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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
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禁じられた戦闘

禁止とは、やってはいけないということだ。


今、禁止されたのは、戦闘行為。


つまり他校に攻め込むことは禁止されたと。


「…え?!」


希月の言うことを理解した俺は、やっと心底驚くことができた。


「え、ええ!?なんで?!」

「理由はまだ公表されてないんだけど、とにかく禁止らしい」


混乱していた俺を落ち着かせるように、希月はゆっくりと話した。それでも落ち着けなかった俺は、なんとなく辺りを見渡す。



そういえば今日は、見回りの守衛部とかも一度も見かけてないような…。



やっとの思いででた言葉は、これだった。


「わけが…わからん!」

「奏寺、とにかく落ち着いて。こういうときに情報を集めるのが情報部だろ!」

「あ!そうか!」


希月に宥められようやく俺は落ち着く。


風紀委員関係以外で取り乱したのは久しぶりだ。



俺は携帯電話を開き、真っ先に香藤部長へと電話をかけた。パソコンで情報収集を行う香藤部長は、高い確率で寮にいる。


しかし、珍しいことに電話は繋がらなかった。電話から聞こえる音からして、香藤部長は通話中のようだ。



こんな時に限って…。



思うようにいかず、俺は焦りだしていた。戦闘がこの土地からなくなる。それは一見喜ばしいことのように聞こえる。もしこれが現実世界だったら、戦争の禁止が決まったようなものだからだ。



しかし当たり前のことだが、ここは世界なんかじゃない。ここは、ただの『この土地』だ。


理由も公開せず勝手に戦闘を禁止するなんて、役所はあまりにも理不尽だ。



「奏寺!」



自分の世界に入っていると、いきなり希月の声が聞こえ、同時に風を感じる。


はっとして後ろを向くと、俺に振りかざされた一メートルほどの木の棒を、希月が木刀で受け止めていた。



この時、俺はやっと気付く。

ぐだぐだと考え込む俺は、隙だらけだったことを。


希月が俺に迫る人影と、その人影が持つ木の棒の用途を察してくれていなかったら、本当に危なかった。



希月は受け止めた木の棒を、木刀で勢い良く振り払った。すると木の棒は持ち主の手から離れ、どこかに飛んでいく。


「少し、油断しましたか?」


落ち着いた声で、希月は武器を失い焦る敵にそう言った。そして速い身のこなしで木刀を敵の腹に突きつけ、相手を背中から倒れさせる。


悔しそうだが抵抗できない敵は、手の平をこちらに向ける形で、両手をあげて降参の意味を示した。


「はぁ…助かった。ありがとう」


何もしていないのにどっと疲れた俺は、希月に礼を言った。希月は敵の腕を縛りながら、こちらに笑いかける。


「それがおれたちの仕事だからね。…それより」


俺と希月は、希月により拘束された敵に視線を落とした。それに気付いた敵は、そっぽを向く。

この敵は制服と顔付きからして、男子生徒だった。体を鍛えているのか、体つきも良い。正直見た目だけなら希月より体が一まわりも二まわりも大きいため、希月より強そうな印象を受けた。


そして一番の問題は、コイツが着ている制服にある。


希月はこの敵が着ている制服のラインの色を見て、俺に質問をしていた。


「ねえ奏寺。この制服のラインの色って、どこの高校?」


太陽の光に反射され、上品に輝く色。その品のある雰囲気は、高級感も演出してくれるのだろう。


「コイツの制服のラインの色は銀色…。第十高校だな」


俺は敵に少しだけ言葉を投げたが、敵に無視されてしまった。黙り込む敵に構わず、希月は守衛部の仲間を携帯電話で呼ぶ。


その時、ちょうど俺の携帯電話にも香藤部長から着信が入った。


「はい、もしもし」

「奏寺か?やはりお前も例の戦闘の件のことで連絡してきたか?」


お前も、ということは他の部員からも問い合わせがあったのだろうか。


「はい。戦闘の禁止って、本当なんですか?」

「ああ、本当だ」

「な、なんでですか?」


俺が香藤部長に質問をした瞬間、拘束した第十高校の生徒が口を開いた。


「めでたい奴だな。この土地のいいなりが…!」


俺と希月は、それぞれ携帯電話を持ちながら、第十高校生を見た。第十高校生の顔には不適な笑みが浮かんでいる。


守衛部との連絡を終えた希月が、第十高校生に近づいた。


「どういう意味ですか?」

「さあな」



その時だ。


遠くもなく、近くもない。そんな位置から何かの音が聞こえてきた。

まばらで統一感がなく、それでいて数は減らない。その音はだんだんと大きくなる。時折聞こえる少し違う音が、俺たちの危機感を煽った。


「すっごく嫌な予感がする…」


俺は電話先の香藤部長でも、そばにいる希月にも話しかけることなく、独り言を呟いた。

希月も俺と同じことを考えたらしく、再び木刀を強く握り締めている。



そんな状況を察したかのように、香藤部長は電話の向こうで溜め息をついた。


「そうか。もう来たか…」

「あの、あれはいったい…?」


ついに肉眼でも確認できるほど近くに来たあの音の正体は、生徒の群れだった。軽く五十人を超えるほどの人数が、こちらに武器を持ってどんどん近付いている。


もちろんとも言うべきか、その制服には銀色のラインがあった。



これは明らかに戦闘だよな?

でも、戦闘は禁止されてるし、なにより何の連絡もないばず…!



言葉を失った俺に、香藤部長が説明を入れる。


「第十高校の付近を徘徊していた春崎の情報によると、第十高校の生徒会長が、この土地に反感をもった生徒を抑えられなかったらしい」

「…え?」


この土地に反感?

しかもまた第十高校が?


「っていうことは、この土地に従わなくなった生徒たちが、暴走してるということですか?しかも、第一高校に殴りこみに来てますけど!」


こちらに敵意を剥き出しにしている生徒の群れは、そのスピードを緩めることはなかった。この異様な光景に気付いた第一高校の生徒たちの、困惑の声が聞こえ始める。



だが、こんな状況にも関わらず、電話先の香藤部長は余裕そうな声色でこう言った。


「全て例の転入生の仕業だろう。こいつは…かなりの厄介者らしい」

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