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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第二章 『情報部』の夏期休暇
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怪しいオレンジ

次の日は授業は無く、終了式のみ行われた。この日は普通の部活では一カ月お疲れ様という意味で、広い教室を使い食事会が開かれるらしい。情報部はメンバーが他生徒にバレないようにするため、俺の部屋でそれが行われる。


午後十七時五分現在、既に香藤部長と白池先輩が俺の部屋にいた。


「古代宝探し?…ったく、あの守衛部と変わり者の湖上高校生は何考えてんだ?」


香藤部長が調理器具を洗いながら呟いた。隣で食材を冷蔵庫に入れていた白池先輩が、笑いながら香藤部長を見る。


「楽しそうだけどね。僕も参加したいくらいだよ」

「はあ…どいつもこいつも」


二人のやりとりを聞いていた俺は、情報部員が全員座れるように、部屋を片付けていた。

一段落したところで、その場でキッチンにいる香藤部長に話しかけた。


「そういうことで、古代宝の資料ください。情報料は部活に払いますので」

「情報料は払わなくて良いと思うよ?」


香藤部長の横にいた白池先輩が、ひょいと俺を見てそう言った。香藤部長もこちらに背を向けながら頷く。


「俺達が料金を貰うのは客だけた」

「いいんですか?」


俺が意外そうにすると、可笑しそうに白池先輩が笑う。


「そんな気にしなくても。僕たちだって得た情報で勝手に色々やっているしね」

「…色々って、白池先輩が言うと何か恐ろしいです」


その時、部屋のドアと窓が同時にノックされた。白池先輩がドアに向かって行ってくれたため、俺は窓に近づく。

急いで窓を開けると、春崎先輩がひらりとこの部屋に入り込んだ。


「ありがとう…奏ちゃん」


春崎先輩はぼそりとそう言った後、制服のポケットから瓶を十数本ほど部屋に出した。瓶に貼ってあるラベルを見た限り、どうやら調味料らしい。


…よく、こんなに大量に運べたな…。


俺が大量の瓶に気を取られていると、ドアの方から声が聞こえてきた。


「邪魔するぞ」


部屋のドアが開く音と共に、雪平(ゆきひら)先輩が部屋に入る。俺が返事をしようとしたときには、既に雪平先輩はキッチンにいた。



ちなみに、情報部の食事会は役割分担をきっちりと決めている。


俺は場所の提供。

香藤部長は調理器具の用意。

白池先輩は食材の買い出し。

春崎先輩は調味料の運搬。

そして雪平先輩がそれらを使って調理をする。


実は雪平先輩の料理の腕は確かで、あの料理好きな葉山副会長の一番弟子という噂もある。



一時間後には皆が席につき、雪平先輩の料理を頬張りながら雑談を始めていた。


「…古代宝。確かに…今一番騒がれているわね。この土地全体で…」


春崎先輩ができたてのミートソースのパスタを、上品に食べながら呟いた。春崎先輩の隣にいた雪平先輩も頷く。


「第一高校でもよく聞くな。ま、探そうなんて奴は少ないが」


湯気がたっているラーメンを暑そうに食べる雪平先輩に、俺は苦笑いを見せた。


「そりゃあ、まあ、そうですね」


俺はうどんを食べようとしていたものの、なかなか適度な量を箸で掴めず苦戦していた。手を休め、右にいる香藤部長をちらりと見ると、同じように蕎麦をうまく掴めず苛ついている。香藤部長は溜め息をつき、一旦箸を置く。


「だが第三高校と第八高校では、多いらしいぞ。探そうとしている奴」

「そうなの?」


器用にきしめんを食べていた白池先輩が、少し驚いて香藤部長を見た。



それにしても雪平先輩はよく一時間で、これだけの種類の麺料理を作ったな。


なぜこんな食事を作ったのか、俺は少し考えてみた。しかし、食材を準備した人が誰だったかを思い出し、静かに納得する。


「奏寺たちは、いつ捜索を開始するの?」


白池先輩がお茶を片手に、俺に聞いてきた。


「とりあえず明日の放課後、三人で計画を立てる予定です」

「早いすぎないか…」


香藤部長が少しだけ呆れていた。


「まあ、みんな遊びたいんですよ。たまには」


その後、話題が別のものに移り変わる。楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった。





そして次の日の放課後。


雲がびっしりと埋め尽くされた空が、太陽の暑い日差しを遮る。夏という活動するのも一苦労な気候では、本日のような天気は有り難い。


俺と希月は、霧丘との待ち合わせ場所に行くために校門をでた。


「ち、ちょっと、そこのあなた!」

「あ、俺?」


校門をちょうど出たところで、強い口調で俺に話しかけてくる女子がいた。



…誰だ?



その女子はオレンジ色の長い髪を高い位置に二つに結んだ、いわゆるツインテールに、黒いジャージを着ている。

しかし、彼女の顔はこの攻撃的な風貌に合わないほど、ほんわかとした優しいものだった。残念なことに、今は怒ったような怖い表情が混じっているが。


「そうよ!あんた、第一高校の奴でしょう?」

「そうだけど」

「なら、ここの生徒会長に会わせなさい。今、すぐに!」


やや高飛車な言葉遣いと、怒ったような剣幕で、その女子は俺に言ってくる。

俺は冷静に対応を続けた。


「生徒会長に?」

「そうよ!あたしは…春城(しゅんじょう)(あきら)。春の城に、よくある『晃』っていう漢字。そう言えばあの人はわかるわ」

「春城晃さんか。どこの高校の人?」

「えっ?」


なぜか春城は目を見開いて驚いていた。

俺と希月は思わず目を合わせる。


他校の生徒会長に会うのは、そんなに簡単なことではない。最低限でも身分は明らかにしなくてはいけない。


春城は少しうろたえた後、俺と希月を鋭く睨んだ。


「ならもういいわ。時間をとらせて悪かったわね!」


春城が不満そうな顔で強くそう言うと、立ち去ろうとしたのか後ろを向く。希月がそれを急いで止めた。


「ちょ、ちょっといいですか?」

「なによ?!」


苛ついているのか、春城は怒鳴るように希月を振り返る。

希月はわかりやすい愛想笑いで、宥めるように言葉を選んでいた。


「いえ、生徒会長にあなたが訪れた事だけなら伝えますので、用件を…」

「結構!会えないなら用はないわ!」


今度こそ、春城は立ち去っていった。希月の顔には、疲労が浮かんでいた。

俺はそんな希月に、同情しながら声をかける。


「お疲れ。それにしても…怪しいな」

「うん。かなり怪しいよ。だいたい、髪の毛って染めていいの?」

「第一高校では厳禁だな。他の高校も大抵はだめだと思うが…」


目立ちすぎるオレンジ色の髪の春城は、もうここからでは見えなくなっていた。

俺は思わず溜め息をつき、独り言のように呟いた。


「とりあえず春城晃のことは、一応生徒会長に伝えておくか」


希月も頷き、春城が立ち去った方を見た。


「そうだね…春城さんは、かなりの厄介ごとを抱えてそうだし」

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