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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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喧嘩と強がり

相宮は、俺の服から手を放す。


俺は地に足を着く。



一見、両者が落ち着いたように見えたが、2人は睨み合っていた。


むしろ、状況は悪化したような気さえする。


周りの人々もぴくりとも動かない。





そして、ついに相宮の拳が動く。



俺は、それを受け止める姿勢をとった。





「そこまでだ」



相宮の腕が、第三者により止められた。


先に正気に戻った俺が、思わず止めた人の名前を呼ぶ。


「た、滝体育委員長…!」


滝体育委員長は無表情のような、少し怒ったような顔をしている。


相宮もその名前を聞いて、おとなしくなった。


それを確認した滝体育委員長は、無言で手を放す。



その時、俺の後ろから小さな声で話しかけてくる者がいた。


「大丈夫か?奏寺」


軽く振り向くと、俺のクラスの学級委員長の暮谷がいた。

なにやら心配そうな顔をしている。


「…なんで、お前が?」


思わず喧嘩腰で言ってしまった。

暮谷が苦笑している。



その後、俺と相宮、そして暮谷が生徒会室に呼び出された。



…というか、なぜ暮谷はこの騒動に関わってきたんだ?

いつも俺を避けているに、声をかけてきたし。


正直、とばっちりを受けたようにしかみえない。




辿り着いた生徒会室には、恐ろしい人物が待ち受けていた。


「お前たちはなーに朝っぱらから表で騒ぎ起こしてんだよ。しかも今日は来客がいるって…わかってんだろ!」



俺と相宮は床の上に正座をさせられ、冷川(ひやかわ)風紀委員長に怒られていた。


怒られるのは覚悟していたが、まさか冷川風紀委員長のお出ましとは…。



風紀委員が怖い俺は、冷や汗が止まらない。



終始無表情でその様子を椅子に座りながら見守る滝体育委員長と、少し状況に馴染めない暮谷が目に入る。


「奏寺、聞いてるのか?!」


おっと、危ない危ない。


「き、聞いてます!」


その時、生徒会室のドアが開き、葉山副会長がこの空間に入ってきた。


この異様な雰囲気に少し驚いているのか、中に入るのをためらっていた。


同時に滝体育委員長が立ち上がる。


「葉山も来たことだ…冷川、もういいだろう」


冷川は少し滝体育委員長を睨むと、生徒会室を出て行った。



葉山副会長が首を傾げ、滝体育委員長に話しかける。


「どうしたの?」

「いや、それがよ…」


一部始終を滝体育委員長が葉山副会長に説明した。

詳しく伝えようとしているが、それが逆に話のまとまりを無くし、葉山副会長は若干困っている。




この人、説明下手だなー。


と思ったが、もちろん口には出さなかった。



所々、暮谷に助けてもらい、やっと理解できた葉山副会長は笑顔になった。


「なんだ。そういうこと」

「…なんで笑顔なんです?」


暮谷が困惑した顔で聞く。


「なんで、って。第三高校の人たちは、犯人がうちだとは思ってないから」

「…え?」


葉山副会長以外の4人の声が重なる。葉山副会長は説明口調で話し出した。


「僕たちと仲のいい『第八高校』も、警報装置が壊されたらしい。だから、僕たちはシロだろうって」

「じ、じゃあ!なんで奴らはここに来たんすか?」


相宮が勢い良く言った。


「その情報が入ったのが、この学校の敷地に入ってからだったんだ」

「あー」


俺が気の抜けた声で納得したふりをする。

相宮がこちらを睨んできた。



全く、なんで睨むのか。



そう思った次の瞬間、相宮の口から意外な言葉が出てきた。


「悪かった。俺の思い込みだったんだな」

「………は?」

「いや、だからごめんって」


俺は驚いて、しばらく喋れなかった。


ただ、相宮の声は謝罪の気持ちでいっぱいではあったものの、目はやはりこちらを睨んだままだ。



「なんで睨みながら謝るんだよ…。あ、まさか照れ隠し?謝るの苦手?」

「う、うるせー!」


図星のようだ。


何というか、分かりやすい。



このやりとりを温かい目で見ていた葉山副会長が、手を叩く。


「さ、これにてこの騒動は閉幕。早く教室に行こうか?」

「そうですね」


暮谷が時計を見ながら、駆け足で出口に向かう。

気が付けば、授業開始3分前だ。


「では、失礼します!」


俺と暮谷、相宮は葉山副会長と滝体育委員長に礼をして、教室に向かって走る。



走っている間、俺の前にいる相宮と暮谷が何かを話していた。


もちろん、俺には聞こえない。


その後、暮谷が俺の方を見て何かを言おうとしていたが、なかなか言い出さない。



少し、俺は苛立ちを覚えた。



一気に2人をこの鍛え上げた足で抜かし、前を見ながら言葉を放つ。



「情報部と関わるには、善意だけじゃ駄目だ」


俺は自ら『友達』を作るチャンスを潰した。

後ろの2人は黙り込んでしまう。



少し理由のわからない罪悪感を感じた俺は、明るい声で、微かに後ろを向き笑って見せた。


「俺は、大丈夫だ」


そう、大丈夫だ。

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