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(本当にこれでいいの?)
3人が意を決している中、ディドは一人戸惑っていた。
アシュレーは剣士ではあるが、これまで無益に人を傷つけることも命を奪うこともしていない。 これまでの追っ手も上手くあしらってきた。
そんな彼に手を下させていいのだろうか?
そもそも自分がアシュレーの手を取ったせいで彼を渦中に巻き込み、この街に逃げて来たせいでミーチェとリンツを巻き込んだ。
そして大人しく要求に応じなかったために、兵士が死ぬまで解けない魔法にかけられたのだ。
何も知らない彼らをこんな目に合わせた元凶が、のうのうと守られていていいはずがない。 ならば……
(アシュレーじゃない、私がやるべきなんだ。 あの時みたいに…… だって私の手はもう血で汚れてるもの!!!!)
瞬間、ディドの中で何かが弾けた。
脳裏には城での惨劇がよみがえり、胸の奥から黒くて冷たいものが滲み出してくる感覚に襲われはじめる。
視界が次第に暗くなり、彼女の意識はそのまま黒く冷たい「何か」にのみ込まれていった。