表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
73/90

青い髪の青年

俺は驚きすぎて、数秒間固まっていた。

そのなかで、青い髪の男子生徒がこちらを振り返り、俺と目が合う。


青い髪の男子生徒はごく自然な驚きの顔を見せた。そして、次の瞬間には優しい笑みを俺に向ける。


「こんにちは」


男子生徒は優しい声で挨拶をしてきた。


「こ、こんにちは」


俺も急いで返事を返す。少し声が裏返ったが、青い髪の男子生徒は微笑んだままだった。



なんだか、優しそうな人だな…。



俺の彼の第一印象はそれだった。



「君は、ここの高校の人?」


青い髪の青年が、第一高校を指差した。



声質は低いが、優しくゆっくりと話すため柔らかい印象がある。顔も割と中性的で、髪の青さが神秘的な雰囲気を出している。


俺は少し青い髪の男子生徒に見とれていたが、我に返り返事をした。


「そうだ。……ところでお前は…?」


ここで、俺はやっと冷静になれた。



今、青い髪の男子生徒の情報は少ない。


…それならば俺がここで情報を引き出さなければ。



にこりと笑った青い髪の男子生徒は、穏やかな口調で答えた。


「僕は最近、この土地の第十高校に転入した、津辻(つつじ)(せき)。よろしくね」


うわっ。


全ての怪しい情報が、今、ここに…!



一応この動揺を顔には出さないようにしたが、これほどの驚きだ。もしかしたら、この津辻にもバレたかもしれない。



というか津辻って。

春が髪をオレンジに染めた原因を作った奴じゃなかったか?あまり聞かない名字だし、恐らく同一人物だと思うが…。


津辻のことを色々と考えていたら、つい、いつもの癖で口を動かしていた。


「津辻跡。第十高校の二年生の二組。出席番号は二十三番…」

「………え?」


津辻が一歩後ろに下がり、驚いた表情を見せていた。




しまった、しまった、しまった!


俺は心の中で嘆く。



俺は白地先輩が第十高校からとってきた生徒の名簿を完全に記憶した。その記憶を探り、津辻という人物を発見したため、思わず口に出していた。



こんな失態、今までしたことなかったのに。



俺が混乱状態を抜け出せないでいると、津辻がこちらに近付いてきた。


「そういえば…君の名前は?」

「えっ?あ、ああ。俺は奏寺生有だ」

生有(いう)?」


不思議な物を聞いたように、津辻は俺に聞き返した。


「ああ、それが俺の名前だ。言いにくくてしょうがないが」

「そう?でも、良い名前だと思うよ?」


津辻がにこりと笑う。なんだか安心感のある笑みだな。

俺が少し油断したところで、津辻はその隙を突く。


「それで…生有くんはどうして僕のことを知っていたの?」

「…」


いきなり下の名で呼ばれたことに動揺する事もなく、俺はこの場を切り抜ける方法を考える。



さて、どうするか。



こいつはまだこの土地の制服こそ着ていないが、恐らく第十高校の留学生で間違いは無いだろう。想像以上に滑らかな日本語を話すが、たまに違和感のある発音もする。


そして何よりもしこれが嘘で、ほかの高校の奴か、あるいは第十高校の奴が留学生になりすましたとして、何かメリットがあるだろうか?

