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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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流れる時間

まず俺は、希月に第三高校での出来事を一通り話す。



もちろん、霧丘や白池先輩の名前は伏せた。


「それで、あの煙が毒だったんじゃないかという意見がでた。もしそれが本当なら、犯行が可能なのは…」

「その先輩になるわけだ」

「…ああ」



希月は手の中にある湯のみを見つめながら、俺の話について考えていたようだった。



しばらくして、希月は首を傾げる。



「えーと…多分、煙は毒じゃないと思う」


俺はその言葉に食い入るように、少し大きな声を出した。



「本当か?」

「うん。煙が毒だったら、もっと遠くまで被害が出てるだろうし。被害者は屋内にいた人だったんだろ?」


俺は頷いた。

だが希月はまた悩み出す。



「でも毒の被害者が全員屋内にいた人なら、何でお前の先輩は無事だったんだ?」

「先輩自身は屋上には上がってないから。だから、毒を盛られた場所はやっぱり屋上なのかもしれない」

「そうだな。屋上なのは間違いないかも」



俺と希月で話し合いをしていると、当たり前のように、保健委員のひとりが立ち上がり「質問です」と言って手を挙げた。



「その、湖上高校からの侵入者がやはり怪しいのでは?」



霧丘のことか。



希月はいきなり割り込んできた保健委員に、もう驚くことはなかった。



「いや、湖上高校の人がそんな演技をするほどの人間なら、奏寺くんに見つかった時点で毒事件なんて起こさないだろう」

「おー、なるほど」



保健委員が納得して、椅子に座る。



全く、いつのまに全員椅子を用意して座っていたのだろうか。



「となると犯人は…。ダメだ。全くわからない」



希月が悔しそうにしている。


その時、俺はあることを思い出した。



「あ、そうだ。図鑑の写真!」



霧丘がくれた、毒の原料の植物の写メ。


あれを、今日第二高校に忍び込む春崎先輩に送らなくては。



俺は慌てて携帯電話を探す。



「奏寺くん、どうしたの?」

「いや、携帯電話を探しているんだが…」



いつも携帯電話を入れておくポケットには、何も入っていない。


というより、むしろ屋上に行く時に持って行った記憶がない。



「部屋に置き忘れたんじゃない?」

「ああ、そうだと思うが…」



あの携帯電話は、お客様や情報部員と連絡をとるための、大切な道具だ。


いつも肌身離さず持っているからか、無いとわかると急に不安になる。



「うわー。先輩から着信きてるかな。早いところ写メも頼まないと…」



焦る俺を見て、冷静に希月が言い放つ。



「…着信か、きっとたくさんきてると思うよ」

「ああ、だよな」

「うん。だって情報部員からしたら、君も突然居なくなったようなものだし」

「は?」



俺は、希月が何を言っているのか分からなかった。


希月が何かをごまかすかのような笑いをした。



「だって君、二日もここで寝てたから」 

「………はぁっ?!」



思わず大声をだしてしまった。



「何で二日も?…っていうか、すぐ言えよそれ!」

「いやー、言うの忘れてて。それに奏寺くん、凄い熱だったんだ。ね、保健委員の皆さん」



希月が保健委員に顔だけ向けて、同意を求めた。


保健委員が一斉にしゃべりだす。



「そうそう。だいぶ辛そうだった」

「毒飲んだのに、大雨に打たれたせいだよ、きっと」

「病み上がりにも冷や水はいけないな」




どうやら二日も寝ていたのは本当らしい。


俺がぽかんとしていると、希月が新聞を差し出した。



「ほら、新聞部の今日の朝刊」



新聞を受け取った俺は、日付を確認した。


「ほ、本当に土曜日だ。…しかも」



記事に目をやると、大きく『生徒会役員、闇鍋パーティー』と書いてある。




葉山副会長は金曜日の夜にパーティーをすると言っていた。


そして、この新聞にはそのパーティーの様子が書いてある。



「本当にあの人、闇鍋やったのか…」

「その言い方だと、奏寺くんはこのパーティーのこと知ってたのか」

「まあな。ついでに新聞部に教えたのは俺だ。木曜の朝、メールを送った」



希月が溜め息をついた。



「本当に…情報部って何やってるんだよ」



呆れかえる希月を放っておき、俺は保健委員達に向けて聞いた。



「このパーティーに保健委員長も出たはずだろ?無事か?」




いつの間にか、俺も希月もすっかり保健委員に敬語を使わなくなっていた。


彼らもそれで良いのか、全く不満を見せない。




「私は無事だったわ」



そう言いながら、ポニーテールの女子生徒が立ち上がる。


どうやら彼女が保健委員長らしい。



「ただ、何人かは今朝の生徒会役員会議に顔を出さなかったわよ」

「それは、つまり」



希月が苦い顔で聞いた。

保健委員長は大きく頷く。



「昨日の闇鍋の『被害者』よ。開催者は葉山くんだけど…守衛部の拘束対象になるんじゃない?」

「う、うーん」



希月は腕を組んで悩んでいた。



真面目な奴だな。



「ちなみに、その会議に出られなかった人とは、いったい…」

「確か…会長は来たけど。来なかったのは書記が一人と会計が一人。あと風紀委員長もいなくて…」



風紀委員長もか。



俺は思わず微笑んでしまった。


希月の冷たい視線を感じる。



「そういえば、滝くんもいなかったわ」

「え」



滝体育委員長も?


あの人は、パーティーの真の目的を知っていたはずだが。



俺が不思議に思ったのを見透かした保健委員長が、深く頷いた。



「ほんと、滝くんは苦労人だから」

「あははっ。なるほど!…って、それどころじゃないか」




いけないいけない。



とりあえず今は携帯電話だ。

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