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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第二章 『情報部』の夏期休暇
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到着するまでに

大きな窓から夕焼けの赤い光が、眩しいほど入ってくる。


以前もこのような景色を見た覚えがある。


たしか、あれは生徒会室だった。


だが、今俺達がいるのは────。


「やあ、これは…珍しいメンバーだねぇ」



第一高校の校長室。


本来、この土地に校長など存在しない。しかし、校長室という教室はしっかりと作られている。


そして今、その校長室に馴染み、俺達を笑顔で迎えた人物は、豪華な椅子に座っていた。


「さ、君達も座って」

「ありがとうございます」


俺が会いたかった人、第一高校生徒会長の式条赤門を、俺達は一斉に見た。

式条生徒会長は何かを楽しんでいるような、何かを懐かしんでいるような顔で、先ほどと同じ言葉を口にした。


「珍しいメンバーだねぇ…」

「…そうですね」


俺は一緒に来たメンバーを見渡す。俺の右には香藤部長、その右には白池先輩。そしてさらに右には希月。


確かに珍しいというか、本来あってはならない組み合わせというか。


「まあ、色々あったんですよ」


俺は溜め息混じりにそう言うと、先程までのことを思い返した。






約一時間ほど前、情報部の先輩達が見守るなか、俺は寮の部屋で考え事をしていた。


きっと、この古代宝の件は俺たちだけで扱えるようなものではない。

しかし、これを放っておくのも良くない気がする。


「自分ではどうしようも出来ない…それなら…」


小さな独り言を言った後、俺は急にその場で立ち上がった。すぐ近くにいた白池先輩は少し驚いていたが、いつもの笑みを浮かべた。


「奏寺、また何か浮かんだ?」

「はい。ちょっと卑怯な手かもしれないですが、このままだといけない気もするので」


毒を盛られたあの広報部が、もし同じ学校の生徒会に利用されているとしたら…。


なんだか、悲しくなってくる。


「…そうだね」


白池先輩が俺から目をそらし、香藤部長の方を見た。香藤部長がその視線に気付くと、短い溜め息をつく。


「…ったく、困った後輩だ」


香藤部長は低い声でそう言い捨てると、速攻でパソコンを片付け始めた。

俺はその凄まじいスピードに驚き、とっさに質問を投げかける。


「香藤部長、何しているんですか?」

「見ればわかるだろう?片付けだ、片付け」

「えーっと、なぜ、片付けを?」


戸惑い気味の俺を見て、珍しく香藤部長がニヤリと笑った。

その笑みは白池先輩のような暖かさのある笑みではなく、香藤部長らしい黒い笑顔だ。


いや、うん。普通に怖い。



失礼なことを考え苦笑いしている俺に、香藤部長は机の上に放置されていた俺の携帯電話を手渡してきた。


「どうせまたどこかに行くんだろう?せっかくの夏期休暇だ。俺と白池も一緒に連れていけ」


俺と白池も連れていけ。



その想像も出来なかった一言、というより命令に、俺は軽い混乱状態に陥った。


「な、な、なに言っているんですか?だって、俺と一緒に居たら情報部だってバレて…」

「大丈夫、大丈夫。僕たちもちゃーんと考えて動くから。安心しなって」


既に荷造りを終えた白池先輩が、輝くような笑顔を見せながら俺の肩を叩いた。俺は助けを求めるため、ずっと黙り込んでいた雪平先輩に目をやる。

それに気付いた雪平先輩は、静かに首を横に振ってから、言葉を付け足した。


「俺はもしバレた場合のリスクが高すぎるから、一緒には行けないな。春崎も行きたいと思っているだろうが、休ませてやれ」


いやいやいやいや。

別に一緒に行きましょうよと雪平先輩を誘った訳ではない。

二人の突飛過ぎる意見を否定して欲しかったのだが。


俺は焦りながら、香藤部長と白池先輩の方を再び見る。


「でもあれなんです。俺が行こうとしているのって、生徒会長のところなので…」

「なるほど。ならば現地集合が安全だな。奏寺、面会の約束をもう入れておけ」

「…はぁ」


もう、何を言っても無駄だろう。


それに現地集合ならまだいいか。生徒会長ならば二人が情報部だと振りまくことは絶対にないだろうし。


俺は香藤部長が差し出してくれた携帯電話を受け取った。


「では、生徒会長に電話を入れておきます」



こうして、生徒会長と校長室にて一時間後に面会を約束した。俺は香藤部長と白池先輩が寮を出た五分後に出発する。



学校に向かう道の途中、ひとりになった俺は少し後悔しながら、そして頭を抱えながら歩いていた。



もし、二人が情報部だと他の生徒に知られてしまったらどうしよう。


生徒が少なくなる夏期休暇だとはいえ、それなりの数の生徒が、校舎内で部活動を行っているはずだ。



不安を隠しきれない俺は靴箱の前に到着し、久しぶりに校舎の中に入る。夕方に近い時間帯のせいか、生徒の気配はあまりない。


…これなら、何とかバレないかもしれない。


少しだけ安堵したこの時の俺は、自分に迫る危機について、全く予想することすら出来ていなかった。



俺は真っ直ぐ校長室がある三階へと向かう。ちょうど階段に辿り着き、一段だけ登った所で、俺の左腕は背後から何者かに掴まれた。


「奏寺、おまえ何してる?」


…しまった。


このやる気のないような男子の声。夏期休暇中、補習対象者となり校舎内にいても全くおかしくないこいつは…。


「瀬村こそ、なにしているんだ?」


冷たい態度で俺は手を振り払う。想像以上に簡単に離してくれた風紀委員の瀬村は、不機嫌そうな顔をしていた。

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