17/76
(15)
静寂の中、我に返ったディドは目の前に広がる光景に言葉を失い体を震わせていた。
目の前でぴくりとも動かず血の海に横たわる兵士たち。
少し離れた場所にいた大臣たちもひどく傷つき、体中から血を流している。
あちらこちらから響く呻き声が口々にディドを罵っていた。
「わ……たし……」
訳がわからないまま後ずさりすると、入り口の扉にぶつかった。
崩れかかった扉が軋む音を立てながらゆっくりと開く。
外からは近づいて来る多くの足音が聞こえた。
少女を捕らえろと叫ぶ声。
(違う、私じゃない!!!)
ディドは部屋から出ると、王宮の外を目指して必死に駆け出した。
第1章・完