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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第二章 『情報部』の夏期休暇
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ひと味違う広報部

作者自身、前回の話で出てきた広報部の二人が、今回の話を書いていて「あれ?チャラいのって咲宮?いや篠川か?」等となりましたので、一応前書きに書かせていただきます。


咲宮光時→目つきの悪い人

篠川史也→チャラい人


です。


名前で呼んだり名字で呼んだりで、大変紛らわしくなってます。すみません。

「おい、史也」

「ああ分かってる。きっと、彼が噂の情報部だろう」


咲宮と篠川は、こちらにも聞こえる音量で話し合っている。その聞き捨てならない会話に、希月が割り込んだ。


「ちょっと、何で情報部のことを?」


希月をちらりと見た篠川が、またいつもの人を見下すような笑みで話し始める。


「珍しい部活だからね。話題にもなったんだよ、第一高校に『危険な部活』ができたってね」

「危険な…部活?」

「そう。確かに戦いを繰り広げる戦闘員たちが、戦いの世界において脅威なのは当然だろ?その脅威の戦闘員たちが頼りにしているのは『情報』なのも確かだろ?」

「…」

「君が手にしいている木刀から見て、君は戦闘員的な立場にいる。それなら、この現代の戦いにおいて、情報がどれだけ大切で、敵に知られたらどれくらい恐ろしいか…簡単に分かるだろ」


希月は黙ってしまった。少し悔しそうだが、この篠川の話術に勝つのは難しいだろう。

その時、霧丘が俺に小声で聞いてきた。


「奏寺さん、それより『広報部』って…」

「広報部は霧丘の学校にもあるよな?基本はそれと同じで、校内放送や様々な連絡手段を使って、依頼された情報や諸連絡をする部活だ」


俺は説明をしながら一瞬、咲宮と篠川の方に目をやる。二人は特に口を挟む気はないのか、黙って俺を見ていた。


「だが、第三高校の広報部はひと味違う。奴らは、あらゆる場面と方法で情報を伝えることを絶対としている。それが、例え戦場で活躍している兵士宛にでも」

「それって…」

「そうだ。どんな場所にでも行けるように、第三高校の広報部は戦闘能力も高いんだ」


俺の説明を聞き終えた篠川が、笑顔で拍手をした。


「すごいな、情報部って。本当に俺たちのことよく分かってんじゃん。いっそのこと、第三高校で情報部やってみない?」

「…断る」

「なーんだ。つまらない」


篠川はつまらなそうな、残念そうな表情でそっぽをむいた。


だが、それが本当の感情なのか、演技なのかは俺にはわからない。きっとそれが分かるのは、篠川の隣にいる咲宮だけなのだろう。ただその肝心の咲宮の表情は、不機嫌そうな顔からあまり変化が見られない。


