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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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辿り着いたその場所に

滝は捕まえた。


あとは、白池先輩を探すだけだ。


「しかし、どこにいるんだ?」


霧丘の撮った写真に写っていたということは、自由に動けるということだろうか?



とりあえず校舎から出た俺たちは、一旦裏門の辺りで立ち止まっていた。


「ねえ、その情報部のひと、本当に第二高校にいるの?」


霧丘が俺に聞いてきた。


そういえば写真の鑑賞会のとき、俺は白池先輩が写っていたことを言わなかったんだった。



「ああ、あの写真鑑賞会で見た写真に写っていたんだ。あの時は言えなかったが」

「え、うそ!滝以外にいたのか?」


希月が驚く。その横で、霧丘が人影が写っていたのを思い出したらしい。納得したような顔をしていた。


「あの笑ってた人?」

「そうだ」

「な、なんで捕まったかもしれないのに、その人は笑ってたの?」


霧丘が少し怯えて聞いてきた。



…そりゃそうだよな。


「あの笑いは情報操作をしている時の笑顔だ。きっと、あの人はこの第二高校で捕まりながら、情報操作をしている」

「情報操作…?」

「な、なにそれ…?」


霧丘と希月は困惑し、俺に解説を求める顔をした。

俺はできる限りの知恵を振り絞り、説明を始める。


「情報操作…。例えば希月、お前は推理が得意だよな?」

「そうでもないけど」

「その推理っていうのは、集めた情報を処理して『結論』を導き出すことだ」


霧丘はふむふむ、と聞いており、希月は「?」を頭に浮かべていた。


「そして情報操作と言うのは、自分が望む『結論』に向け、情報を利用してその過程を作る…そういうことだ」

「なるほど」


霧丘が深く頷く。それを見た希月は少し焦り、理解しようと考え込んでしまった。


霧丘がそれに気付いて、解説を始める。


「つまり…数学で例えるとわかりやすいかな?

希月さんは『式』を与えられて、その『答え』を出すのが得意。

その捕まった情報部員さんは、自分が理想とする『答え』に向けて、『式』を作り出すのが得意ってこと」

「…」


希月が目を少し見開いて頷く。その後、しばらく動きが止まったかと思うと、いきなり大声を出した。


「その人凄いな!」

「私もそう思う」


霧丘も素直に頷いて、希月に同意していた。

そしてそのまま、霧丘は首を傾げる。


「でもその人、今何しているのかな」

「わからない。だから急いで探してしまおう」


俺がそう言い切った時、また電話がかかってきた。


「もしもし」

「奏寺、俺だ。香藤だ」


そういえば今まで香藤部長から電話が無かったな、と思いながら話を進めた。


「どうしました?」

「第二高校の情報を探ったんだが…実は第二高校の寮に、滝の部屋がちゃんと用意されていたんだ」

「え…ずっと第一高校にいたのに、ですか?」


俺が電話中に、希月はこれまでの出来事を簡単に霧丘に説明していた。

香藤部長の声が、再び聞こえてくる。


「そうだ。もしかしたらここに、白池がいるかもしれない。これ以上に条件の良い場所は滅多に無いだろう」

「なるほど…」

「奴の部屋は三階の五号室だ。では、頼む」


俺は目を瞑り、第二高校の全体の地図を思い出した。


確か、寮の場所は…。


「敷地の南西、だな」


俺は目を開き、南西方向を見た。

そこには大きな建物がある。


「あっちだ」


俺が建物を指さすと、希月が頷き走り出した。


寮に向かう途中、何度も戦闘で投げられたと思われる煙幕弾や棒が、流れて飛んできた。


俺と霧丘が思わず目を瞑ったり、動けなくなると、希月はそれらを木刀で弾く。



また飛んでくる物だけでなく、第二高校の生徒と偶然出会うこともあり、戦闘になることもしばしばあった。


「悪いな、希月。疲れてないか?」


俺が声をかけると、希月は余裕そうに笑って答えた。


「物足りないくらいだね」

「それならいいんだが…」


毒が抜けるのが早すぎるのでは?

