(18)
「おまちどうさま」
しばらくすると、店員が頼んだ酒を運んできた。
アシュレーの手前に、酒杯と皿に山盛りにされたナッツが並べられる。
「あれ?俺、酒以外頼んでないけど」
「これは、先日のお礼よ」
訝しむ表情で顔を上げてみると、大きな瞳が愛らしい給仕の女性がこちらを見て微笑んでいる。
眉間にしわを寄せるアシュレーに向かって彼女はくすっと笑った。
「ほら。 この前、路地裏で男たちに絡まれてたところを助けてくれたでしょう?」
そう言われて何かを思い出したのか、ぽんと手を叩く。
「あぁ、あの時の!」
「思い出してくれた? これはその時のお礼だから、お金は要らないわ」
「え…… 大したことしてないのに、何か悪いな」
「気にしないで。 あの時の男たちホントしつこくて、迷惑していたの」
「じゃぁ、遠慮なく」
「ええ、どうぞ。 ゆっくりしていってね」
にっこり笑うと、女性は奥に戻って行った。
彼女がお辞儀をして席を離れると、じっとやりとりを見ていたジェイドが顔を寄せてきた。
「おい、アシュレー! 超可愛い子じゃないか! おまえ、仕事してたとか言って、まさか女の子追いかけていたんじゃないだろうな?」
「あのね、俺の話聞いてた? 俺は女の子じゃなくて、真面目に迷子の子猫を追いかけてたって言っただろ」
「なんだよ、子猫って。 そんな話聞いてねぇぞ!」
「あれ? そうだっけ?? とにかく、たまたま猫を追いかけて入った路地裏に彼女と男が三人いただけだ」
「それで?」
「それで、彼女が助けてって叫ぶもんだから、つい反射的に男を伸しちゃった」
笑いながら頭を掻くアシュレーにジェイドはため息をついた。
「……お前の性格にはホント感心するよ」