「でも、何でその広報部がこの廃校に?」


霧丘が率直な疑問を述べた。その霧丘の問いには、咲宮が面倒くさそうに答える。


「多分、お前らと同じ理由だろう」

「…」


黙り込む俺たち三人を見て、篠川が面白そうな笑みを浮かべた。


「古代宝っしょ?別に隠さなくたっていいんじゃない?…まあ、同じ目的なら俺たちと君たちは敵ってことなんだけどさぁ」

「敵、か…。まさかそこまで先読みして、俺に物を投げてきたのか」


先ほど俺に向かって投げられ、希月により弾かれた小さなゴムボールを、俺は拾いあげた。それを咲宮と篠川に見せつけるように、目の前に突き出す。


「負傷させる気は無かったようだが…これは第一高校生徒に対する暴力行為として処理して良いのか?」


篠川はそのボールを素早く俺の手から取り上げると、咲宮に向かって優しく投げた。


「まさか。ちょっと暇つぶしに光時とキャッチボールしていたら、君の所に飛んじゃっただけだよ」

「…ものすごく雑な言い訳」


呆れた目をした霧丘が、低い声で呟く。


しかし、この少し気の抜けた雰囲気に希月だけは混じらなかった。

希月は一人、俺と霧丘を守るように鋭い目つきで咲宮と篠川を見ていた。


それに気付いた咲宮が、希月に向けて話しかけた。


「そこの木刀は、さっきからずっと戦闘態勢だが…そんなに戦いたいのか?」


全員の視線が希月に向けられた。

希月は俺と霧丘の前にいるため、その表情は見えない。だが、明らかに緊張と威圧を相手にかけているのは、その背中からでもわかった。

希月はいつもの明るい声と全く違う、真剣ではっきりした声で咲宮に返答した。


「ここで戦いはしたくないです。でもあなたたちがこの二人に危害を加えるなら…おれは二人を守るために、遠慮なく戦います」


…なんか、かっこいいこと言っているような。

つい忘れがちだが、こいつは守衛部なんだよな。


俺が思わず感心していると、篠川が今までの笑顔を崩し、ため息をついた。


「はぁ…ちょーっとつまらないよ、木刀くん。俺、真面目すぎるタイプはあんまり好かないんだけど」

「…そこの咲宮は十分真面目なタイプに見えるんだが」


俺が思わず突っ込むと、篠川はまたいつもの笑みを戻す。


「ああ、確かに光時の性格はおぞましいほど真面目だ。知ってるか?テスト勉強って、普通一週間前からするだろ?なのにこいつ、『一日一日がテスト勉強だ』とか言って、毎日めっちゃ勉強するんだぜ?」

「なに身内の悪口を言っている?それにテスト一週間前にテスト勉強するのが普通というのも…正しくはないだろ」


咲宮が篠川の後頭部に蹴りを入れた。さすがの篠川も少しふらつく。


「光時…相棒の頭を蹴るのは、さすがにどうよ?」


篠川が少し不満そうな顔で咲宮を見た。咲宮の表情は相変わらず、不機嫌そうなままで固定されている。

その間に、霧丘がぽつりと呟いた。


「私は、テスト勉強は二週間前からかな」

「え、すごいな。偉いな」


篠川は頭を押さえながら霧丘の意見にコメントをつけた。咲宮は無言で頷いている。俺はつい最近あった夏期休暇前のテスト勉強の風景を思い出す。


「テスト勉強か…俺は三日前くらいか?」


確か一日でテスト範囲を一気に覚えるのは疲れるので、三日に分けた記憶がある。

それを聞いた希月が、思わず俺を見て叫んだ。


「勉強したのたった三日?それであの結果かよ?!」

「あ、ああ」


あまりの勢いに、俺は圧倒された。希月がまだこちらを見たまま悲しそうな顔をしている。


「三日って…一科目覚えることすら不可能だろ、普通!」

「─────おっと、油断していいのか?」


廊下中に咲宮の低い声が響いた。

その声に気付き「しまった…!」と呟きながら、希月は視線を咲宮達に戻した。

しかし希月の反応は一足遅く、直径八センチメートルほどの丸いボールが、希月の肩にぶつかる。そのまま希月は後ろに少し飛ばされ、背中から倒れた。


「…くっ」

「希月!」

「希月さん!」


希月は肩を手でおさえながら、立ち上がった。意外と平気そうな希月を見て、ほんの少し安堵した俺の後ろから、篠川の声が間近から聞こえた。


「情報部くん。君も油断しちゃいけないんじゃない?」

「!」


俺はその声に反応して後ろを振り返る。しかし視界に篠川をとらえる前に、さっきまで居た場所から一メートルほど離れていた壁に、俺は体を打ちつけていた。


「奏寺さん!」


霧丘は叫んだ後、近くにいた篠川に向けて我流の構えをとっていた。我流とは、てきとうな構え、ということである。


「霧丘!」


俺は急いで起きあがろうとしたが、慣れない痛みにより、体が言うことを聞かなかった。急いで霧丘に目を向ける。しかし霧丘の顔には恐怖という文字はなく、怒りに満ちた顔をしていた。


「だめだよ、霧丘さん!」


いつの間にか希月が、霧丘と篠川の間に立ち木刀を構えていた。その速さに篠川も、少しだけ驚いた顔をしていた。

俺も何とか立ち上がると、その様子を横目で見た篠川が、手を軽く横に振った。


「さすがにどこの高校かもわからない女の子には暴力しないって。…でも、木刀くん、悪いけど君には今後一切、手加減が出来そうにないや」

「言っておきますが、おれは別に真面目じゃないですよ」

「そーだね。真面目って言葉はちょっと違ったなぁ。…俺は、この土地で正義を語っちゃってる奴が大嫌いなんだよ」

7月23日、誤字を訂正しました。

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