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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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知りたい真相

俺は嬉しさのあまり、笑顔で部屋に駆け込んだ。


部屋にはやはり、白池先輩がいた。


「奏寺、お疲れ様」


白池先輩がいつも通りの口調で、俺に笑顔で言った。

俺はその様子に安堵して、言葉を漏らす。


「良かった…」

「あーーーっ!」


俺の安心した心を乱すような希月の叫びが、後ろか聞こえた。

俺や霧丘、そして白池先輩までが驚き希月を見ると、希月がなぜか手を後ろに置く形で座っていた。


俺が思わず突っ込む。


「な、なに座っているんだ?」


しかし希月は軽く震えるだけで、答えない。代わりに隣にいた霧丘が、苦笑しながら教えてくれた。


「希月さん、叫びながら驚きすぎたみたいで…後ろに倒れてこうなったの」



ああ、なるほど。


俺が冷たい視線で、白池先輩が謎の笑顔で希月を見た。


しばらくして、希月はある程度正気に戻った。


「二年生の白池さんじゃないですか!あの、凄く女子に人気な!」

「まあ、僕は白池だけど?」

「めちゃくちゃ知ってますよ!部活の女子がいつも騒いでいて…」


白池先輩が女子に人気なのは知っていたが、そんなに人気なのか。


霧丘は全く話題についていけずに、困った顔をしている。

その横で希月は、今度はぶつぶつと何かを呟いていた。


「あの有名人の……白池さんが情報部…?え、じゃあ…いいや……女子たちは…」

「希月さん、あなた少し怖い」


霧丘が呆れた目で希月を見て苦情を言った。


くすりと笑う白池先輩に、俺は構わず質問をする。


「白池先輩教えてください。白池先輩はいったい、この数日なにを…?」

「ああ、わかったよ。ちょっと長くなるから…」


そう言うと、白池先輩は俺たちを部屋の中へ手招きした。


俺は希月を起こし、霧丘に形だけでもドアを戻してもらい、椅子に座る。


白池先輩も椅子に座ると、静かに語り出した。


「まず滝さんはあの体育祭の依頼を出して、わざと他校に情報部のメンバーを侵入させた。それにより、奏寺以外の情報部員の顔を知ろうとしたんだ」

「なるほど…。しかも滝は、俺たちを尾行するのではなく、第二高校で待ち伏せをしていたんですね。だから警報装置のコードを切られても、第三高校ほど騒がなかった…」

「ああ、そうだね」


白池先輩が肯定したとき、やっと落ち着いた希月が納得した顔をする。


「確かに、奏寺って尾行から逃れるの上手いもんな。それなら待ち伏せの方が効率的だ」


確かに、俺はよく尾行されていた。

大方俺を辿ることで、他の部員と接触するところを見たかったのだろう。だが、そんなのは阻止するに決まっている。


それにしても、だ。


「よく知っていたな希月…。お前、まさか…」

「いやいや!守衛部の先輩が尾行した時、愚痴っていたのを聞いたんだ。断じておれは尾行してない!」


希月が焦りながら首を横に振った。白池先輩はそれを微笑ましい顔でみた後、話を元に戻す。


「それで、滝さんは第二高校に潜んで僕らを待った。そして校内で、僕たちを見つけたんだと思う」

「へえー。あの時にそんなことが…」


霧丘は少し、第二高校の出来事を懐かしんでいるらしい。手を頬に当てて、少し目を伏せていた。

そのまま、霧丘は首を傾げる。


「あれ、でも第二高校では何も起きなかったんじゃ…?」

「あ、そういえば。その後の第三高校で、問題があったんですよね?」


希月も霧丘の真似をして、首を傾げた。


やはり白池先輩が情報部員と知り、希月のテンションは少しおかしくなっているらしい。



その疑問に、白池先輩は表情を少し暗くして答えた。


「そう。滝はあることに気付いて、急いで第三高校で事件を起こした。…ご丁寧に、その犯人を僕に仕立て上げようとしてね」

「…あること、ですか?」

「そう。僕の不注意でもあるんだけど。

ほら、第二高校の行事調べるときに、生徒会室漁ったって言ったでしょ?あれ、滝さんにバレてて」


そういうことか…。



思わず俺は頭を抱えた。霧丘も苦い顔をして、溜め息をついた。


「生徒会室を…。それじゃああの滝って人は、ぞっとしたんだろうなぁ」

「ぞっと?」


希月が霧丘に聞き返すと、霧丘は少しだけ窓の外に目をやりながら、説明した。


「うん。だって生徒会室には生徒名簿とかもあるでしょ?第二高校の生徒名簿に、自分の『滝』って名前があるのを白池さんに見られたら、さ。怪しまれるじゃん」

「じゃあ滝は、名簿によりバレた可能性を気にして、毒事件を?」


希月が驚くと、白池先輩は静かに頷いた。


「うん。でも実際、色んな手を考えたと思うよ。僕が毒を使ったように見せながら、奏寺に毒を盛る。…僕でも、難しいと思う」

「難しいって。出来ないわけじゃないってことですか」


