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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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保健委員がいる部屋で

目を開くと、明らかに自分の部屋ではない所にいた。


かろうじてここがベッド上だということは分かる。




しかし、俺はここを知っているような…。




意識が曖昧な状態で、頭を無理やり働かせる。


その時横から、しっかりとした声が聞こえてきた。



「大丈夫?奏寺くん」



誰の声だろうか。




視線を声のする方に向けると、声の主と目が合った。


その瞬間、意識がどんどんはっきりしてくる。



「希月…?」

「ああ」



声の主、それは守衛部の希月だった。




しばらくして、俺はやっと状況を把握できた。



「つまり、あれだ。俺は土砂降りのなか屋上に倒れていた。それを見つけた希月が、ここまで運んでくれたと」

「うん。合ってるよ。ちなみに君は、体力が低下し過ぎて倒れたみたいだよ」

「そいつは、ありがとう。正直助かった…」



感謝の気持ちを感じつつ、とにかく俺は周りを見渡す。



なるほど。

どおりで見覚えがあるわけだ。


ここは最近お世話になったばかりの、保健委員の部屋じゃないか。



そんな俺を見て、希月が心の底から心配そうな表情をした。



「まさか奏寺くん…闇討ちにでもあったのか?」

「…へ?」



初めは、何言ってるんだこいつは、と思った。



しかしよく考えると、大雨の屋上で倒れていたら、そう思ってしまうのも仕方がない。




そんな俺たちの会話を聞いて、保健委員達がひそひそ話を始める。



「毒の次は闇討ち?」

「酷いことをする奴がいるんだな」

「毒とか闇討ちとか…卑怯だよね」



ここの生徒の内緒話は相変わらず丸聞こえだった。




だが、毒という単語を聞いた希月は、より一層深刻そうな顔をする。



まずい。変な感じに勘違いされている。




「まて希月、お前誤解しているぞ」

「誤解も何も、これは酷すぎるよ…!」



希月の目は、燃えていた。



こういう奴に説明をするのは、骨が折れそうだ。


さて、どこまで説明するか。



「とりあえず、おれは害から生徒を守る『守衛部』だから。奏寺くんを敵から守るよ」

「うーん…敵か…」



俺は考える。



例えば、もし俺たち情報部が毒事件の犯人を突き止めたとして。



その犯人に対して、俺たちは何ができるのだろう。


しかも、その犯人がもし…。




「…そうだな、守衛部の助けは必要かもしれない」


俺が呟くと、希月は大きく頷いた。



「うん。遠慮しなくていいよ」

「…とりあえず、簡単に説明する」




俺は情報部員の名前は伏せ、第二高校と第三高校に潜入したこと、そして毒を盛られたことを話した。



希月が呆れた顔で溜め息をついた。



「他校に潜入って…何やってるんだよ君は……」

「まあ、そういう依頼があったんだ」

「どんな依頼だ?」



さすがにお客様の情報を細かく話すことはできない。

ここは少し曖昧に答える。



「ま、ちょっとした調査ってところだ」

「はあ…」



希月は少し黙り込み、俺から聞いた情報を整理しているようだった。

ある程度時間がたつと、軽く頭を縦に振った。



「なるほど…つまり、奏寺くん達は毒事件の犯人を探していると」

「そうだ。そこで頼みがある」



俺は真っ直ぐ希月の目を見た。



「俺たち情報部に力を貸してくれないか?」



希月は頭を抱えて悩み出す



……かと思いきや、元気な笑顔で即答した。



「任せて」



思わず、こちらが呆気にとられてしまった。


そんなに快諾できる問題ではない気がするんだが。



「いいのか?守衛部が好まない情報部が、勝手に手を出した件だぞ?」

「まあね…でも情報部は、俺たち守衛部と同じ学校の生徒だ」



保健委員も聞き耳をたてているのか、やたらに静かだった。




