友を問う理由
想像通りと言うべきか香藤部長、白池先輩、春崎先輩、雪平先輩はぽかんとしていた。
「…あ?」
「…うん?」
「…?」
「…はい?」
そりゃあそうだよな。普通の人は『友達いるの?』なんて質問をしにわざわざ他校に赴かない。
「まあ、そうなりますよね」
そう言って、俺は先輩たちに苦笑いを見せる。
「でも、確かに俺は友達少ないですし。同級生でまともに話せるのは、希月と城戸、あとは………」
暮谷は、どっちなんだろう?
ふと疑問に思ったとき、予算会議での出来事を思い出した。
うん。俺、暮谷とも会話は出来ていた。まあ、友達と呼ぶにはほど遠いか。
そういえばあの時、暮谷が俺に何か言いたそうだったような…?
「おい、それで?」
ひとりで勝手に考え事をしていると、香藤部長からストップが入った。俺は慌てて話を戻す。
「あ、はい。津辻も母校で情報部をしていたときには、友達がいなかったそうなんです。けど俺に希月が話しかけているところを見て、気になりだしたみたいで。…ただ……」
ただ俺と津辻には、大きな違いがあった。
それは、友達がいない理由だ。
誰にも口を挟まれなかったので、俺はそのまま話を続ける。
「津辻が友達がいないのは、情報部だから怖くて、とかいう理由ではないんです」
それを聞いて、白池先輩が頷いていた。
「そうみたいだね。あの人、本来なら人を寄せつける魅力もあるみたいだから」
「そうなんですよね」
俺だって、津辻には初対面でも好印象を受けたし、良い人だろうと思わず信じそうになった。
そんな津辻なら、友達のひとりやふたりいるだろうと誰でも思う。
「けれど、津辻には友達なんていなかったんです。その理由は周りの生徒を『脅迫』していたからだそうです」
「…脅迫だと?」
雪平先輩が不愉快そうな顔で聞き返してきた。友好な関係になった相手から情報を仕入れる雪平先輩にとっては、許し難いことなのかもしれない。
この少し重くなった雰囲気を和らげる為なのか、いつもより優しい口調で白池先輩が話を進める。
「奏寺、脅迫って具体的にどんななのかな?」
「その、たまーにいるでしょう?学校側に秘密で、他校に友達作って仲良くする人」
「あははっ!奏寺と第三高校の広報部みたいに?」
「あ、あいつらとは仲良くないですよ!」
俺と白池先輩の会話を聞いて、春崎先輩がくすりと笑った。雪平先輩も少しだけにこやかな顔を取り戻す。
…さすが白池先輩だ。部屋の雰囲気が少し和やかになった。
香藤部長だけは「なにやっているんだこいつらは…」という悩める顔をしている。だが、これも情報部の雰囲気が和やかな証拠だ。
まあ、香藤部長もにこやかな笑みを浮かべれば、優しい雰囲気にはなるだろう。しかし、そんな香藤部長は想像がつかないし、あまり見たくない。だからといって、ゲラゲラ笑っている姿も見たくはない。
そう考えるとやはり、呆れる表情や黒い笑いがぴったりだ。
こんなことを口に出すと話が恐ろしくそれるので、俺は急いで津辻の話題に戻す。
「それでですね。まず津辻は、他校に友達がいそうな人と仲良くなったそうです。
そして他校に友達がいると打ち明けてくれるまで友情を深めた。
その後、その他校の友達とも仲良くなるんですが…」
俺は一呼吸を置いた。
「次第に、他校の友達を脅し始めるんです。『この学校を裏切って、僕の高校の奴と仲良くしてる』と、学校に告げ口すると言ったそうです」
「…なるほどな。それでそいつからその学校の情報を仕入れると」
香藤部長が静かに呟く。
「はい。その後、津辻の学校にいる友達にも、『他の高校の奴と仲良くしている』と、学校側に告げ口するぞと言ったようです。それで、口止めしたんですね」
その後、少し時間が経ってから春崎先輩が質問してきた。
「でも…そんなことされて、友達と他校の人は…よく黙っていたね…」
「津辻は二人に偽の依頼書を見せたそうです。『裏切り者の調査依頼』の紙を」
「…」
それから津辻は、周囲の人や偶然関わった他校の生徒の弱みや隙を見つけては、つけ込み脅し始めた。
そういった弱点を見つけられたのは、津辻が情報部だったからだ。人とすぐに仲良くなれるのは、津辻の人柄である。
話をいち早く理解した雪平先輩が溜め息をついた。
「酷い奴だな…。ちなみに、他校の奴らは情報を仕入れるためだとしてだ。同じ学校の奴らを脅す意味はあったのか?」
「生徒会への口止めのためらしいです。ただこの行いは他の情報部員からも非難を受けたため、次第に津辻は部活でも孤立したようです」
当たり前だな、という顔つきで雪平先輩が深く頷いていた。
まあ、俺も同感だ。
「奏ちゃん…。津辻が追放されたってことは、彼の悪事は結局バレたんだよね……?」
「はい。さすがに生徒会が不審に思ったらしいんです。その頃には津辻に脅されている生徒は、その土地の人口の半分を占めていたそうで…」
「学校ではなく、土地の半分だと?」
雪平先輩を筆頭に、先輩たちは目を丸くして驚いていた。
土地の半分の生徒が脅迫されていたとなると、学校同士の戦闘にも大きな影響がででくる。よって津辻の学校は短期間で三つの学校を敗退させていたらしい。
話も終わりに近づいたため、俺は一気に話してしまった。
「生徒会は脅された生徒を説得し、津辻の情報を得たそうです。そして津辻は何人もの生徒を苦痛にさせた罰として、追放されました」
俺が最後まで言葉を言い終えると、ちょうど正午の知らせる鐘が鳴った。本日は土曜日。みんな学校が休みの日だ。
この鐘により、部屋の雰囲気はリセットされたような感じがした。津辻の謎も大方判明したため、先輩たちもどこか納得がいったようだ。
「…よし」
そこで香藤部長が、得意の悪そうな笑みを浮かべて、みんなの注目を集める。
「青い髪の奴の目的も過去もわかったことだ。また戦いを仕掛けてくるだろう第十高校の奴らに、震え上がるほど礼をしてやろうじゃねえか…!」




