もしもし、奏寺か?面白い情報がでた」


いつになく嬉しそうな声の雪平先輩が、俺の返事を聞かずに話を進める。


「なんで第十高校と一部の第三高校の奴らが津辻に従っているのか。…それは、この土地のある秘密を教えられたかららしい。嘘っぽい内容だがな」

「この土地の秘密、ですか…?」


もしやと思いハラハラしていると、雪平先輩は予想通りのことを言い出した。


「この土地の生徒会長はある一族により、なる人が決まっていると…」

「すみません。それ、本当です」


さらりと俺は答えた。


そういえば、香藤部長と白池先輩はこの秘密は知っているけど、春崎先輩と雪平先輩はこの秘密を知らないんだよな。




「え!?じゃあ生徒会長たちがこの国の征服を狙い、俺たち生徒を手下にするというのもか!?」

「そ、それは嘘です!!」

「ふう、驚いた…」


俺も驚きましたよ…。



電話先でもわかるほど、雪平先輩は安心していた。



しかし第十高校生たちは真実と嘘が交わった情報により、反乱を起こしていたのか。これも津辻の得意そうなことだな…。


「それにしても雪平先輩、この情報は白池先輩にでも聞いたんですか?」

「いや、俺が仕入れた」

「えっ、でも…」


雪平先輩はいつも救護の人と一緒にいて、そこで情報を仕入れるはずだ。そんな所にいたら、こんなに深い敵の情報をとることは不可能だろう。


そのため、よく敵の集団に紛れている白池先輩が掴んだ情報だと思ったのだが…。



俺の心を読んだかのように、雪平先輩が自慢げに喋り出す。


「今回は俺が敵の集団に潜入したんだ。白池は情報操作に専念している」

「え」

「俺が敵地にいることで、白池の情報操作の精度も増す。しかも情報操作を利用すれば、春崎も動きやすくなる」


雪平先輩はいつになく嬉しそうだった。



つまり白池先輩と雪平先輩、春崎先輩の三人は、お互いの長所を伸ばせるように協力したのだろう。


確かに白池先輩が情報操作をするとき、敵の中に味方がいれば操りやすい。



そして情報操作により、春崎先輩が行く先に敵を少なくすると、動きもとりやすく、より情報を得やすくなる。



潜入もできる雪平先輩ならではの方法だ。


「いつもは潜入も白池にやらせていたがな。情報操作に専念してくれそうだったから、俺が代わりになったんだ」

「…あの白池先輩が」


実は、今まで白池先輩が潜入をしていたのにはわけがある。

それは情報操作はどちらかというと、戦闘寄りの力だからという理由だ。


生徒に危険が迫れば、迷わず情報操作をする。しかし、敵を倒すために情報操作をすることはそんなになかった。



そのプライドも、この土地を守りたいという思いには適わなかったようだ。


雪平先輩との電話を終えた後、俺は思わず独り言を呟く。


「うーん。やっぱり白池先輩って、なんかかっこいいな」

「だよなっ!」


勢い良く希月が食いついてきた。



そういえばコイツ、白池先輩のファンだっけ。



「それより奏寺くん。俺たちそろそろ戦場に行きたいんだけど?」


篠川が外の様子を見ながら、やる気に満ちた声で言ってきた。

よく見ると咲宮も準備万端らしく、表情に気合いが入っている。



本来、これも心強いことなんだが。こいつらが広報部だと思うとな…。


なんで普通に戦闘系の部活に入らなかったんだ?



ややこしくなりそうなので、今日のところはその疑問を抑えておく。


「そうだな。だが俺たちは、嘘つき探しでもするか」

「嘘つき探し?」


希月が首を傾げた。


「ああ。さっきみたいな、第一高校になりすましている奴を倒す」

「…確かにそれができれば、この劣勢をどうにかできるだろうが。だが、どうやって見抜く?」


壁に寄りかかり、腕を組んでいる咲宮が当然の疑問を返してきた。



咲宮の言うとおり、俺だって第一高校の生徒の顔を全員知っているわけではない。そのため、顔で判断するのは不可能だろう。


だがここが、この数日間頑張ってきた俺の努力が報われる時なのだろう。



俺は静かに口を開く。


「俺はここ数日、視野を広げて情報を覚えた。例えば、戦場となる第一高校の細かい所とか」


そしてゆっくりと、その視線を外で戦っている生徒に向けた。


「今、残っているこの土地の生徒の『学年』『クラス』『名前』『所属』の全てを一致させて覚えたりとか」

「え、すごっ…」


希月が驚き、目を見開いていた。篠川も同じように驚いているが、咲宮は感心しているような態度だった。


俺は構わず話し続ける。


「だから名前とかを聞き出せば、ある程度は判別できるんだ。だが…」

「ははっ!奏寺くん戦闘能力ないもんなっ!」


なぜか笑いながら、篠川が痛いところをついてくる。その声が耳障りだったのか、咲宮が篠川の頭を軽く叩いた。


「静かに笑え。…それで情報部、俺たちは第一高校生にあったら名前を聞き出し、お前の指示を仰げばいいのか?」

「ああ、そういうことだ」

「了解した」


寄りかかっていた壁から体を起こし、咲宮は武器のボールを手に持ち始める。その時に篠川が「戦闘しながら、このなりすましの件を広報しようか?」と聞いてきたが、第一高校生が混乱しそうなので断った。


その代わり、城戸にだけは電話で伝えておくことにした。


しかし…。


「あれ?」


なぜか留守電になってしまった。

はて、今まで戦闘中に連絡が途絶えたことなんてなかったんだが…。


少し疑問に思ったが、早く戦いたいらしい篠川にせかされたため携帯電話をしまった。






下の階へ降りていくほど、敵と遭遇する回数は増える。そして面白いことに、敵と遭遇すると、必ず第一高校の制服を着た奴が応援とか言って混じってきた。


「君、クラスと名前は?」

「え。二年一組の明坂(あけさか)だけど」


希月の問いに、赤いラインが入っている制服の男子が答える。


その後すぐ、希月は俺の顔を見た。


「二年一組にそんな奴はいない。明坂は第十高校の一年にいる」

「了解!」


敵だとわかると、希月は気持ち良いほど元気よく木刀を振るった。そして拘束すると、すぐ俺の護衛をするために近くに戻ってくる。


ちなみに咲宮と篠川は、第十高校生と第三高校生相手に暴れていた。もちろん、第三高校生相手にも容赦はない。

しかしよく見ると、第三高校生も咲宮と篠川に容赦していない。



あの二人、嫌われているんだろうなぁ…。




その時、携帯電話が鳴った。



「もしもし」

「ごめんなさい。さっき連絡もらったみたいだけど、何か情報?」


焦りながらも、嬉しそうな声で聞いてきた。城戸になりすましの件を伝えると、意外に冷静な返答が返ってくる。


「ふーん…。あの留学生、なかなかやるじゃない。いい情報をありがとう!」

「ああ」


その直後、慌ただしい城戸に電話を切られた。


それから少したった後、ふと疑問を持つ。



はて。


俺は、津辻が第十高校生たちを操っていることを、城戸に伝えただろうか?

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