爽やかな笑顔で希月は続けた。



「その情報部が被害を受けているなら、おれ達は全力で助けるさ」




そのセリフを聞いた保健委員達が歓声を上げた。


その声に希月が驚いて、振り返る。




それにしても、こいつ…。


こう、物語の主人公みたいな奴だな…。



「あははっ!」



俺は思わず笑い出してしまった。


何が何だかわかっていない希月は、俺を見たり保健委員を見たりと、混乱していた。



「ちょっ…何なんだよ」

「ああ、いや、悪い悪い」



笑いを噛み締めながら、希月に謝る。



「じゃあ…頼むぞ」

「あ、ああ」


希月はまだ困惑しているようだが、すぐに頭を切り替えたらしい。

希月は、勢いよく俺に聞いてきた。



「それで、おれに何ができる?」

「そうだな、今は情報部が総力を上げて情報を仕入れている。犯人が分かり次第、拘束を頼みたい」

「わかった。ただ守衛部の性質上、奏寺くんを守るなかで、妨害してくる犯人を拘束することしかできないけど」



そうか、守衛部のはあくまでも『生徒に害を出す者』が拘束対象なのか。



それを守るなんて、真面目だな。



「ああ。構わない」

「わかった。…じゃあそろそろ、屋上に倒れるまでいた理由を聞こうか?」



俺は思わず、希月から顔を背けた。


そして、小さな声で答える。



「…ちょっと考え事をしていたんだ」

「それはこの、毒事件関係の?」

「まあ、そうだな」



俺が言い辛そうにしていると、ひとりの保健委員がこちらに近付いてきた。



「よかったら、お茶でもどうぞ」



円い眼鏡をかけた短髪の男子生徒が、お盆にのせた湯のみを笑顔で差し出す。


俺と希月はそれを素直に受け取った。


「…あ、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「おきになさらずー」



湯のみを取るとき、その保健委員のネームプレートがちらりと視界に入った。



そこには『小林』と書いてある。



…この名前は。



「もしかして、あなたが『毒に詳しい小林くん』ですか?!」

「いや…」



小林は眼鏡のズレを手で直し、絶妙な角度でこちらを振り向く。



「『毒物関係に詳しい小林くん』です」



そう言うと、小林は俺達に背を向けてその場を離れていった。



俺が思わず独り言を呟く。



「毒じゃなくて毒物関係か。細かいところを気にするな…」



それを聞いた希月が、苦笑いした。



「いや、そこは自分を『くん』付けしたところを突っ込むべきだろ」

「そこはあまりにも自然すぎて、俺はそんなに気にならなかったんだが…」



このあと数分間、小林の話題で少し議論をした。


確実に小林にこの会話は聞かれていただろうが、その時はあまりにも夢中になり過ぎて気付かなかった。



少し、申し訳ない。




議論が落ち着いたところで、希月が優しい微笑みを浮かべた。



「…な?おれと奏寺くんとで同じ物を見ても、違う意見がでるだろう?」

「そりゃあ、当たり前だろう」

「奏寺くんが雨に打たれながら考えていたことも、違う人間から見れば、違う答えがでるかもしれない…」



俺は思わず、はっとして、希月を見る。



希月は、いつの間にか真剣な顔になっていた。



「奏寺くん、何で悩んでいたのか話してみない?」



今度は笑いは起きなかった。



むしろ俺は、何か光が見えたような、助けが来たような思いが生まれた。




「…実は」



俺が口を開き、悩みを打ち明けようとした、まさにその時だった。



またもや、保健委員のひそひそ話が聞こえてくる。



「何か、ドラマ観てる感じ」

「確かに。あの守衛部が主人公で、荒くれた不良の心を開かせる、みたいな」

「刑事と犯罪者ってのも有りだな」



俺と希月は苦笑いした。



しかし、俺の配役って…。


特に最後の例えはリアルすぎて洒落にならない。



「…ええと、とりあえず聞いてもらえると有り難いんだが」

「うん…少し言いにくい雰囲気だけど、教えてくれる?」

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