(12)
『見せては駄目!!!』
その瞬間、彼女の頭の中に声が響いた。
誰だか解らなかったが、ディドは本能的にそれが正しいと感じた。
次の瞬間、王女に背を向け扉に向かって走り出していた。
「なっ……!? 王女の願いに背くばかりか黙って背を向けるとは、何と言う無礼者! 子供とて許さぬぞ。 衛兵、彼女を捕まえろ!!!!」
突然の出来事に戸惑った大臣だったが我に返ると指示を飛ばす。
間髪入れずに扉の前にいた兵士が両手を広げ、駆けてくる彼女の前に立ちはだかった。
「退いて!」
ディドが叫ぶと、彼らは見えない力に吹き飛ばされる。
兵士は扉に激突すると短く呻き声を上げ、その場に崩れ落ちた。
辺りは騒然となった。
謁見の間では無断で魔法を使用することが禁止されている。
たとえ子供といえど大罪だ。
周りの兵士たちは表情を強張らせ、罪人を取り押さえようと一斉に動き出した。
「来ないで!」
ディドも抗うつもりなのか更に魔力を高めている。
(目覚めたか……?)
騒ぎの中、サリュエルは冷静にディドを監視していた。
「王女、ここは危険です。 奥へ隠れていて下さい」
そう言うと近くの魔術師に王女を托す。
「サリュエル、あなたは?」
「ディドを止めて参ります。 ……大丈夫です、心配いりません」
「でも……」
彼は不安そうに自分を見つめる王女に向かって頷くと、ディドに向かって駆け出した。