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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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想定外の被害者たち

「それで、霧丘はいつ毒を盛られたか分かった?」

「ううん…、残念ながら。でも盛られたのは私達が同時にいた、第二高校か第三高校だと思う」



その意見には俺も賛成だった。


似た症状を同じ時期に発症したならば、同じ毒を同じ日に飲んだ可能性が高い。



「奏寺さんは、潜入中に食べ物や飲み物とかを口にした?」

「いや、全く。霧丘は?」

「私も同じ。そうなら、やっぱり空気中にあったのを吸っちゃったのかな…」



保健委員もその可能性が高いと言っていた。


状況から考えて、そうなるのだろう。



俺も霧丘も毒の知識が貧しいせいか、話合いながらも疑問が絶えない。



「だけど、ピンポイントで私達ふたりに毒を与えるのって難しいと思うんだけど」

「…そう言えばそうだな。空気中に毒をばらまける場所も限られるし…」



何より目に見えない毒なら、自分の学校の生徒にも毒を与えてしまうかもしれない。


そういった懸念もあるのに、よく毒なんて使えたものだ。




考えれば考えるほど、ややこしくなってくる。



霧丘も同じらしく、沈黙が流れた。



あまりにも静かすぎて、壁にかけてある時計の針の音が部屋に響く。



「だめだ。もう少し調べてから、またお互い状況報告といこう」

「そうだね…。じゃあまた 」



電話を切ると、少し眠くなってきた。



やはり、毒を体に入れるのは負担になるのだろうか。




とりあえず香藤部長にだけでも報告の電話を入れ、休むことにした。



俺は少し伸びをしたあと、香藤部長の電話番号を入力して電話をかける。



数回呼び出し音がした後、留守番電話になった。




そう言えば、まだ授業中か。



 

留守番メッセージに簡単に報告を入れ、俺は眠りについた。







「う…」


俺は目を覚ます。


今回は、熟睡できた感じがした。



想像以上に体調も改善しており、起き上がるのも楽だった。





俺は軽い足取りで部屋を歩き、窓を開ける。


清々しい青空を想像していたが、空は一面灰色の雲で覆われ、外は暗い。



…うーん。さっきまでスッキリした気分だったんだけど。



ちらりと時計を見ると、午後三時を過ぎている。



さて、遅い昼ご飯でも食べるか。


今日こそラーメンを!と思ったその時、ドアがノックされた。




「…」




今日はしっかりと覗き穴から訪問者を確認し、ドアを開けた。



「お疲れ様です。香藤部長に雪平先輩」


少し珍しい組み合わせだ、そう思いながら部屋に招く。



「奏寺もお疲れ」

「だいぶよくなったみたいだな」



とりあえず座布団の上に座ってもらう。

お茶を出そうとしたが、雪平先輩が「気を遣うな」と言ってくれた。



そして俺は気になっていたことを、話の流れを無視してつい聞いてしまう。



「あの、白池先輩は?」

「白池は第二高校に調査しに行ってるのさ」


持参したコーヒーをテーブルに並べ始めた雪平先輩が先に答えた。

俺は反射的に聞き返す。



「第二高校に?」

「ああ。毒物使用した可能性があるから、調べに行ってもらっている。…お湯を頂く」



コーヒーカップを持ちながら、雪平先輩はキッチンに向かった。




相変わらず自由だな、この人も。



そう思っていると、香藤部長が補足のように説明してくれた。


「第二高校にも第三高校にも、薬物を扱う部活があるからな。念のため調査してもらっているんだ」

「な、なるほど」

「ついでに第三高校には、春崎(はるさき)が行っている」



春崎とは、情報部唯一の女子部員『春崎瑠衣伽(はるさきるいか)』のことだ。


春崎先輩は身体能力が高く、また手先が器用である。


そのため、誰にも姿を見られないように隠れて情報を集めることを得意としている。



「噂をすれば、か」



香藤部長の携帯電話に、春崎先輩から電話がきた。


香藤部長が電話をとる。



「もしもし。…ああ、いる。少し待て」



香藤部長が俺に携帯電話を差し出した。



「春崎がお前に聞きたいことがあるらしい」

「あ、はい」



急いで俺は携帯電話を受け取り、電話に出た。



「春崎先輩、お疲れ様です」

「…あ、奏ちゃん。お疲れ様…」



春崎先輩はぶっきらぼうに話すが、俺のことを『奏ちゃん』と呼ぶ。


最初は少し抵抗があったが、今はもう慣れた。



「奏ちゃんの病状って、咳が酷くて高熱。でも食欲はあるんだよね…?」

「はい。今はほぼ治りましたが」

「治ったの?…それはよかった。けど…」



春崎先輩が少し小声になった。

もしかしたら、周りに人がいるのかもしれない。



「あのね…第三高校、四十人くらいの生徒が休んでるの…。ほぼ全員が、奏ちゃんと同じ病状で」

「えっ?」



俺は思わず大きな声を出してしまった。


春崎先輩はそれを想定していたのか、特に慌てた様子もなく会話を続けた。



「しかも…毒物ってことは判明したみたいだけど…、校内の薬物を扱う部活や組織は、その毒に一切心当たりが無いみたい。解毒剤を大慌てで開発してる…」

「じゃあ、つまり…」

「ええ…。奏ちゃんが毒を盛られた場所は第三高校だと思うけど…」



春崎先輩は一呼吸を置いて、結論を出した。



「盛ったのは、第三高校の生徒ではないかもしれない…」



つまり、俺が毒を服用した『場所』は第三高校の可能性が高い。


しかし第三高校には、原因となった毒を扱う部活や組織は存在せず、むしろ被害も出ている。

よって毒を使った『犯人』は、第三高校の生徒以外だと考えられる。



考えすぎて、頭がごちゃごちゃになってしまう。



「うーん、頭が痛いです」



俺の呟きを聞いて、春崎先輩が少し笑った。



「ふふ…。私も。…それにしても、疲れた…。被害者がバラバラで」

「バラバラ?」

「そう。クラスも、部活もバラバラ…」



確かに、それなら必要以上に歩き回る必要があっただろう。



しかし、バラバラとは。




最初は、毒を盛った『犯人』の狙いは、俺や霧丘のような侵入者への攻撃だと思っていた。



しかし、春崎先輩の情報によると第三高校の生徒も四十人ほど被害にあったとか。



犯人はなにがしたいんだろうか。



「春崎先輩、被害にあった第三高校の生徒に全く共通点は無いんですか?」

「そうね…。強いて言えば…全員、屋内で部活や委員の仕事を行っている生徒、だったこと…かな」



なるほどなるほど。


俺には、もう手に負えない気がする。



よし、香藤部長たちと話し合ってみよう。




「ありがとうございました、春崎先輩。それにしても、どうやってそんな細かな情報を?」



電話の向こうで、春崎先輩が怪しく笑う。



「ふふっ…色々、私も進化してるから…」

「あははっ!本当に先輩がたは頼もしいですね」



再度お礼を言って、電話を切った。



気が付くと、目の前のテーブルにはコーヒーが人数分置いてある。


雪平先輩も席に戻り、香藤部長と俺をじっと見ていた。



俺は春崎先輩に聞いたことを、ふたりに全て話し始める。

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