表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GATE KEEPER  作者: ちゃすけ丸
第2章
36/76

(34)

「……さっき、あなたの声が聞こえたの。

あなたも私をお城に連れて行くつもりなんでしょう? 私は絶対に行かないわ!!」



(しまった……)



 アシュレーは頭を掻きながら彼女に向けて笑顔を見せる。



「あれは、嘘。 君を助け出すための嘘。 こうでもしなきゃ君を助けられなくて。

 急にいなくなるから心配したんだぞ」



「だまされないわ!!」



「だましてないさ! ……俺、お触れを読んで本当に焦ったんだ。 君が危険な目に合う、君を助けなきゃって」



「……どうして?」



「え?」



「あなた、お触れを読んだんでしょ? 私は追われてるのよ!? どうして私を差し出さないの?」



「……何となく、君が間違ってるようには思えないから……」




 思わず呟いてしまってから少女をちらりと見ると、拍子抜けしたように目を丸くして固まっていた。



 なんだか急に恥ずかしくなり、その後早口でまくしたてた言葉はよく覚えていない。




「だ、だから! 俺は自分が思ったように行動する! お触れなんか関係ないさ」



「お城のお触れを無視するなんて、あなた正気なの?」



 彼女の発言に思わずアシュレーは吹き出す。



「ああ、ダチにも同じこと言われた。 バカだとか良く言われるんだけどさ。

……そういうのって俺、よく解んないだよな」



 ほんの一瞬少女が浮かべた笑顔に思わず見入っていると、外から人の声が聞こえ始めた。



 表情は一瞬で引き締まる。




「冗談はこれぐらいにしておかないと。 このままだと二人揃ってお城行きだ」



 アシュレーはもう一度少女に手を差し出した。



「とりあえず、今は俺を信じてついてきてくれないか? 君は言ったよね。 ここではない何処か遠くに行きたいと。 それならまず、俺の故郷に行こう」



「……故郷?」



「ああ。 見ての通り俺も黒髪。 俺の村で黒髪は珍しくないから、ここよりは絶対に目立たない」



「……でも」



「大丈夫、何も心配はいらない。 俺が村まで安全に送り届けると約束する。 途中で嫌になったなら、別のところに向かえばいい。 だから……」



 伏目がちな彼女にアシュレーは微笑みかけた。



「一緒に行こう、ディド!」




 その屈託のない笑顔に、しばらく躊躇っていた彼女は静かに頷いた。



「ありがとう! 俺はアシュレー。 アシュレー・アバディーン」



「私は……」



 少女は名乗ろうとして、ふと彼を見上げた。



「何故私の名前を知っているの?」



「ああ、お触れに書いてあったから。 ……これで君がディドじゃなかったらと、今考えるとぞっとするな」



 まじめに話すアシュレーに対しディドは再び笑みを浮かべる。



「何も考えずに行動したの?」



「必死だったからな」



 アシュレーは彼女の手を取ると、馬車から勢いよく飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