俺は少し呆れながらそう白池先輩に聞くと、先輩は笑顔で恐ろしいことを口走った。


「うん。じゃあ試してみる?」

「や、やめてくださいよ!」

「冗談だって」


白池先輩が言うと、冗談に聞こえない。



そのとき霧丘は窓から少し身を乗り出し、戦闘を眺めていた。

そのまま、言葉を漏らす。


「でも滝って人は、やり過ぎだと思う。この土地にはこういう戦闘が許されてるのに…卑怯だし、危険だよ…」


無表情のまま、霧丘はこちらに顔を向ける。


「ねえ、滝はやっぱり屋上で毒を?」


白池先輩は少し笑みを残したまま霧丘を見た。


「それは僕も知らないね。だからここは、彼に任せよう。得意分野だろうから」

「彼?」

「そこの、守衛部さん」


俺と霧丘は同時に希月を見た。

希月は戸惑い、白池先輩の方を向く。


「おれの、得意分野ってなんですか?」


白池先輩はにっこりと笑いながら、希月に言った。


「推理っていうやつ。君、情報を利用するのが得意なんでしょ?」






その頃、俺の知らないところで戦闘部は優勢になっていた。


「翔汰、お疲れ様。どんな感じ?」


第二高校の正門付近を陣取った戦闘部は、簡単なシートを勝手に敷いていた。

その上で、書類を持ちながら電話をしている戦闘部の女子生徒がいる。


夕七(ゆうな)!お疲れ。かなり順調だよ」


翔汰と呼ばれた人物は、戦闘が繰り広げられている場所から少し離れたところで、嬉しそうに電話をしていた。


「無理しないでよ。そういえば奏寺くん達に会ったの?」

「うん。奏寺達のおかげで、滝を捕まえられたから」


夕七と呼ばれた女子生徒は、少し笑顔になった。


「よかった。捕まったんだ。…じゃあ後は戦闘部の腕の見せどころね!早いとこ第二高校の生徒会長を探して、降伏させてよ」


翔汰と呼ばれた人物は、溜め息をつく。


「あのねぇ…そんなに簡単なわけじゃ………え?」

「どうしたの?」

「いや、ごめん!また後でかける!」


翔汰と呼ばれた人物は慌てて電話を切ると、急いで戦闘部の仲間に近付く。


「先輩!これは、どういう…」

「く、暮谷!わからないが…罠では無いみたいだ」

「え…」


二人は、第二高校の生徒の真ん中に立つ、一人の男子生徒を見つめていた。





そのころ、希月が真面目な顔で話し始めた。


「滝はやっぱり、屋上で毒を撒いたとしか考えられないと思います。きっと、火事の騒ぎに紛れてそっと。

まあ、もう一人別の高校の生徒が紛れていたなんて、さすがに考えもしなかったと思いますが。

本来は、奏寺と第三高校の生徒を巻き込み、犯人の候補を削っていくのが目的だったかと」


第三高校の多くの生徒が毒を盛られれば、第三高校の生徒は犯人から外れる。


そうすれば、自然と白池先輩を疑ってしまう。


単純そうだが、滝もよく考えたな…。



白池先輩がその言葉の後を引き継いだ。


「そして僕が逃げたと思わせるように、第二高校に再び潜入しようとしたところを捕まえた…。いやあ、あの時は驚いたよ」


白池先輩は笑っていた。


俺達にとって、笑い事では全く済まないのだが。


「そういえば、先輩の携帯が薬物研究部の教室から見つかりましたが?」

「そうそう。第二高校で滝さんと会ったとき、滝さんが『俺も潜入中だ』って言って。そこの教室に入って油断したところを、薬物研究部員に袋叩きに…」


話の途中で、白池先輩は少しだけ俯き、目線を下に下げた。

希月は同情したのか、少し悲しそうな顔をして、壁の方に顔を背ける。


「でも、白池先輩は捕まりながらも、情報操作しましたよね?霧丘の写真に写るなんて、大胆なことして」


俺が少し焦って言う。


白池先輩はそのことを忘れていたのか「あー!」と大声を出して、ぽんと手を叩いた。


「そんなことしたね!ちょうどこの捕まっていた部屋から、霧丘さんが見えて。一か八かでここから脱走してみたんだ。途中でわざと滝に見つかって、一緒に写真に写らせて…」

「…脱走、できたんですか。それなら、すぐに第一高校に帰ってきて下さいよ…」


思わず、俺の口から素直な意見が出た。それに気付いた白池先輩が笑い出した。


「ははっ。少し第二高校でやりたいことがあってね。それに、写真に写ったのは情報操作ではないよ」

「そ、そうなんですか?」

「あれはただの『賭け』だったから。上手くことが進んで、奏寺が気付くかなーって」

「上手くいき過ぎですよ…」


横で俺たちの会話を静かに聞いていた希月が、白池先輩の方を向いて手を挙げた。


「質問ですが、その白池さんが第二高校でやりたかったことって何ですか?」

「ああ、それは……」

「ええっ?!」


白池先輩が言いかけた時、ずっと窓の外を見ていた霧丘が大声を出した。


俺たちは一斉に霧丘を見る。


「どうした?」

「あ、あれ見て!」


霧丘は、第二高校の生徒の中心にいる、一人の男子生徒を指差した。

次の話が第一章の最終話になる予定です。

長くてすみません…。

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