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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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語る城戸

「おー!良い風だ!」


放課後、俺は屋上にいた。


潜入捜査で霧丘に連れてこられた屋上は、割と居心地が良かった。


だから、自分の高校の屋上にも行ってみようと思ったのだ。


想像通り、気持ちが良い。


風紀委員が来ない事を祈り、そこら辺に座った。


「…」


結局あの後、相宮も暮谷も話しかけては来なかった。


これで暮谷がなぜあの騒動に関わったのか、謎のままだ。



「面倒くさいな…」




それよりも、だ。


あの騒動のせいで、非常に生徒会室に行きにくいのだが。



頼まれた情報の報告書は、未だに渡せずにいた。


幸いなことに期限までまだ日はある。

とりあえず今日は、止めておこう…。



床の上に横になろうとした時、携帯電話が鳴った。



「はい、もしもし」

「あ、奏寺くん?」


この声は…城戸か。


「ああ、お疲れさま」

「そちらこそ。朝は色々あったみたいね」

「まあな」


軽く受け流す。

城戸もそんなに朝の騒動に興味が無いのか、すぐに本題に入っていく。


「情報部さん、いつものちょうだい」

「あー、まいど」


戦闘部はいつも、他校の情報を定期的に買っていく。


その情報とは色々あるが、大体は新聞部がボツにしてしまうほど、小さなネタだ。



例えば、新聞部は『第八高校、第九高校に勝利』、『第三高校、新たな機械を導入』などといった、大きな出来事は新聞に載せる。


ただ『第八高校、侵入者が入るが逃がす』、『第三高校、第五高校に殴り込み』など、よくあることは載せない。


しかし戦闘部はそういった小さな情報も把握しておきたいらしい。



城戸が、力強い声で話し出す。


「でさ、料金のことなんだけど。今回はこちらも情報で払って良い?」

「情報で?」

「そう。もちろん私には情報の価値なんて分からないから、過不足があったらちゃんと言って」


不足があったら、ではなく過不足があったらか。


さすが、城戸はそういうところはしっかりしている。



前例は無いが、俺達が渡す情報に見合ったものなら、香藤部長達も良いと言ってくれるだろう。


「良いけど。いったい何の情報?」

「ふふ…暮谷くんの情報。もしかしたら奏寺くん、気になってるんじゃないかなって思って」


俺は少しドキリとした。


…なるほど。

城戸は意外と交渉が上手いのかもしれない。


とはいえこれは俺だけが欲しい情報だ。

部活には俺がその分、支払おう。



電話から、城戸の嬉しそうな笑い声が聞こえる。


「交渉成立ね。じゃあ話すわ」

「え、今?しかも電話で?」

「うん。だって盗聴されて困るものじゃないでしょ」


そうだけれども。


「いつも通り、こちらは報告書作って渡すから、城戸たちは1日先払いになるけど」

「あーいいのいいの。それより、忘れちゃいそうだから、早く言わせて!」


城戸は少し早口で言った。


どうやら本当に忘れてしまいそうだ。



「わかった。頼む」

「うん。任せて。


まず、これはこの前の金曜日。三日前になるのかな?


偶然、校門の前で暮谷くんと会って、話してたの」



偶然、というのは実は城戸の嘘である。


暮谷と城戸は周りには秘密で、少し前から付き合い始めているのだ。


だから、本当は校門で待ち合わせでもしていたのだろう。



ちなみにこの情報は、たまたま暮谷が城戸に告白する現場を見てしまった、白池先輩の情報である。



「それで暮谷くんと話してたら、生徒会長がこれまた偶然来たの。


それで暮谷くんを見て

『あ、お前暮谷ってやつだろ?なぜか俺、お前のこと知ってる。元気か?』


みたいなことを言ってきたの」

「ああ、相変わらずてきとうな会長だな」

「でしょ?」


この高校の生徒会長は、面倒くさがり屋かつてきとうな性格で有名だ。


ついでに性別は男。


「そしたらその会長が、


『暮谷ってあの情報部の奏寺ってやつと同じクラスだろ?どんなやつだ?』


って聞いてきて」

「…え?会長が俺のことを?」

「そうよ」


俺は少し驚いた。

城戸はそんな俺に構わず、話し出す。


「暮谷くんは『奏寺くんとあまり話したことないからよく知りません』って答えたの。

でも、私は奏寺くんと同じ中学でよく知ってるから、代わりに中学の時の奏寺くんのこと教えた」

「よ、余計なことを…」

「あら、別に良いじゃない」


城戸は楽しそうに言った。


まあ、実際に構わないことなのだが。



問題は、暮谷ってことか。


暮谷は俺の中学生の時の姿を、聞いてしまったのか。


「…それで、俺のことはなんて説明した?」


俺は立ち上がり、屋上からグランドを見渡した。

なんとなく、暮谷の姿を探す。


「ん?そこ気になる?まあ、いいけど。

私は『中学校の時の奏寺くんは、暮谷くんと三割くらい似てた』ってまず言った」

「三割?微妙だな。それって似てるのか?」

「多分。そしたら暮谷くんに、どこが似てるの?って聞かれたから、『学級委員長やっていて、クラスの皆をまとめていた人気者のところ』

って答えた」

「…」


確かに、俺は中学校では学級委員長を任され、クラスの中心にいた。



俺が何か言うのかと思ったのか、城戸は少し黙り込んだ。


しかし沈黙が続くだけだと察し、再び城戸が口を開く。


「それを聞いた暮谷くんは驚いてた。だけど性格は全然違うとは言ったかな。うん。確か」


その通りだ。


暮谷は持ち前の正義感により、クラスメートからも教師からも信頼され、クラスをまとめていた。


中学の時の俺は、ただ楽しいことを皆でしたかった。それに皆がついてきてくれて、クラスをまとめられた。

おかげで教師からは冷たい目で見られていた記憶がある。


「…そうか。それで?」

「会長は『そうなんだ』って言ってどこか行っちゃった。でも暮谷くんは、考え事を始めた」


俺はまだグランドを見渡していた。

暮谷は見つけられない。


「それで、暮谷くんが独り言で『俺は何も知らなかっただけなのか?』みたいなことを言ったの。それが、朝の騒動に暮谷くんが関わった理由じゃない?」


俺は思わずため息をついた。


城戸が笑い出す。


「なによ、そのため息?」

「あははっ。よくわかんないかな、俺も」


暮谷をグランドから見つけられない俺は、少し空を見上げる。


「それで奏寺くん、料金は足りたかな?」

「そうだね。…ちょっとオマケつけて、明日報告書を渡すよ」

「え、いいの?やった!」


城戸が無邪気に喜びだした。



今更だが、城戸は自分の彼氏のことを、こんなに話してしまって良いのだろうか?





その後、少し会話をしてから電話を切った。



「…」


色んな感情や考えが、頭の中で交差する。


少し、整理をしたい。



そう思い、屋上の柵を握り締めながら目を瞑る。



その時のだった。


「…あれっ?」


後ろから、男子の声がした。


俺が目を開いてから振り返ると、そこには意外な人物がいた。


「あっ、すいません。先客いたんですね」


屋上の扉を半分開いた状態で、男子生徒が軽く頭を下げながら喋ってきた。



こいつは、『希月(きづき) (さと)』。


守衛部のエースだ。

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