緑の第二高校
「これで生徒会からもらった活動費は、パァってことですかね?」
待ち合わせのコンビニの近くにあるショッピングモールに、俺たちは立ち寄った。
俺と白池先輩はトイレにこもり、着替えて外に出る。
「うわー。違和感あるね」
俺たちは、第二高校の制服を着た。
このあたりの高校の制服は、デザインは同じだが色違いになっている。
どの高校もメインは黒だが、模様のラインやネクタイなど細かな部分の色が違う。
ちなみに俺たち第一高校の制服は『赤』、第二高校は『緑』、次回潜入する第三高校は『青』だ。
「赤で見慣れているから落ち着かないです…」
「だね。早いところ終わらせようか」
俺たちは第二高校に向かった。
第二高校は、第一高校から電車で一駅の所にある。
「へえ…」
俺は思わず、第二高校に見とれてしまった。
校庭の周りにはたくさんの木が生えており、その木の下や校門付近には色とりどりの花が植えられている。
自然の華やかさが生かされていて、俺のような庶民でも素晴らしさがわかる。
「なんか学校は好印象だね」
「はい。凄く良いところですね」
校門をくぐったあと、俺たちは二手に別れた。
俺はひたすら校内の掲示板をみて、行事関係の貼り紙を探していた。
今頃、白池先輩はここの生徒を装って生徒会関係者に会っているはずだ。
ただ、少しおかしい。
なぜこんなにも、すんなり潜入できたのだろう。
俺の学校では、校門付近にある装置にカードキーを当てないで敷地に入ると、警報が鳴る。
これで他校の生徒や不審者を、大方シャットアウトできるのだ。
ちなみに白池先輩が遊んだ例の事件の時は、独自開発された不正のカードキーを使って侵入されたとか。
それよりもさて。
侵入したのがばれなかったのはいいが、校舎にはまだ大量の生徒がいる。
できれば最小限の関わりしか持ちたくない。
俺はひとまず、人気の少なさそうな図書室に向かうことにした。
図書室へ行く途中、白池先輩と真面目そうな男子生徒が話しているところを目撃した。
「だから先輩、僕も生徒会に入りたいんです」
「そ、そんなこと…僕にきかれても…」
困り焦る生徒会関係者らしき男子生徒と、何かを楽しんでいるような白池先輩。
…まあ、見なかったことにしておこう。
関わると面倒そうな雰囲気だ。
そう思いながらも、俺の視線は白池先輩たちにずっと釘付けになっていたらしい。
「うおっ?!」
「きゃっ?!」
誰かとぶつかり、衝撃で後ろに倒れてしまった。
相手も同じらしく、同じタイミングで顔を合わせ、苦笑いする。
先に俺が謝った。
「すみません…大丈夫ですか!?」
相手が笑顔を返してきた。
「はい、こちらこそすみません」
どうやら俺とぶつかったのは女子生徒らしい。
第二高校の女子生徒用の制服を着ている。
これは、ちょうど良いかもしれない。
「あれ、もしかして2年生の人ですか?」
そう聞いてみると、相手はきょとんとした。
よく見ると、その女子生徒は俺と同じくらいの、やや茶色に近い黒い髪をしている。
髪は腰あたりまで綺麗にのびていた。
「ええっと…私は1年ですが。あなたは?」
「俺も1年。じゃあクラスが違うんだ。君のこと全然知らないや」
「ふふ、私も」
1年生でも、体育祭が何月に行われるかくらいは知っているかもしれない。
俺はこの生徒から情報を集めることにした。