理由探し
俺は保健委員と希月に別れを言い、部屋に戻った。
その頃、保健委員の教室では、保健委員が希月に質問をしていた。
「情報部って避けられてるって聞いていたけど、それ本当?」
「そっか。保健委員はクラスの教室に近付く事も少ないないから、あまり知らないんだ」
希月は少し寂しそうな顔をした。
「確かに避けられてるよ。奏寺くんは孤立している」
「じゃあなぜ君は避けないの?」
「そうだな…」
希月は、奏寺と初めて話した日のことを思い出す。
「そういえば、奏寺くんと初めて会ったのも屋上たったな…」
懐かしい記憶を思い出しながら、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
その後すぐに保健委員の方を向く。
「奏寺くんって、実際話してみると社交的でいいやつだよな?」
保健委員が希月の問いに対して、大きく頷く。
それを見た希月が笑った。
「ははっ。その奏寺くんがおれと話したあと、寂しそうな、悲しそうな声で別れ際に礼を言ったんだ。
…きっと、気を遣わないで話すのが久しぶりだったんだろうな…」
俺が自分の部屋に入ると、携帯電話が机の上に置いてあるのが目に入る。
急いで画面を見ると、苦笑いが溢れた。
「ひ、百件超えてる…」
その中のほとんどが香藤先輩からのもので、ちらほらと他の部員や霧丘からの着信もみられた。
しかし、やはり白池先輩からの着信はない。
溜め息をつき、とりあえず香藤先輩に電話をしようと決める。
電話番号を入力しようとした時、ちょうど電話がかかってきた。
「はい、もしもし」
「久しぶりね。奏寺くん」
電話をかけてきたのは、戦闘部の城戸だった。
「本当は奏寺くんが登校してきてから言おうと思っていたけど、保健委員と話してるところを見てね。元気そうだったから電話させてもらっちゃった」
「ああ、報告書の催促か」
「うん」
そういえば城戸に報告書を渡していなかった。
これは少し申し訳ない。
「オマケ、色々付けとく」
「ふふっ。オマケならもうもらったから」
城戸が嬉しそうに言い切った。
俺はそんなものを渡した記憶が一切無かったので、少し戸惑う。
「…記憶に全くないんだが」
「それはそうでしょ。今日私が無断で拝借したから」
「ちょっと待て、まさか…」
城戸は得意げに、なにより嬉しそうにして言った。
「毒事件よりいいオマケないよ!ありがとう」
「はぁ……」
保健委員の教室は寮の一階に位置する。
寮の一階は男女とも使える階なので、城戸が来てもおかしくない。
「不覚だ…。情報部が盗み聞きされるなんて…」
「良いじゃない。聞いたのが私だったし」
「あのな、そう言う問題じゃ…」
ないんですけど。と言おうとした俺の言葉を遮り、城戸が言葉を放つ。
「それに、奏寺くん的にも悪くない展開になるかもよ」
「え?」
「ねえ、毒事件のこともう少しだけ教えて!情報部なら、もう少し犯人を特定できる情報あるでしょ?」
「曖昧になら、な」
俺的にも悪くない展開とは、なんだろうか。
俺が考えていると、城戸がすぐに話し出す。
何やら焦っているようだ。
「戦闘部はこの毒事件の情報が欲しいの。だから、情報売って」
「売買ならある程度は構わないが…この情報、信頼性は低いぞ?」
「いいよ!」
俺は毒の原料となる植物が第二高校にある可能性が、無くはないことを伝えた。
「いいか?これは可能性がかなり低い。だから信用はするな」
「構わない…いえ、これは使える」
「おい。何に使う気だ?」
俺が思わず聞いてしまうと、城戸は自慢げに言った。
「第二高校に攻め込む『理由』に」
「!」
第二高校に攻め込む。
それはつまり、戦闘部は第二高校の土地を本気で狙いにいく、ということだ。
「ほ、本気か?」
「本気。最近このあたりって、大きな戦闘が無いじゃない?ちょっと気が抜けてる今が攻め時みたいよ」
城戸は楽しそうにしている。
そこでやっと、俺は城戸が毒事件の情報を欲しがっていた理由を理解する。
「なるほど。戦闘部は攻め込む理由が無くて、なかなか動けなかったのか」
「そう。さすがに、ただあいつらに勝ちたいからって理由じゃ、出来ないのが争いってことよね」
戦闘部ほどの大人数が、他校に乗り込み戦うことが頻繁に起こっては困る。
そのため、他校の土地を狙った戦いをするのには、生徒会の許可が必要になるのだ。
しかし生徒会は年に数回行われる、各学校のトップの会談に参加する。
そこで、他校への攻め込みの理由が理不尽だと、かなり叩かれるらしい。
そのため。なかなか許可は下りない。
「あぁ…楽しみ」
「なあ、城戸」
喜んでいる城戸に、水を差すような低い声で俺は聞こうとした。
そしたら、先手を打たれる。
「ええ、言いたいことはわかるわ。奏寺くんもその攻め込みに、同行したいんでしょ?」




