(19)
ジェイドは酒杯を持ち上げるとアシュレーに同じ動作を促した。
「とりあえず、久しぶりの再会に乾杯だ」
「そうだな。 それとジェイドの兵士採用祝いに!」
カツン!
杯がぶつかる小気味の良い音が響き二人は同時に酒を口に運ぶ。
一気に飲み干そうと意気込むアシュレーだったが、窓の外、路地から垣間見える大通りを何かが横切るのが見えた。
人が通り過ぎただけかもしれない。
だが、何かが気になった。
彼は酒杯をテーブルに置くと立ち上がって剣を腰に携えた。
「おい、アシュレー? どうかしたのか?」
「ちょっと行って来る」
「は? これからって時に何処行くんだよ?」
「ちょっと、そこまで」
「ちょっ……! おい、アシュレー! ちょっと待てよ! お前が行くなら俺も行くって!!」
アシュレーはジェイドが呼び止めるのも聞かず店を飛び出すと、全速力で駆け出した。
細い路地を抜け大通り付近まで辿り着くと人の喧騒が聞こえてきた。
(なんだ? 喧嘩か……?)
用心しながら騒ぎの方へ近づき、じっと目を凝らす。
と、そこでは小さな少女が大勢の兵士に追われているではないか。
その瞬間アシュレーの次の行動は決まった。
追っているのが誰であれ、こうなったら彼には関係ない。
(ここじゃ無理だな)
周囲を見渡し、曲がり角と彼女を匿えそうな適度な幅のある路地を探す。
(あそこなら、いけそうだ)
目的の路地を見つけると、雑踏に紛れて素早くそこへ移動した。