表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
83/90

各々の課題

お昼ご飯を食べながらも、情報部の話し合いは続いていた。


「いいか?今回の反省を活かし、これから自分ができることを言ってみろ」


香藤部長が俺たちに向かって聞いてきた。まず香藤部長と一番親しい白池先輩が口を開く。


「今回は連絡とる隙が見つけられなかったから…津辻くんを見習って潜入先の人を脅す技をつけるとか?」

「てめえ、追放されるぞ…」


呆れた香藤部長が、雪平先輩に目を向けた。雪平先輩は考え込んだ後、目線は下を向けたまま口を開く。


「俺は守衛部に寮に避難させられて何もできなかったからな…。戦闘が始まったときは人に見つからないよう、影を薄くするように努力するか」

「…まあ、悪くはないが」


次に、香藤部長は春崎先輩を見た。


「体力を、つける…」


そして最後に俺を見る。


「戦闘能力を身につける…?」


俺は希月が居なくなると、自由に動けなくなるからな。


「…うむ」


香藤部長は腕を組んで、少しだけ険しい顔をした。そして、俺たち情報部員を見渡しながら、部長らしい堂々とした口調で話し始める。


「白池を除く意見は、そんなに悪くはないと思う」

「…勇雅、それどういう意味?」


白池が拗ねた真似をするが、思いっきり香藤部長はそれをスルーした。


「ただ、恐らく第十高校の奴らはすぐに攻めてくる。それまでに俺たちは、今言ったことを達成できてるとは思えねえ」

「…確かに、そうですね」


俺が戦闘能力を身につけるとして、独学で学ぶには無理がある。


となると希月あたりに助けを求めるしかないが、この状況だ。希月だって忙しいだろう。


みんなが黙り込むと、再び香藤部長が話し始めた。


「だから、長所を使え」

「長所……?」


春崎先輩が不思議そうな顔つきで呟くと、香藤部長は強く頷く。


「ああ。例えば俺は、再びクラッキングの基礎から復習し、技術の質を上げる。そして奴のセキュリティーをぶっ壊す」


段々と香藤部長の真剣な表情に磨きがかかってきた。そのため俺たちは魅入るように、香藤部長の話を聞く。


「例えば…奏寺。お前が戦闘能力を身につけるとしてだ。もちろんそれには膨大な時間を必要とする。しかし、それ以上にお前の長所を潰すかもしれねえ」

「えっ?!」


俺の長所?…って記憶力だよな?


「もし三日後に再び戦いが起きるとして、その全ての時間をかけて戦闘の練習をしたとする。それでどのくらいの戦闘能力が身につくか?」

「全く、戦場で活かせない程度しか身につきませんね」

「だろうな。ただ、この三日で全力で敵の情報を頭に叩き込んだらどうだ?」


俺はしばらく考え込む。


もし本気で集中して覚えたならば、相手高校の戦力をだいぶ覚えられる。


「そうですね。遥かにこっちの方がいいで………」


突然、(ひらめ)いた。


俺は、この間スプリンクラーを使った。

それはこの学校の地図を頭に入れていたからだ。

地図とは、その土地の情報でもある。



…これだ。



俺は今まで、敵の情報や目的物の情報しか覚えてこなかった。しかし、そのまわりのものに目を向けたら、どうなるだろうか?


先ほど思い出したスプリンクラーの件も、敵ではなく戦場となった第一高校の情報を知っていたからできたことだ。



俺は今までの戦闘を思い出していた。そういえば俺は、戦闘部と他の情報部員を仲介役がほとんどだ。だが、戦場の様子や留意すべき地形を知っていれば、もっと役にたつかもしれない。


「…何か思い付いたか?」


香藤部長が悪そうな笑顔で、嬉しそうに俺に言った。


「はい。俺って視野が狭かったんだと、改めて感じました」

「…?何が分かったかは分からないが、とりあえずお前はそれを貫け」

「はい!」


自分で言うのもなんだが、俺は元気のいい返事を返す。

さて、何から調べて覚えようか?やはり戦場となるのは第一高校になると思うため、今まで以上に詳しく調べよう。


あとは、あれも調べとくか…。



よほど楽しそうにしていたのか、白池先輩と春崎先輩が俺の姿を見て微笑んだ。


「ははっ。僕も早いところ、自分の課題を見つけないとね」

「ふふ…私も…」


ずっと考え込んでいた雪平先輩も、いつの間にか顔を上げていた。


「しょうがないな。俺も何か頑張るか」


なんとなくだが、情報部員にいつもの笑顔が 戻った気がする。きっと、先輩たちも次々と次の戦闘時に向けて準備を始めるだろう。



そしていち早く自分のやりたいことを見つけた俺は、さっと立ち上がった。


「よし!じゃあ俺は図書室行ってきます!」

「図書室?…まあ、行ってこい」


香藤部長から許可もでたため、俺は寮を出て図書室に向かった。








「これと、これと、これ。…あ、これは貸し出し禁止か。しょうがない。ここで頭に入れよう」


両手に分厚い書籍を抱え、俺は図書室の机へと向かった。そこへ数冊の本を置き、椅子へ座る。



それにしても、だ。


図書室に着くまでに、様々な場所で話し合いをする生徒の姿を見かけた。


戦闘部や守衛部はもちろんのこと、委員会でも集まっているらしい。かの風紀委員の集団もいた。風紀委員もよほど話し合いに熱が入っていたのか、俺が側を通っても気付かれなかった。


そういえば風紀委員の集団の中に、冷川風紀委員長の姿はなかった。恐らく、生徒会の会議にでも行っているのだろう。



生徒会は特に忙しくなっているはずだ。

この戦闘の件を役所に報告しようなんて話も出ているだろうが、第十高校の生徒会長が津辻により抑えられているのならば、あまり効果は無いだろう。



…さて。



俺は目の前にある数冊の本の中から、古ぼけた本を一冊出した。そしてそれを開く。


この土地には、この土地の歴史を記す書類は残されていないが、地図はなぜか残っていた。


さて、この地図は何年前のものだろうか?………に、二百年前だと?!

まだここに学校が造られる前のものか。なんでこんなものがあるんだ?


…でもなかなか興味深い。今、校門がある場所は昔は田んぼだったり、校舎の近くには井戸があったりしたらしい。おお、守衛部や戦闘部がよく使うグランドも田んぼだったのか。


数ページめくっていくと、やっと校舎の形が地図に現れた。これは約三十年前か。ここまでくると、今とあまり変わらないな。…ん?

次のページには、何やら大量の線が引かれた地図が出てきた。…何の地図た?



俺は誰もいない図書室で、ひとり黙々と記憶力を働かせ始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