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「クソ! これじゃまるでバケモノだ!」
大きく肩で息をしながら呼吸を整えるアシュレーは周囲を囲む兵たちに驚愕していた。
何度も急所を突き、相手の意識を奪ったはずなのに、すぐにむくりと起き上がる。
まるでゾンビのようだ。
いったいどうなっているのか。
ディドは今、かろうじてミーチェかリンツの防御魔法で守られている。 しかし、このまま戦い続ければ体力が尽きて先に倒れるのは間違いなく自分たちだ。
アシュレーはこれまでにない焦燥感に襲われていた。
一方、ミーチェとリンツの二人は互いに背を向け合い死角を作らないようにしながら兵たちと対峙している。
二人も同様に不死身の相手に違和感を感じとっていた。
「私の魔法をまともに喰らって、立ち上がってくるなんてどういうこと!?」
「そもそも意識が直ぐに戻るなんてことがあってたまるかよ!」
「あっ! ……そういう人がいるってどっかで聞いたような。 ねぇ、リンツどう思う?」
「思い出してる余裕なんてない!!」
「もうっ! リンツ余裕なさすぎ〜」
「二人とも真剣に応戦して! これは遊びじゃないんだ。 気を抜いたら殺されるかもしれないんだぞ!」
「言われなくたって本気よ!」
「誰のせいでこうなったと思ってんだ! だったらアイツ、お前が守れよ! 僕は防御魔法も同時にかけてんだからな!」
その言葉にディドはびくっと体を震わせた。
守られた空間の中でただ怯え、見守ることしかできていない。
何もできない自分が悔しかった。