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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
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集う証人

「そういえば、今更なんですが」


静まり返った部屋で、俺は香藤部長に質問をした。


「雪平先輩はどうしたんですか?」


盛り上がっていたので気が付かなかったが、確実に部員が足りない。いつもなら、雪平先輩がここらへんでおやつを作ってくれるので、何か物足りなかった。


香藤部長も忘れていたのか、少しだけ冷や汗をかいている。


「あいつは生徒会長と冷川(ひやかわ)風紀委員長、葉山(はやま)副会長と共に、この土地の会議に行っている」

「…え?!生徒会じゃない雪平先輩が、なんで一緒に?」

「証人だ」


証人?

この土地で裁判でもやる気なのだろうか?



それに生徒会長こと叔父さんと、冷川風紀委員長に葉山副会長といえば、生徒会でもトップクラスの権力者だ。

そんな人達が一度に会議に赴くなんて、前代未聞だろう。


「証人となる人は他にもいたのに…なんで雪ちゃんが選ばれたの…?」


春崎先輩もこの件に関して既に知っているのか、興味深そうに香藤部長に訊ねていた。


「ああ。冷川風紀委員長たっての希望らしい。一番信頼ができて、人望があるとかで」


香藤部長が真面目に答えたにも関わらず、俺は高ぶる感情を抑えることが出来なかった。


「ふふふ、ふふふ…ふふふふふふ」


先輩方が一斉に、不審な物を見る目で俺の方を見る。



そりゃあ後輩がいきなり奇妙な笑い声を上げたら、そうなるか。


しかし俺の笑いはなかなか収まらない。


「ふふふふふ、ふっふっひっ、ひっひっひっひっひっひっ…」

「奏寺、とても楽しそうだね?」


堅い顔の香藤部長と春崎先輩とは違い、白池先輩は面白そうな物を見る目で俺に声をかけた。


俺はやっとのことで笑いを抑え、笑いすぎで流れた涙を拭う。


「いやぁ…滑稽(こっけい)だ、と思いまして」

「滑稽?」


白池先輩がきょとんとした顔になる。俺はそのまま説明を続けた。


「あれだけ情報部が嫌いな冷川風紀委員長が…情報部の雪平先輩に信頼と人望があるって…くくくくく」


抑えてた笑いが再び一気にこみ上げてきた。俺は机に顔を伏せる。


確かに雪平先輩は人望が高い。表向きはとても良い人であるのは、間違いがない。

そして雪平先輩は自分が情報部であることを隠しているのだから、冷川風紀委員長は知らなくて当然だ。



それでも…これは愉快だ!



そんな俺を冷たい目で見る香藤部長に、困惑した顔をする春崎先輩。

白池先輩はいつもの笑顔になっていた。


「あははっ!奏寺もだんだん悪くなってきたね」







落ち着いてきたところで、俺は未だに証人が何なのか知らないことを思い出した。


まだこちらを冷めた目で見てくる香藤部長に話しかけるのは、勇気がいるがしょうがない。


「その…証人について、もう少し詳しく教えてください」

「……。まあ、お前も知っていた方がいいだろう。『青い髪の青年』の目撃の件だ」

「青い髪の青年?」


俺が聞き返すと、香藤部長は小さく頷いた。


「夏期休暇中に青い髪の青年の目撃情報が、各学校から寄せられたらしい。それの真相を探るべく、その青年を見た者の一部が証人として召集された」


青い髪の青年、か。



正直な感想としては、オレンジの次は青か、ということだ。


湖上高校の元生徒会長の孫の春の件が終わったら、また似たような奴が絡んでくる。



この明らかな面倒ごとに、俺は溜め息の一つや二つ、ついても良いくらいだろう。



しかし俺はこの時、自分の記憶を遡っていた。


「…」


無言で口を手で抑えるようにして、必死に記憶を探る。その探しものはすぐに見つかり、俺は思わず目を見開いた。


「ど、どうした?」


香藤部長が俺の異変に気付き、声をかける。しかしその声は、俺の耳からすぐに消えてしまった。




何で忘れていたのだろうか。




確か夏期休暇明けに広報部と会った際、制服のラインの色を見たときにも、こんな事になったのに。


彼ら広報部のいる第三高校の制服のラインの色は青。その時に、ぱっと思い出しておけば良かった。


「古代宝探しを始めたばかりの時、霧丘(きりおか)と合流するために湖上高校の近くに行ったんです」


そこで、オレンジの髪の不審な女子に会ったと言った俺たちに、霧丘は確かにこう言っていた。



『オレンジは知らないけど…青い髪の人なら、湖上高校の近くで見た人が何人かいる』



正直、思い出したからといって何か意味があるのかといえば、無い。



それにしても、何でここまで忘れていたのか、というくらいすっかり忘れていた。まさかその青い髪の人間がこんなに話題になるなんて。


せめて先輩方に報告しておけば、夏期休暇中に情報部で調査が出来ていたのかもしれないのに…。


「失態です…」



記憶力が自慢である故に、割とショックであった。

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