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「なによその反応。 あ! まさか、逢び引き!? ふ〜ん、そう。なるほどね。 どーりでこの私の誘いにも乗らないわけだ。 二人お揃いの赤い宝石身に着けちゃったりして、あやしいと思ってたのよね。 な〜んだそういうコトか」
「ち、違うわよ! 何言ってるの!? お揃いの宝石なんて知らないし、私達はただゲートキーパーの……」
(しまった!)
ミーチェの誤解を解こうと必死になるあまり、ディドは一番触れるべきではない言葉を口走ってしまっていた。
「ゲートキーパー?」
慌てて口を塞いでも、既に遅かった。
「何でもない。 呼びに来たんでしょ? じゃあ、早く行きましょ」
話を強引に終わらせようと外へ促すが、ミーチェは話題を変えなかった。
「あなたたち、もしかしてゲートキーパーを探して旅をしているの?」
「違うわ」
ディドは即答した。
ここで押し黙るとかえって疑われる、そう判断したからだ。
一方では引き下がらないだろうと覚悟も決めていた。
しかし、腹をくくったディドに反して意外にもミーチェの疑いは直ぐに晴れた。
「それはそうよね、ゲートキーパーなんて存在しないもの」
「え?」
「何よ、まさか居ると思ってるわけ?」
「……ううん、居ないんじゃないかな」
「じゃないか…… じゃなくて、間違いなく居ないのよ! だって、あれは他国から伝わってきた民話みたいなものでしょ? ノヴィアに存在したなんて聞いたこともないし、大体人を幸せにする力があるとか楽園に導いちゃうなんて、もう人じゃなくて神の領域じゃない」
人差し指をピンっと立てて自分の意見を主張するミーチェ。
なにはともあれ、ゲートキーパーだと明かしても笑い飛ばしてくれそうな彼女に、ディドはひとまず安堵するのだった。
ところが……
「でも変ね。 探してもいないのに何でゲートキーパーだなんて言ったの?」
「……それは、その……」
「俺たち、本当はゲートキーパーを探しているんだ」
「アシュレー!?」
返事に困っているディドの横で、それまで黙っていたアシュレーはさらりと言ってのけた。
まるで当たり前のことであるかのように。