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GATE KEEPER  作者: ちゃすけ丸
第2章
31/76

(29)

「おや、おぬし。 たしかアシュレーじゃったかの? こんなところで逢うとは珍しいのう」



 頭を抱えていると、後ろから声がかかった。

 振り返ると、白髪の老人がアシュレーに笑いかけている。

 一月ほど前に腰を痛めて動けなかったところを助けた人だ。



「……爺ちゃん! もう腰は良いのか?」



「アシュレーの持ってきてくれたお灸のお陰で、ほれ、このとおりじゃよ」




 腰を伸ばして元気な様子をアピールする老人にアシュレーは笑顔を見せた。




「それはよかった。 もう無茶しないでくれよ。 いい歳して重い荷物を運ぶのは良くないぜ?」



「わかっとる、もう無茶はせんよ。 ところでお主がこんなところに居るとは珍しいのぅ? 王宮は好かんのじゃなかったかの?」



「そうなんだけど、まぁ、いろいろあって…… そうだ! 爺ちゃん、この貼り紙の内容読めるか? なんか難しいこと書いてあって俺にはわかんないんだよ」



「無論、読めるに決まっておろう。 まったく、最近の若い者は昔の言葉を大切にせんから困ったもんじゃ…… どれ、解り易いように解釈を加えた上で読んでやろうかの」



「助かるよ」



 彼は咳払いを一つしてから、読み上げ始めた。



「なになに?



 黒髪の少女ディド・アーサーを王宮に連れてきた者には褒美を与え、三年間全ての税を免除する。 ただし、その者を傷つけてはならない。



 その者は我々を幸福へと導くゲートキーパーである。



 このお触れは、魔術師サリュエル・ニーズの立案に対し、カール・メルギス、シモン・クヴァル、シェスター・ランフォード、以上3名の大臣が責任を負い、王女ジェノウィーズ・ハーツ・ノヴィアが承認するものとする。


 とまあ、こんな感じかの。 理解できたかね?」




 老人の言葉を聞いた瞬間、アシュレーは顔を強張らせた。

 体に緊張が走る。




「どうしたんじゃ、急に怖い顔をして」



「なあ、爺ちゃん。 このお触れってココにしかないのかな?」



「まさか、これは詔書の原紙。 街中に配られた複写が正当なものであることの証じゃぞ。 今頃は街中に貼られておるわ」



「でも、こんな難しい言葉だと簡単には読めない人も多いよね?」



「詔書は古代語で書かれるのが決まりだから仕方ないことじゃな。 まぁ、こういうお触れってのは配る時に口頭で伝わることがほとんど。 この紙はあくまでも形式だけと言えるじゃろうなぁ」




「じゃあ、やっぱこの事は皆知ってるんだ?」



「もちろん、今日の街はこの話題で持ちきりじゃよ」



「そうか…… ありがとう、爺ちゃん!」




 アシュレーは踵を返すと、宿に向かって駆け出した。

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