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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
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守られた情報

「第一高校、勝利!!」の新聞が出回った次の日の放課後、俺は真っ直ぐ寮に帰宅した。


第一高校はすでに、第十高校の話題で持ちきりになっていた。一昨日の勝利によるお祝いムードが一気に冷めてしまったのは、少し寂しい気がする。



さてさて。


俺は部屋の窓の鍵とカーテンを開けた。すると、涼しい自然の風が、部屋にすっと入ってくる。


その風に感謝する暇もなく、俺はせかせかと動き出した。部屋を簡単に片付けて、飲み物があるかを確認する。


しばらくすると、ドアとノックする音と、声が聞こえてきた。


「香藤だ」


俺はドアを開けて香藤部長と、その後ろにいた白池先輩を招き入れた。

慣れ親しんだ俺の部屋で、二人は定位置に座った。香藤部長の顔をみると、少しだけ疲れが見える。


「香藤部長、もしかして疲れてます?」

「まあ、少しな」

「やっぱり、戦闘が続いたからですか?」


香藤部長は首を横に振った後、堂々とした声で言った。


「戦闘の時の情報収集なんかで疲れねえよ」


隣でくすくす笑う白池先輩が、俺に説明をしてくれた。


「勇雅に最近ライバルが出来たんだよ」

「ライバル…?カエルの大魔王に…?」


カエルのライバル…つまり、アメンボか!と言おうとしたら、香藤部長に睨まれたのでやめた。

しかし、ライバルって、何のライバルだろうか?



俺の疑問を察した白池先輩が、説明を付け足した。


「セキュリティーシステムだよ。どうしてもそのセキュリティーに引っかかって、クラッキングできないみたいでね」

「セキュリティー…ですか」


セキュリティーに引っかかる、か。今まではそんなことなかったのに。

というか、香藤部長に突破できないレベルのセキュリティーなんて、今までなかったのに。


俺は、その時ふと、嫌な予感がした。


「その…もしかして…その破れないセキュリティーがあるのって…」

「ああ。第十高校だ」


またかよ!と叫びたくなった。


苛々している香藤部長が、ぼそりと不満をもらしていた。


「やはりあの留学生のせいか?留学生が編入したのは昨日だ。セキュリティーが厳しくなったのも、昨日からだ」

「そうだね、昨日までは普通に留学生のことも、第十高校のことも調べられたし」


白池先輩もさすがに今回は笑っていなかった。俺もだんだん気持ちが沈んでいく。


「留学生…いったい、どんな奴なんですかね」


留学生が来ることは情報部も掴んでいたが、そいつの名前や性別、容姿は一切分からなかった。そのため、実はずっと気になっている。


その時、白池先輩が鞄の中から書類を取り出し、テーブルの上に広げた。


「一応、生徒会室に忍び込んで、クラス名簿はコピーしてきたけど」


テーブルの上には、十数枚の紙が並べられた。留学生の出身国の言語は英語。そのため、名前がカタカナ表記になっている者が居れば怪しいのだが、漢字の名前しかない。この土地に来るにあたって、日本名を用意したのかもしれない。それとも、元からあったのだろうか。


俺は名簿を受け取り、とりあえず生徒名を記憶する事にした。

第十高校の全校生徒は約三百人。まあ…一日でいけるな。


「無理はだめだよ?」


俺の心を読んだかのように、白池先輩が忠告してきた。


「だ、大丈夫ですって。このくらい三時間もあれば余裕で───」

「失礼するね…」


俺が話していると、いつものごとく軽やかに窓から春崎先輩が入ってきた。春崎先輩は俺の部屋に足をつけると、一瞬にしてカーテンを閉める。春崎先輩は、この一部始終の動作を無表情でこなした。


「お疲れ様です、春崎先輩」

「お疲れ様」

「…お疲れ」


同時に俺たち三人の挨拶を受けた春崎先輩は、少しだけ口角を上げた。


「お疲れ様…」


春崎先輩も定位置に座り、少しだけ雑談を交わした。香藤部長と白池先輩はクラスが同じだが、春崎先輩と雪平先輩は別のクラスらしい。それゆえに同じ学年とはいえ、関わることは滅多にないようだ。


「やっぱり…今は…第十高校が話題の中心だよね…」


春崎先輩がぼそりと呟いた。俺たちの世間話は、だんだんと部活の本題へと近付いていく。

そこで俺は紙を取り出し、ボールペンで書き込んでいった。


「最初に敗退したのは地下高校。次に敗退したのは…」


次々に敗退していった高校名を挙げ、紙にメモする。最新の第十一高校を書き終わったところで、現在まだ残っている高校名を書いた。


「残ったのは第一高校、第三高校、第五高校、第十高校、…そして湖上高校か」

「少ないな…」


香藤部長が苦い声で呟いた。



夏期休暇の一件で忘れがちだが、第一高校は第三高校と特に仲が悪い。


第五高校にはこの間攻め込まれたばかりだし、第十高校は今は色んなところに喧嘩を売っている。


友好関係にある湖上高校は、こういった争いに関与しない姿勢を示し、それを実行している。



つまり…。



第一高校にとって、とても不利な状況にあるのは間違いない。

俺たち情報部は第一高校の生徒にも怪しまれてはいるが、一応第一高校生である。そのため、できるだけ敵の情報は集めておきたいところだが…。


「みんな警戒態勢を強め始めたね。敷地に入るのも一苦労だったよ」


昨日、第十高校に潜入した白池先輩はこう語った。


「そうね…。私は第五高校に行ったけど…見張りが以前より倍以上に増えてた…」


春崎先輩は目を細めながら、悔しそうに呟いた。


「第十高校のセキュリティーは高くなった。他の高校は今まで通りだが…」


香藤部長が舌打ちをした後、苛立ちながら言った。



そして、俺は。


「最近、覚える情報が増えたような気がしますが」


率直な感想を述べた。


すると、納得したような顔で香藤部長が口を開く。


「ああ。それはこの頃、第一高校にクラッキングしてくる奴がいてな」

「えっ?!」


俺は驚き、声を上げた。


第一高校もついに情報を盗まれる立場になっていたのか。


「なるほど!だからインターネットに繋がっていない、俺の頭に情報を入れるようになったということですか」


納得できるような、なんだか引っかかるような…。


そんな俺をよそに、香藤部長は大きく頷いた。


「そうだ。だからどんな拷問を受けようが、情報は守れよ」

「う…。は、はい」


俺が苦い返事をすると、くすりと春崎先輩が笑った。


「特に…第三高校の広報部には気をつけた方がいいかもね…。拷問とか…得意そう」

「怖いですから」


確かに広報部は得意そうだ。シャレにならない。


「あははっ。もし広報部に捕まったら、自分の頭殴って記憶を失うしか無いかもね」


笑いながら、白池先輩は恐いことを言った。


もうこれは、確実に…。


「先輩方、後輩をからかって遊ばないでくださいよ…」


溜め息を交えながら、俺は楽しそうな三人の先輩に苦情を伝えた。

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