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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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焦る者

「でも、奏寺くんは連れて行かない」



城戸は今までの明るい声から一変、真面目な声になる。



「私たち戦闘部も自分の事で必死だから、非戦闘員の奏寺くんを気にする余裕なんて無いの。だから、ごめんね」

「…いや、ごもっともだ」



第二高校に行けば、もしかしたら白池先輩に会えるかもしれない。


一瞬そう考えたが、この城戸の言葉で諦めるしかないか。



まあ、その前に白池先輩が第二高校にいない可能性だってある。

それに着信が無いだけで、もう戻っているかもしれない。



「それじゃあ、またな」

「ええ。色々とありがとう」



俺は電話を切る。


その時、窓が叩かれる音がした。





俺は急いで窓に向かって走り、窓を開ける。



「春崎先輩!お久しぶりです」

「よかった…。元気になったの。奏ちゃん」



にこやかな笑みを浮かべた春崎先輩が、開かれた窓からひらりと部屋に入った。



男子寮に女子が入るのは厳禁だが、春崎先輩は情報部のミーティングの為によく忍び込む。



───『春崎瑠衣伽』先輩。

セミロングの黒髪で、ややつり目。

ぶっきらぼうでゆっくりな話し方と、常に無表情なのが特徴。二年生の女子生徒。

性格は優しいが、やや社交性に欠けている。

また気に入った人を、その人の名前の漢字一文字に「ちゃん」を付けて呼ぶ。



「奏ちゃんもしかして、癖出てる…?」

「あ」



あの、情報を並べる癖が出た。

体調はだいぶ回復したらしい。



「それにしても、さっき元気になってよかったって言いました?」

「…うん。奏ちゃんが熱出した情報は、もう掴んでいたから」



そうだったのか。

まあ、そうだよな…。



「じゃあ、香藤部長のこの大量の着信はなんですか?」

「さあ…?勇ちゃん、そうとう怒っているのかもね」



香藤勇雅なので、勇ちゃん。


香藤部長がそう呼ばれるのを嫌がっているのは、言うまでもない。



ちょうどその時、部屋のドアがノックされた。







「奏寺、てめえ…体弱すぎだろ!」

「しょうがないですよ!毒とか色々飲んだんですから!」



ドアを開けた先に待っていた香藤部長が、部屋に入るなり怒鳴ってきた。



春崎先輩が首を傾げる。



「勇ちゃん、怒るところ…違くない?」

「春崎、その呼び方やめてくれ…」



香藤部長は怒った顔から、一瞬困った顔になる。


俺は思わず笑ってしまった。



「おい!何笑ってやがる!?」

「す、すみません」



このようなやり取りが三十分ほど続き、香藤部長はやっと落ち着いてきた。



その隙を狙い、俺が質問をする。



「あの、白池先輩は…」



香藤部長が首を横に振った。



「帰ってこない。だが、居場所は何となく検討がついた」

「へ?」



香藤部長が春崎先輩の方を向く。

それに気付いた春崎先輩は頷き、ポケットから赤い二つ折りの携帯電話を出した。



「これは…第一高校指定の携帯電話ですよね。春崎先輩のですか?」

「いいえ…。ここを見て」



携帯電話の後ろの方を見ると、十桁の数字が入っている。


これは『生徒番号』と呼ばれるものだ。


生徒番号とは、各生徒に付けられる番号となっており、一人一人違う。



つまり、この携帯電話の所有者は、この『生徒番号』を付けられた生徒の物だ。




そして俺は、この生徒番号に見覚えのあった。



「これ、白池先輩のですよね?」

「ええ…。第二高校の中に落ちていたの。開きっぱなしでね…」

「それって…」



香藤部長も頷く。



「どう見ても、紛失したような感じだろう?」



春崎先輩が付け加えた。



「これね、薬品研究部の教室の…片隅にあったの」

「そうなんですか。その感じだと、白池先輩の身に何か起こった可能性が高いですね」



つまり、白池先輩は何かに巻き込まれ、帰れないだけなのかもしれない。



その考えに、少しだけ安心を覚える。


いや、本当は安心してはいけないのはわかっているが。



「…?」



そこで俺は、あることに気付く。


白池先輩のことを考えていたあまり、凄い発言を聞いたことを忘れていたらしい。



「春崎先輩、薬品研究部の教室に入ったって言いました?」

「ええ…」

「よ、よくそんな場所入れましたね…。あ、でも携帯電話があったってことは、白池先輩も入ったって事ですよね」



薬品を扱う場所は、常に厳重に警備されている。


そのため、侵入するのは難しいはずだ。




そこで香藤部長が、大きな溜め息をついた。



「まあ、それが原因で白池は帰って来れないんじゃないか?」



春崎先輩も、香藤部長に同意したのか頷く。



「私だって、入ったら普通にバレてしまうと思う…」

「え、じゃあなんで春崎先輩は帰って来れたんですか?」



俺から見れば、白池先輩も春崎先輩も、忍び込むプロに思える。


そして、侵入先の人間に見つからない技術は、春崎先輩の方が上のはずだ。



「私の場合…良い囮がいたの」

「お、おとりですか」



話が読めない俺は、横目で香藤部長を見た。


香藤部長が「ああ、そうか」と、何かを思い出したかのように呟く。



「奏寺は休んでて、最近の出来事を知らないんだな」



香藤部長が新聞部の朝刊を出した。



…希月といい、なぜみんな新聞を持ち歩いているのだろう。



俺が変な考え事をしていると、香藤部長がある記事を指で叩いた。



「ここだ」



その記事を覗き込む。


そこには、『第三高校の生徒、またも侵入』と書かれていた。



「『また』…?」

「そう…。第三高校の生徒は最近、色んな所に忍び込んでるの…。毒を盛られたこと、怒っているのかもね」

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