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「ミーチェ、いくよ!」
「OK! いつでもどうぞ」
リンツ得意の土の魔法で兵士たちの周りを泥のぬかるみに変えたら、足元を取られている隙にミーチェが氷の魔法で足場を固めて動きを封じる。
それがアシュレーの指示だ。
二人が頷き合い、絶妙なタイミングで呪文を唱え始めとアシュレーも呼吸を整え時を待つ。
今だ! そう踏み出そうとしたその時、頬を背後から小さな刃が掠めた。
「二人とも、伏せろ!!!」
本能的に危険を感じて、振り返り様にそう叫んだ。
「痛っ! 何なの!?」
三人の背後で物凄い勢いで渦巻く風。 そこからもれ出た風が刃となりアシュレー達に次々と襲い掛かる。
渦は次第に勢力を増し、猛スピードで膨れ上がっていた。
そして、その中心には……
「ディド!」
何かを叫んだディドの声に呼応するかのように無数の風の刃が辺りに乱れ飛ぶ。
予期せぬ攻撃に、ミーチェとリンツは反応ができない。
アシュレーはとっさにミーチェを突き倒し地面に伏せた。
が、リンツは間に合わない!
声を上げる間もなく彼は吹き飛ばされ、無抵抗のまま地面にたたきつけられた。
周囲には血がじわりじわりと広がっていく。
それでも体が繋がっているだけマシだろう。
足を固められて動けなかった兵士たちは体を無惨に切り刻まれ、既に事切れていた。