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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第二章 『情報部』の夏期休暇
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式条という人物

「古い代の宝、それが古代宝の正体で合っている。宝とは即ち『活動記録』だねぇ。在校生にさえ過去のことは秘密にするこの土地にとっては、宝というより爆弾に近いが」


式条生徒会長は椅子に座りながら、俺たちの問いにどんどん答えてくれた。


「きっとこの噂が一斉に広まったのは、各学校の生徒会の話し合いの時、古代宝の存在を誰かがもらしたからだろう」

「…その」


希月が話の切れ目を狙い、式条生徒会長に質問する。


「その古代宝は、誰が書いた活動記録で、それはどこにあるのですか?」


その問いに、昔を思い出し懐かしむような表情を浮かべた式条生徒会長は、ゆっくりと口を動かす。


「ある場所は『地下高校』。書いたのはその地下高校の生徒会長だった『晃城冬地(こうじょうとうじ)』くんだ」

「…え?」


俺は思わず声がでてしまった。慌てて口を押さえたところ、隣にいた香藤部長が俺の方を振り返る。


「なんだ?何か思い当たるのか?」

「あ、いえ。ただその名前、何か引っかかるような…」


少し考え込む。だが何も思い付かないので、俺は首を横に振って両手を軽く挙げた。


「すみません、続けてください」

「ええっと、じゃあ、地下高校とは、いったい?」


希月が式条生徒会長に聞く。


「地下高校はその名の通り、地下にある高校だ。この土地で一番最初に敗退した高校でもあるねぇ」

「そんな高校があったんですか」


白池先輩と香藤部長が驚きの表情に変わる。その後に、香藤部長が困惑が混ざった顔で話し出す。


「情報部が頑張っても手には入らなかった、初めの敗退高校…いったい、それはどこにあるんです?」


式条生徒会長はにこりと笑うと、人差し指で北の方角をさしてから、下をさした。

その行動に、白池先輩が首を傾げる。


「それはどういう?」

「ここより北にある高校の、すぐ下の地面のなか。ちなみに地下高校に攻め込んだのも、地下高校の上にある高校だよ」


地下高校の上にある高校に攻め込まれた。つまり、袋の鼠の状態にされてしまったということか。

考えただけでも、少しぞっとする。


そして俺はこの土地の地図を頭に思い浮かべた。

ここより北にある高校。そして高校の校舎が、一つ地下にあってもおかしくない場所。


そこで俺は、一つの高校の名前が思い浮かんだ。


「湖上高校…?」


その『平和主義』を掲げる高校の名前を口にすると、香藤部長達が一斉にこちらを見た。その後に、式条生徒会長が静かに頷く。


「そう。今では戦いを好まないとしている湖上高校が、自分達の校舎の下に存在する学校を倒した」

「…なんと言っていいのか、怖い話ですね」


白池先輩が呟くように、自分の意見を述べた。その後はいつもの明るい表情へと戻る。


「それで、その地下高校に古代宝があるんですね」

「ああ、そのはずだ。湖上高校の校舎内から通れる。だけど、困ったことに湖上高校に入るのは一苦労なんだよねぇ」


式条生徒会長が窓の外をちらりと見た。俺もつられて外を見る。

夕日が沈み、そろそろ暗くなってしまう。最終下校時刻の八時が迫ると、風紀委員が うるさいんだよな…。


俺が古代宝に関することに集中が切れかけたとき、希月が頭を抱え込んだ。


「そ、そういえば霧丘さんが橋が落ちたとか言っていましたね」

「そうなんだよねぇ」


だんだんと他人ごとになってきた式条生徒会長が、雑な相槌を打った。希月と白池先輩が考え込む中、香藤部長が式条生徒会長に強い口調で話しかけた。


「式条生徒会長、あなたは何者なんですか?」

「へ?」


不意を突かれた式条生徒会長が、少し驚く。それに構わず香藤部長は言葉を続けた。


「在校生でも過去のことは知れない。それがこの土地の特徴なんでしょう?なのにあなたは何でも知っている。古代宝のことも、かつて敗退した高校の生徒会長の名前までも…」


香藤部長の言葉に、白池先輩も同意した。


「確かにそうだね。この土地のこと、いくらなんでも知りすぎなのでは?」


全員の視線が一斉に式条生徒会長に向いた。


式条生徒会長が香藤部長たちに何かを隠しているのは明らかであり、それを知りたくなるのは、ごく自然のことだろう。


「やれやれ…さて、どうしようかねぇ、奏寺?」


式条生徒会長は笑いを含みながら、俺に話を振った。



どうしようかねぇ?って。


それはつまり、俺から話せってことなのだろう。



香藤部長と白池先輩、希月の視線がこちらに向くのが痛いほど分かる。


この土地に来て、俺がまだ誰にも言ったことのない秘密。

その秘密の核心である式条生徒会長が話しても良いというのだから、もう隠す必要は無いのだろう。


「俺、両親がいないんです。だから、代わりに母方の叔父さん達に小さい頃から育ててもらって」


突然、俺が自分の過去を話し出したことに三人は戸惑っていたが、口を挟まずに聞いてくれた。それに感謝しつつ、俺は続ける。


「その叔父さんっていうのが、この式条生徒会長なんです」


校長室に沈黙が流れる。


ぽかんとした顔が並ぶなか、かろうじて希月が話し出した。


「えっと…?奏寺より二歳年上の人が奏寺の叔父で、奏寺を育てたの?ん?あれ?」

「違う。叔父さんは三十歳前半だ。式条生徒会長、つまり俺の叔父さんは歳をごまかして高校に通っている」

「…は?!」


希月たちはじーっと式条生徒会長、いや叔父さんの顔を見つめた。よく見ると見えてしまう、隠せない老いに気付いたのか、希月は頭を抱えた。そして香藤部長は溜め息をつき、白池先輩は感心する。


「すごいですね、ここまで隠し通しているなんて。でも、何のために?」


白池先輩が元気良く質問をした。その時、今まで笑顔を保っていた叔父さんの顔が、少しだけ曇る。


「そうだねぇ。そこが一番、この土地の残念な部分なんだよねぇ…」

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