やはり、湖上高校の医療のレベルは高いということなのか…。



そんなこんなで俺たちは寮に辿り着いた。

希月が目の前の建物を見て、少し考え込む。


「ここ、寮?」

「ああ。そうだ」

「一応、寮には戦闘対象外の一般生徒がいるから…。できるだ見つからないようにしよう」


希月はそう言うと、寮のドアを開けようと取っ手に手をかけた。


しかし鍵が掛かっていたため、全く開かない。希月は残念そうな表情になり、ため息をつく。


「…うわぁ」

「簡単には入れないか…ちょっと待って」


俺は希月にそう言うと、春崎先輩に電話をかけた。


「…もしもし」

「お疲れ様です。奏寺です」

「あら…奏ちゃん。とうしたの?」


春崎先輩の声は、少し低い。


…大分疲れているようだ。



春崎先輩は身体能力は高いが、なぜか体力のみ致命的に低い。


そのため他の部員に比べて、情報収集の活動時間は短くなってしまう。


「教えていただきたいのですが、もう寮には入りました?」

「ええ…。簡単に廊下を見回っただけだけど。…もしかして、さっきの勇ちゃんの情報の?」

「はい」


春崎先輩は少し申し訳なさそうに、話し出した。


「…本来、私が行くべきなんだけど…」

「いえ、春崎先輩は休んでいて下さい。きっと、今いる場所から遠いんでしょう?」

「ええ…。じゃあ…いい経路を教えるわ」


俺は春崎先輩に口頭で経路を教えてもらうと、礼を言って電話を切る。


そして希月たちを先導し、何とか寮の中に入ることができた。



しかし…。


「なんて経路なの…?」


霧丘が息を切らせて、寮の廊下に座り込む。


いつも鍛えているであろう希月さえも、疲れたのか壁に寄りかかっていた。


「ほんとだよ…。木に登ったと思ったら、さらに別の木に跳び移って…。そこでやっと寮の開きっぱなしの窓が見えたと思ったら、距離があるからまた跳んで…」


そこまで言って力尽き、口を閉ざした希月の言葉を俺が引き継いだ。


「やっと窓から入れたと思ったら、そこには廃棄物があって…」


そこまで言うと、溜め息が自然に出た。霧丘に続き、俺も座り込む。



こんな経路を見つけて進む春崎先輩って、いったい…。



数分休むと、一番タフな希月が辺りを見渡した。


「でも、ちょうどここ三階だね」

「そ、そうか。じゃあ早いところ五号室に…」


俺たちは、ゆっくりと前へ進む。偶然にも、五号室は近くにあった。


希月は息を整え、木刀をしっかり持ちドアノブに手をかけた。

そのあと真剣な顔で、俺と霧丘に注意をする。


「何があるかわからないから、奏寺と霧丘さんは少し下がっていて」

「ああ」

「わかった」


少し緊張しながら、言われた通りに俺と霧丘が下がる。


それを確認した希月が、慎重にドアを引いた。





…が。


ドアは開かなかった。


「…鍵だ。鍵がかかってる」


希月が悲しそうな声でそう呟いた。


「…」

「…」


今までの緊張感が、一気に落胆に変わる。


気まずいのか、希月はこちらを振り返らなかった。



さて、どうしたものか。



俺が考え込んでいると、霧丘が希月に声をかけていた。


「えっと…ドラマみたいに体当たりでドアを壊してみたら?」

「あ、ああ。なるほど」


そう言って、希月が勢いをつけるためにドアから少し離れた。


しかし俺はそのやりとりを見て、もっといい方法を思いつく。


「待て、希月。体当たりで壊したら、お前はこの部屋に突っ込んで入ることになる。それは危険だ」

「そ、それはそうだけど」

「いい方法がある。希月はドアのすぐ近くで、木刀を持って構えてくれ」


希月は慌てて、ドアの横に立った。

そして俺は霧丘の方を向く。


「霧丘、ドア開けてみて。ちょっと力を入れて」

「えっ?私の力じゃ無理だよ?」

「やるだけやってみよう。希月、警戒頼む」


俺はそう言うと、ドアを注意して警戒する希月にかわり、周囲の警戒を始めた。


霧丘は不安げな顔でドアノブに手をかけ、思いっ切りドアを引く。




バキッ。




そんな音が、しっかりと聞こえた。


霧丘を見てみると、彼女はドアを丸ごと壁から外していた。


さすが、俺を一撃で気絶させ、さらには男子生徒を背負い投げした霧丘だ。



俺は静かに、霧丘に対して賞賛と少しの恐怖の気持ちを抱く。


霧丘は素直に、ドアが開いたことを喜んでいた。


希月は…口を大きく開けて、呆然としている。



それぞれが思い思いの感情を表していると、部屋の中から笑い声が聞こえた。


「はははっ!これが例の、霧丘さんの実力なんだね」

「あっ…」


その聞き慣れた声に、俺は思わず笑顔になっていた。

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