(36)
宿を探して二人はしばらく歩いた。
すっぽりと被ったフードの下から露店をのぞき見ては見慣れない品々につい目が留まってしまう。
トン……ッ
突然アシュレーの腕が肩に触れた。
彼が距離をつめてきたのだ。
肩が触れるその距離に警戒心が一気に湧き上がる。
(近い)
無言で彼を離そうと手を伸ばしたが、逆にその手を捕まれてしまった。
「放して……!」
「しっ! 黙って!」
アシュレーの表情は何か異変を物語っている。
「どうも、誰かにつけられているみたいなんだ」
「……まさか、王都からの?」
全身に緊張が走る。 ディドは手が震えるのを必死でこらえた。
(お願い止まって! こんなことで弱みなんて見せたくない!!)
歯を食いしばって毅然と振舞っていると、隣でアシュレーは小さく首を振った。
「解らない。 勘違いかもしれないし。 とりあえずしばらくは気付いてない振りをして歩き続けてくれ」
「……わかったわ」
「大丈夫、心配いらないさ。 約束したろ? 村まで無事送り届けるって」
アシュレーはディドの頭をポンポンっと叩く。
不安を見透かされた気恥ずかしさを誤魔化すため、手を跳ね除けキッと睨み返した。
この時すでに手の震えが治まっていたことに彼女はまだ気づいていなかった。