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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
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放課後

次の日の第一高校の緊張感は、実に恐ろしいものだった。



…第一高校とこの間戦ったばかりの第五高校が、あんなに簡単に負けてしまえば当たり前か。



本日、新聞部から無料で提供された新聞を、みんな黙々と眺めている。

俺も新聞には目を通したが、宵河を連れて行って正解だと実感した。


昨日のあの戦闘を見て、動揺しながらも宵河は写真を撮りまくっていた。希月はそのシャッター音にハラハラしていたようだが、何事もなくて良かった。



さて。


「教科書の百五十二ページを開け」


今は六時間目。放課後が近づいている。


昨日の様子からして、第十高校側の被害は少ない。今日、第一高校に奴らが来てもおかしくはなかった。

というか城戸が「私だったら、今日攻めにいく」と言っていたし、多分来る。


正直、これは厳しい。情報部だって全然準備が整っていない。

できれば城戸の予想、外れてくれ…!






そして放課後。


悲しいことに、俺の祈りは通じなかった。香藤部長がまた日記から情報を見つけたらしい。


すぐさま城戸に連絡をとると、第一高校は速やかに敵を迎える姿勢を作り始めた。


「早いなー」


俺は屋上より、校舎から寮に向かって流れていく人を見て呟いた。


「おれたちも色々と見直したからね」


一般生徒の誘導をする守衛部の一人である希月が、誇らしげに言った。希月も屋上に居るところを見ると、どうやら今回も俺の守衛に来ているらしい。


「希月…あのさ。今日は情報部に人員割いてる場合じゃないだろ?お前も戦闘部の応援に行った方が…」

「なーに言ってんだ?」


呆れたような顔で希月は俺の言葉を遮る。


「おれはこの仕事に誇りを持ってるし。まあ、確かにおれが行けば第十高校なんて…と思うけど。それより情報部が機能しない方が大損害だから」

「そう言ってもらえると助かる」


俺が礼を言うと希月は静かに微笑み、その視線を学校の周りに向ける。そしてその表情が険しくなった頃には、俺の視力でもこちらに歩いてくる集団が見えた。



本日は快晴。日差しが少しきつい。

その太陽の光を第十高校の制服のラインが反射しているのか、遠くの集団はキラキラと光って見えた。

その鈍い光は、俺たちには脅威でしかない。



集団が第一高校に着いた頃には、こちらの戦闘部も迎撃体制を整えていた。そのおかげで第一高校は静まりかえっている。

俺たちも屋上から、以前津辻と会った三階の廊下に場所を移し、黙って開戦の合図を見届けた。




そして…。


ついに、戦いは始まってしまった。





「…はい。了解」


開戦から五分、香藤部長との電話を切る。

それからは希月も俺も、じっと戦いを見ていた。



正直、凄まじい。



お互いの精鋭たちが、敷地にすぐ入ったところで戦っていた。彼らの熱意や強い思いが、離れた場所にいるこちらにまで伝わってくる。

第五高校とは違い、万全の体制で待ち構えていたため、第一高校は良い勝負を繰り広げていた。しかし…。



俺の横で、希月がぽつりと呟く。


「相手の数が多いな…」


希月の不安を抱える視線の先には、激しい戦闘から逃れ、この校舎に向かってくる敵の姿があった。

そして希月の顔つきからして、第一高校はやや劣勢ということが伺える。


「…奏寺、気をつけて」


静かに俺にそう告げると、希月は俺に背を向けた。手には木刀を持ち、廊下の真ん中で構えをとる。


それからすぐに第十高校の制服をきた男子生徒が、俺たちの前に三人ほど現れた。敵の手には鉄パイプのような、頑丈な棒が握られている。もちろんこの土地では、鉄パイプという武器はルール違反だ。


「やあっ!」


危険な武器を持った相手に向かって、希月は素早く走り込む。身に危険を感じた三人の生徒は鉄パイプを縦に持ち、防御の姿勢に入った。

構わず希月は全力で三人に向かい、力強く木刀を鉄パイプに振るう。



ガラッ、ガランッ!



豪快に三本の金属が床に落ちる、鈍い音が響き渡る。


「よっ、と」


武器を失い呆然としている敵を降参させ、希月は三人の敵を拘束した。



一息つく希月に俺は近づく。


「最初から、武器を落とさせるのが狙いだったのか?」

「うん。あれで殴られたら、おれも奏寺もさすがに危険だからね」


雑談を交わしていると、下の階から誰かが上ってくる足音が聞こえてきた。


一応距離をとって待っていると、赤いラインの制服を着た二人の男子生徒がこちらに向かってくる。


赤いラインってことは、第一高校生か。希月が声をかけないところからして、戦闘部員なのだろう。城戸に何か頼まれたのだろうか?



赤いラインの男子生徒がこちらに手を振って近付いてくる。恐らくその距離は五メートルほど。



しかし俺も希月も、そしてやってきた赤いラインの二人も油断していたのだろう。


事態にいち早く気付いた希月が、赤いラインの二人に大声を出した。


「後ろ!」


びっくりしていた二人は足を止めて、後ろを振り返った。そのうちの一人が、なんとも悲痛な声で怯えだす。


「あ…」


一番西に俺と希月がいて、俺たちから東に五メートルほど行った所に赤いラインの二人がいる。さらに東側には…。


「あ、奏寺くんに木刀くんだ。…やーっと見つけた」


いつの間にか現れた、偉そうな笑顔を浮かべる青いラインの制服を着た少年。それは紛れもなく、第三高校の広報部の篠川(しのかわ)だった。


俺が驚いてぽかんとしていると、希月が俺の頭を強く抑えてきた。


「うおっ?!」

「奏寺、体勢を低くして!」


希月により強制的に座り込んだ時、その頭上を何かが二つ、飛んでいった。よく目を凝らすと、それは片手で掴めるほどの大きさのボールだった。

…って、これ凄く見覚えがあるんだが。


宙を突き進む二つのボールは、篠川に気を取られていた赤いラインの二人の頭に命中した。赤いラインの二人は、その痛みに倒れ込む。


「も、もしかして」


ゆっくりと後ろを振り返ると、そこにはやはり広報部の咲宮(さきみや)がいる。


つまり俺たちの西には咲宮、東に篠川という最悪の状況が生まれてしまった。



そういえば、第三高校の一部の生徒はもう第十高校の味方なんだよな…?



苦笑いして二人の広報部の顔を見る。


篠川はまだ人を見下すような目で、倒れ込む赤いラインの二人を見ていた。

咲宮はいつものごとく無表情で、その手に新たなボールを持ち直している。



「な、なあ希月」


俺が小声で希月に話しかけると、希月からも同じ音量で返事が返ってきた。


「うん…。この二人と戦うとなると、少し時間がかかるかも」

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