(27)
「解っている。 正直なところ今回は本能的にもマズいと思ったさ。 ずらかろうとも考えた。 ……でも、俺の中の何かがそれを押し留めるんだ」
本能とは違う何か。
まるでもう一人の自分がいるような?
アシュレー自身にもそれが何なのかはわからない。
「お前お得意の本能以外に何があるんだ。 テキトーな勘か?」
「勘とも違う。 良くわからないんだ、うまくいえない。 でも…… 何故か感じるんだ、彼女をこのまま見捨てるのは間違っているって」
ジェイドは静かに首を振った。
「アシュレー、それは気のせいだ。 本能や勘に勝るものなんて人間は持ち合わせていない。 特にお前はな。 もう深夜だしお前も疲れてるんだ。 ここは俺が見てるからあっちの部屋で休め」
「いや、俺が見てるよ」
「安心しろって、たしかに俺は王宮のお抱え兵になったけど、それ以前にお前のダチだ。 ダチを裏切るようなことするもんかよ」
「そういう意味じゃない。 ここを見張るって約束したんだよ。 彼女が部屋を出たとき、俺がいなかったら嘘ついたことになるだろ?」
真剣な表情を見せるアシュレーにジェイドは小さく息を吐いた。
「無茶苦茶なこと言いやがって。 体壊してもしらねぇぞ」
「大丈夫、俺はバカだから風邪引かない。 お前がいつも言っていることだろ?」
「……そういえば、そうだったな」
ジェイドは軽く笑うと静かに立ち上がった。
「なら、俺は休ませてもらう。 明日からまたみっちり仕事だからな」
「あぁ、悪かったな。 せっかく会えたってのにゆっくり話もできなくて」
「いいさ」
立ち上がると扉の前で再び立ち止まる。
「アシュレー…… 頼むから、捕まったりするなよ」
「解ってるよ」
「じゃあ、お先に」
ジェイドが斜向かいの部屋に入るのを確認すると、アシュレーは剣の鞘を握りしめ静かに目を閉じた。