(65)
(私も魔術師なのに…… 魔法さえつかえれば!!)
アシュレーが責められるべきではないのだ。 強力と言われる魔力を持ちながら、何の役にも立たない自分こそが批難されるべきだろう。
(強い魔法が使えたら! でもあの時みたいに……)
力が暴走したら?
こんな殺戮者をアシュレーは、彼らはいったいどう思う?
(なんでこんなこと考えるの? 私はもう一人ぼっちのままで、誰も信じないつもりだったのに…… だから別に嫌われたって!)
ディドが心の中で葛藤していると突然ミーチェが大きな声を上げた。
「わかった、やっと思い出した! この人たち狂戦士の魔法をかけられたんだわ! そうよ、絶対にそう!」
「狂戦士の魔法?」
アシュレーは相手の剣を受け止めながら彼女に問いかける。
「そうよ間違いないわ。 狂ったように戦い続ける魔法よ。 でも変ね…… 危険過ぎて禁止されてたはずだけど。 第一、今使える人がいるなんて聞いたことないわ」
「彼らみたいな兵士には使えない?」
「使えない。 難易度が高すぎるし危険なの」
「ミーチェは?」
「いくら私でも無理」
「じゃあいったい誰だ? さっき言っていたティエルモン卿とかいう奴か?」
考えている間にも兵士は絶えず攻撃を仕掛けてくる。
アシュレーは忌々しそうに相手の剣を捌きミーチェに問いかけ続けた。
「まさか! ティエルモン様がそんなことするはずない!!! 馬鹿なこと言わないで!!」
「わかった。 なら、せめてこいつらの止め方を教えてくれ」
「あ、それは……」