あったとしても、要人でもない俺にその姿を見せる意味がわからない。俺が情報部だと知っていれば、効果はあるかもしれないが。



しかし、俺が情報部だと知る第一高校以外の生徒は少ない。


まず湖上高校の霧丘(きりおか)と、そこの生徒会長。まず湖上高校が第一高校に喧嘩を売る目的も、喧嘩を売って得られる利益も無いだろう。


後は第三高校の広報部のあの二人だが、まあ…奴らは第一高校に自ら乗り込むタイプだ。わざわざ偽の留学生など投入しないだろう。


そして強いて言えば(たき)も知っているが、あいつはもうこの土地にはいないと聞いている。あれだけのことをやったのだから、退学が妥当だろう。



「なぜ俺が君のことを知っているのか。それはな…」


一か八か、いつも通りに「情報部だからだ」と言ってみることにした。

まあ、いつもの事だしいいか、と思い。


しかしその言葉は、この津辻により一刀両断された。


「もしかして、生有くんが噂の情報部?!」

「……………………そうだ」


津辻の顔は、なんというかキラキラしていた。それはまるで、何か素敵な物を見つけた子供の笑顔のように。


一方の俺はお察しの通り、ことごとく自分のペースを乱され、面白くない。


「よかったー!ぜひ情報部には会ってみたかったんだ」

「なんでたよ」

「だって、この土地に一つしかない、特殊な部活だし」


単なる物好きか。



冷めている俺に気付かないのか、津辻はまだ嬉しそうにしていた。


「まだここに来て三日しか経ってないのに、本当にラッキーだったよ」

「三日、か」


そういえば香藤部長もそんなこと言っていたな。


……ん?なにかおかしくないか?



確か湖上高校の生徒によれば、青い髪の青年は夏期休暇前に見られている。だが、こいつは三日前にここに来たと言った。


そういえば証人の件では、夏期休暇中に青い髪の青年を見たとか言ってたな。


ということは、青い髪の奴は二人いるのか。それとも、こいつが嘘をついているのか…。



こうなると、例の証人の集まりの第十高校の反応が気になるな。



俺は目の前にいる青い髪の津辻に、目を向けた。


「お前さあ…」


気になりすぎる事柄を聞こうとした途端、津辻の携帯電話が鳴りだす。


「おっと、生有くんごめんね」


そう言い、津辻は携帯電話を開き、通話を始めた。



…携帯電話には銀色を使ったデザインか。第十高校っていうのは本当みたいだな。


津辻はまだ制服をもらっていないのか、真っ白な制服を着ていた。本来、第十高校は銀色のラインがひいてあるが、こいつの制服にはそれがない。


「…わ、わかりました。帰ります」


悲しそうな、困ったような顔で津辻は電話を終えた。見た感じ、勝手にふらふらしていたのを怒られたのだろう。



津辻は力のない声と共に、俺に小さく手を振った。


「戻らなくちゃいけなくなって…。それじゃあまたね」

「…ああ」


とぼとぼと歩く津辻の背中は、なんとなく不安を感じさせられた。なにか、嫌なことでも起こりそうだな。



そして意外なことに、俺は津辻に対してそんなに悪い印象は残らなかった。むしろ、好印象といっても良いくらいだ。


理由は、あの笑顔だろうか。



俺は津辻の姿が見えなくなる前に、この場を離れた。









「青い髪の奴に会った?!」


前回の失敗を繰り返さないため、今回はすぐに香藤部長に電話で報告を入れた。香藤部長の声の後ろで「えっ?」という白池先輩の声も聞こえたので、恐らく二人も寮に戻っているのだろう。



青い髪の青年こと津辻跡と別れた後、俺は走って寮に着き、電話をした。そのため汗が滝のように流れている。


俺は汗を近くにあったタオルで拭い、香藤部長へ返事をした。


「はい。第一高校の目と鼻の先で」

「奴はそんな目立つ所に出没したのか。そいつはなに考えてるんだ?」

「それが、俺にもさっぱりでして」


とりあえず、津辻の特徴を簡単に述べ、俺が疑問に思ったことも伝えた。

すると香藤部長も少し考え込む。


「夏期休暇中に目撃されたのは青い髪の青年。そして一昨日この土地に来た留学生も青い髪の青年、ときたか…」


やはりこの青い髪の青年らは別人なのか?


香藤部長も黙り込み、色々と頭を整理しているらしい。俺はそれが終わるのをじっと待つ



予定だったのだが。


「……っ?!おい!おまえっ………」


香藤部長らしい慌てた声が一瞬にして遠くなる。何が起こったのかと考える間もなく、白池先輩の声が届いてきた。


「あ、奏寺?白池だけど。とりあえず、雪平の証人の件の話を聞きたいってことでしょ?」

「え?ええ、まあ…」


香藤部長の怒号が電話の遠くから聞こえてくる。それでも白池先輩はいつも通りの口調で、楽しそうに話し出した。


「それがね。雪平が言うには、その集まりに第十高校の人が来れなくなって、明日の夜に延期になったんだって」

「そうなんですか!?」


またしても第十高校か。


「だから奏寺は奏寺で、明日に備えた方がいいよ?」

「明日ですか?なんで俺が?」


白池先輩にそう聞くと、勿体ぶらずにさらりと答えてくれた。


「明日は、各団体の『予算会議』だから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