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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
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予算会議

第一高校の『予算会議』。


それは白池先輩の言うとおり、第一高校の各団体全てを対象とした、予算会議だ。



この土地では、各高校に均等な金額が予算として与えられる。そして第一高校の場合は、校舎や校舎周辺の管理費、維持費などの諸経費を抜いたあと、残りの予算を部活や委員会に回す。


そしてもちろん予算には限りがある。その予算をオーバーする事は、この土地では絶対的に不可能だ。

だからこの予算会議は、各団体による予算の取り合いとも言われている。



しかも残った全部の予算を、各委員会と各部活あわせてで取り合う。

何故か予算を半分に分け、片方は委員会で取り合い、もう片方は部活で取り合う、という形式ではない。




白池先輩から予算会議が予定より早まった話を聞いた次の日、俺は既に予算会議を行う教室に来ていた。


せめて委員会と部活を分けてほしいな…と思いながら、俺は予算会議の教室を見渡す。



ここはどこにでもありそうな会議室だった。

長い机が、上から見たら中が空洞の長方形になるように並べてある。それにより、隣の人との距離は近いものの、向かい合う人とは遠くなる形になっていた。



しかも第一高校の全ての委員会と部活が集まるということで、机の数も椅子の数もかなり多かった。


「…!」


何より安心したことは、机の上に団体名が入った紙の名札が置いてあり、しっかりと情報部の名札も用意されていたことだ。



よかった…!


風紀委員から追われたり、大抵の生徒から避けられているけれど、情報部も部活としてちゃんと認められていたんだ…!



これは感激に値する。寂しいことに、これに共感してくれる人はいないだろうが。




気が付く頃には、人も段々と増えてきた。

ちなみに俺の隣には名札を見る限り、美化委員と広報部が来るらしい。もちろん、この広報部とは第一高校の広報部であるため、どこかの悪質な広報部とは全くもって別物である。



その時また、新たに人がここへ入ってくる。今度は女子と男子の二人組だった。その男子は俺と目を合わすと、驚いていた。


「…あ」


思わず声を漏らす男子。


「…」


それを聞かなかったふりをする俺。


今入ってきた二人組は、戦闘部だった。女子の方は部長で、男子は暮谷だった。



なんか俺と暮谷って、いつも気まずい雰囲気になるんだよな…。



恐らく暮谷も気まずいと感じているのか、すぐに俺から視線を外した。同じく俺も目をそらし、再び机の名札を見る。



やっぱりこの名札、何度見ても嬉しいな。



情報部の文字が入った名札で心を躍らせていると、背後からこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。まだ両脇の椅子が空いていることから、美化委員か広報部のどちらかだろう。



再び興味を名札へと戻し、機嫌をよくする。

すると、先ほどの足音はぴたりと止まった。


「…奏寺くん」


すぐ後ろから、俺の名前を呼ばれた。ずっと聞こえていた足音の主だろうか。


ゆっくりと振り返る。そしてすぐ、俺は何か納得したような、諦めたような返事をしてしまった。


「ああ…」


暮谷は困惑したような顔で俺の背後に立っていた。



いったい何の用なのだろうか。



話しかけてきた暮谷は何故か黙り込んでしまう。本来なら何か喋り出すのを待つのだが、この重い空気に耐えきれない。なんか悔しいが、俺から話を誘導した。


「なんか、用?」

「…うん。あのさ…聞きたいことがあってさ」


初めは迷いがあったものの、吹っ切れたのか声がはっきりとしてきた。


暮谷が俺に聞きたいことか。なんなんだろう?純粋に気になるため、場を和ますために俺は笑ってみせる。


「情報部の苦情以外なら聞くけど?」


こちらから笑ったせいか、暮谷の表情が少し和らぐ。


「そんなんじゃないって。実は───」


暮谷が話し出した途端、彼の後ろにある人物現れる。そいつは暮谷より背が高く、恐ろしく、危険な…。



「なぜ情報部がここにいる?」


低い声が俺に突き刺さる。暮谷もいきなり背後から聞こえた声に驚き、勢い良く振り返っていた。



もちろん、と言って良いだろう。

俺に低い声で話しかけたのは、冷川風紀委員長だ。


冷川風紀委員長の質問にやや不満を持ちながらも、俺はあの素敵な名札を見せつけた。


「どうですか?冷川風紀委員長。ちゃんと情報部の名札が用意されているんですからね?」


冷川風紀委員長が渋い顔で名札を見ていた。そして自信ありげな俺に、冷たい言葉を浴びせる。


「…本来、予算会議には部長が来るものだが」

「その部長の都合が悪いときに助けるのが、副部長である俺の役目です」

「都合が悪いとき、か」


この部屋の生徒の視線は、俺たちに向いていた。今気が付いたが、もうかなりの人数が集まっていた。


そして、また人が入ってくる。


「あれ?皆、早いね」


その声に、教室にいた全員が反応した。注目の的となったのは、葉山副会長だ。


葉山副会長は皆の視線に首を傾げつつ、テーブルとは少し離れた場所にある教卓へと移った。教卓につき、教室を見渡した葉山副会長がやっとこの変な雰囲気に気付く。

やがて、葉山副会長は俺の前にいる冷川風紀委員長を見つける。


「あ、冷川。また情報部をいじめているの?」

「…あぁ?」


葉山副会長のお叱りに、不機嫌な返答をする冷川風紀委員長。


既に俺の中では、情報部にも平等な葉山副会長はめちゃくちゃ良い人として認識されている。さらに冷川風紀委員長といる時によく現れるため、会う度にどんどん好感度が上がっていく。



葉山副会長は自分の手を軽く叩き、再び全員の視線を集めた。


「さ、それじゃあ予算会議を始めます。皆さん、指定の席に着席願います」


葉山副会長の指示に従い、冷川風紀委員長は俺から離れていく。その際俺に向かって舌打ちしていたのは気のせいでしょうか、冷川風紀委員長?



無事に皆が席に着いたところで、葉山副会長が話を始めた。




あれ?何か忘れているような…?

………?…まあ、いいか。



俺は何を忘れてしまったか思い出すことなく、会議に集中した。




そのころ、俺に忘れられた暮谷は自分の席で小さな溜め息をついていたらしい。

次とそのまた次の話は、香藤部長の一人称で語られる話になります。

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