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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第三章 『情報部』の戦闘
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予感

新聞部と会い、いつも通りの商売を終えた俺は、屋上にいた。もちろん、手には新聞がある。フェンスに寄っ掛かり、座り込んでまじまじと新聞を開く。


「第一高校、勝利!!」と書かれたその新聞を、俺は買うつもりだった。しかし新聞部が無料でくれたため、ラッキーだと思いながら記事を読む。まあ、勝手に黒板に貼っていたくらいだしな。



幸いにも今日は風が弱い。本来ならまだ暑い季節であり、風が弱いのは致命的である。しかし、本日のこの土地の天気は曇りで、気温も低め。

若干雨の心配もあるが、新聞を読むには絶好の気温だ。



俺は端から新聞を読み始めた。






「…」


長い文を読み終えた疲れか、軽いため息が出た。


新聞を読む限り、やはり暮谷は大活躍だったらしい。第五高校の強い戦闘員を複数人倒したと書かれていた。


今朝のクラスの沸きようからして、かなりの活躍をしたのは察していたが。それにしても、暮谷ってそんなに強いのか。



思い返してみると、一度戦ったところを見たことがあった。

確か第二高校だった気がする。



懐かしいな…。



決して良いことばかりではない、複雑な過去に浸っていると、屋上のドアが開く音がした。


「ん?なにそれ、新聞?」


希月の声がしたため、俺はその方向を向く。


「ああ。今朝、黒板に貼ってあったものと同じものだ」

「ああ、あれか」


冷めたような、乾いたような声で、希月は呟いた。顔は不気味な笑みが浮かんでいる。

呆れながら、俺は近付いてきた希月に新聞を渡した。


「そういえば、希月は戦闘部が嫌いだったな」

「…でも、今回は心から暮谷くんが凄いって思っているよ?なんたって『第一高校最強』なんて書かれちゃって………。何を根拠に最強って書いたんだか」


おい。妬みが出てるぞ。


普段は好青年かつ素直なだけに、余計悪く見える。本当に戦闘部と仲悪いんだな…。


まあ、戦闘の時は戦闘部と協力していたし、俺の気にすることじゃないな。



その頃、希月は新聞を開いて、記事を見回していた。目の動きが異様に速いことから、しっかりとは読んでいないことがわかる。


しかし、希月の良く動く目がぴたりと止まった。


「第十高校に『交換留学生』…?」


希月は新聞の端っこに書かれた単語を、驚きながら読み上げた。

確かその記事には、第十高校にある国から留学生がくる、と書かれていたはずだ。


首を傾げながら、希月は新聞を床に置いた。


「この土地に留学生?いいのかな?」

「過去にも例があるらしい。一応、国家機密レベルのことは、この土地じゃ学べない。事実上、ここは国に尽くせるための能力を育てる場所って感じだし」

「確かに」


希月は本来の役割である、見張りをしながら頷いた。そのため、視線は屋上の外に向いている。

その時、俺は一つ言い忘れを思い出し、付け加えた。


「ちなみに、交換留学生だからな。この土地からも一人、外国に出て行った奴がいる」

「ええっ?!……って、詳しいね、奏寺。もしかして、この情報って……」


思わずこちらを振り向いた希月に、俺は深く頷いてみせた。


「提供者は、情報部員だ」

「ああ、やっぱり…」


またか、という顔をして、希月は警備に戻った。



というか、なんていう態度だよ。


確かに、今まで希月が仕入れて俺に伝えてきた噂は、ほぼ情報部が提供したものだったりしたが。



俺は希月が床に置いた新聞を拾い上げた。


交換留学生の記事は、この新聞には詳しくは書いていない。

それもそのはず。詳しい情報は今さっき新聞部に売ったばかりだ。恐らく、明日の新聞では大々的に取り上げられるだろう。



その交換留学生の記事の、すぐ横にある記事に俺は目をやる。


「そういえば、第八高校が敗退したそうだな」


第八高校は第一高校と友好関係にある。そのため、本来なら俺たちは助けに行かなければならなかった。しかし、第八高校が攻め込まれたのは昨日だ。第一高校は第一高校で、目の前にいた第五高校を倒すので精一杯だった。


「みたいだね。というか、最近戦闘多くない?」

「多い。多いよな。すっっっごく多いよな。正直しんどいよな」

「あははっ、確かに」


希月は笑っているが、戦闘部や守衛部は俺と違って、戦闘中も良く動く。だから俺より疲れているはずなんだが…。


希月は伸びをしたり、簡単なストレッチをしながら、見張りを続けていた。見た目はものすごく元気そうだ。


明らかに、夜更かしして宿題をやっていたのだろう夏休み明けの方が疲れていたよな…。やはり、鍛えていると違うものなのだろうか?



その時、俺の携帯電話が鳴った。


「もしもし」

「あ、奏寺?お疲れ様」

「はい、お疲れ様です」


電話相手は白池先輩だった。白池先輩の声の他に、元気な声も聞こえてくる。多分、どこかの高校の校庭の近くにでも居るのだろう。


「新聞部への情報提供は終わった?」

「はい。しっかりと留学生の情報を売ってきました」

「そっか。それでさ、新しい情報なんだけどね」


誰かがそばを通りかかったのか、白池先輩の声は一瞬小さくなった。


「第十一高校が、さっき敗退したんだ」

「…………え?!」


俺は思わず大声を出した。希月が驚いてこちらを見てきた。白池先輩の話は続く。


「第十一高校に勝ったのは、第十高校。今、僕が潜入している場所なんだけどね」

「第十って…第八に勝ったのも、確か」

「そうそう。第十高校」


ん、待てよ?


「あの…確か留学生が来たのって…」

「あはははっ!第十高校なんだよね!」


笑えないですよ!と心の中で俺は叫んだ。


留学生が来たのも第十高校。

第八高校を倒したのも第十高校。

さっき第十一高校を倒したのも第十高校。


「なんだか、嫌な予感しかしませんね」

「そうだね。ちょっと警戒を強めた方が良いかも」


その後、他の情報のやりとりをして、電話を切る。


「…」


こうして、しばらく情報部の今後の標的は、第十高校となった。

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