(17)
「よぉ兄ちゃん!また頼まれてくんね〜か?」
林檎をかじりながら目的地に向けて歩いていると、今度は良く日に焼けた逞しい体つきの男性に声をかけられた。
「悪ぃ、大将。 これから人に会うんだ」
「何だ、予定ありか。 仕方ねぇな」
「また今度手伝うよ」
「ああ、よろしく頼むぜ」
お互いに手を挙げて軽く挨拶を済ませると、青年は大通りを曲がり路地へと足を向ける。
そして、目的の酒場へとたどり着いた。
一本中に入った通りに店を構えるこの酒場では、客たちが酒杯を片手に談笑して盛り上がっていた。
青年は、店に入り辺りを見渡す。
すると、少し離れた場所から聞き慣れた声が飛んできた。
「アシュレー! こっちだ、こっち! 悪ぃな、色々待たせちまって!」
アシュレーと呼ばれた青年が振り返ると、そこには銀色で短髪の青年が窓際のテーブル席に座り、手を振っていた。
彼を見つけて、アシュレーはほっと一息つく。
一年ぶりに見る幼なじみの顔は変わらず元気そうだ。
「一月も待ったぞ、ジェイド」
「う゛……」
「おかげで、路銀は底尽きるわ食い物に困るわで大変だったんだからな」
「……いや、だから悪かったって。 仕方ないだろ、こっちも仕事があんだよ。 王都の兵になって半年って言っても、まだ新米だから融通きかねーし……」
「冗談だ。 そんなこと、わかってるよ。 とりあえず適当に働いて食いつないでたから問題ないさ」
アシュレーは帯びていた剣をテーブルの淵に立てかけ、彼の向かいの席に座ると近くの店員にぶどう酒を頼んだ。
「あ、これ。 さっきおばちゃんから貰ったんだけど、お前も食うか?」
「……殆ど芯しか残っていないのな」
「美味いぞ?」
「要らね〜よ」
「あ、そう? 美味いのに……」