(60)
「アシュレー!?」
何を言い出すのだ。
ディドは必死で止めようとする。 が、そんな彼女を無視してアシュレーは続けた。
「悪いけど、二人は別のルートで逃げてくれないか?」
「どういうこと? あなたたち何かしたの?」
「別に何も。 たださ、俺達の問題にこれ以上巻き込むわけにいかないだろ?」
「なんだよそれ。 また勝手なこと言いやがって!」
「そうよ、それで納得できるとでも思ってるの? ここまで来て離れろなんて」
「……やっぱりダメ?」
固唾を飲んで見守っていたディドはふとアシュレーと目が合い驚いた。
(悩んでるんだ…… 本当のことを話すか話さないかを)
その視線を受け止めディドは無言で首を横に振る。
(王都の兵から逃げている、なんて絶対に言えない。 そんなこと言ったら、きっと兵に引き渡されるに決まってる)
ディドの返事を受けて、意を決したアシュレーは鋭い視線で兵を見据えた。
「わかった。 それならミーチェ、リンツ、しばらく黙ってて欲しいんだけどいいかな?」
「何だよ、それ」
「おそらく彼らは声をかけてくるはずだ。 俺がテキトーに受け答えするから、君たちは何も口にしないでほしいんだ」
「つまり?」
「その場凌ぎ。 あくまで彼らの目的は俺達だ。 二人は何も知らない風を装っててくれ」
「理由は?」
「理由は…… 後で話すよ。 今は聞かないほうが都合がいい」