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……ド……ディド……。
(誰か呼んでる……誰?)
……ディド……。
(ここどこ? 真っ暗で何も見えない)
……ディ……ド。
(赤い光……? なに? 待って、行かないで!!!)
手を伸ばそうとしたその時、視界が明るくなり色鮮やかな天井が目に飛び込んできた。
魔法都市ティエルモン独特の天井画だ。
そして、自分は横になっているのだと気付く。 夢を見ていたのだ。
ゆっくり体を起こすと全身にひどい倦怠感を感じた。 再び眠りたいと思うほど体が重い。
(私……どうしてここに?)
ここはおそらくミーチェの家だ。 天井に見覚えがある。
ディドは未だ朦朧とする頭で順に記憶を辿っていった。
(そうだ、皆は!?)
慌てて辺りを見渡すと、隣のベッドでアシュレーが眠っていた。
体にはいくつも包帯が巻かれ、痛々しい切り傷もいたるところに見える。
(アシュレー、こんなに傷が!)
あの後アシュレーは一人で兵士に向かっていったのだろうか。 こんな自分ためにここまでしてくれたアシュレーに、ディドはいたたまれない気持ちでいっぱいになった。