(9)
「君が来ると解っていたら許可を取っておいたのだが…」
「そんな気にしないで下さい! 私はサリュエル様にお会いできただけで幸せです!!
それに加えてこんな素敵なテラスで食事まで一緒にできたのですから…… いろんな意味でお腹いっぱいです!!!」
「そう言ってもらえると気が楽になるよ、ありがとう」
「そんな、大したことじゃないですから!!!」
「この埋め合わせは次回必ずしよう。 また来月ディドと二人で王宮へおいで。今度は珍しい場所に案内しよう」
「ま、また来て良いんですか!?」
「もちろんさ。 それにもし困ったことがあったらいつでもおいで。 微力ながら力になるよ」
「あ、ありがとうございます!!」
曇りかけていたフォルナの表情は一瞬で晴れる。
来月また会う約束をできただけでなく、いつでも会って相談に乗ってくれると言う。
この上ない幸せにフォルナの気持ちは宙を舞っていた。
しばらく妄想を楽しんだ後、フォルナはカップに注がれていたお茶を飲み干して勢いよく席を立った。
「それじゃ先に帰るね」
「ごめんね、フォルナ」
決まりが悪そうにディドが小さく声をかけると彼女は笑顔で答えた。
「気にしなくていいって。 サリュエル様にまた会える約束をしていただけたから、むしろ王女様に会えなくてラッキーって思ってるんだから」
「フォルナってばこんな時でも前向きなのね」
「私はいつでも前向きなのよ」
「楽天家って羨ましいな」
「何それ! ディドちゃんさり気なくバカにしてない?」
「そんなことないわよ」
「そ〜お?」
「ディド」
フォルナと笑いあっているとサリュエルにポンっと肩をたたかれる。
そろそろ約束の時間だ。
「それじゃ、また明日学校で」
「うん、また明日!
……あ、ディドちゃん、くれぐれも王女様に失礼なこと言っちゃダメよ?」
「私はフォルナじゃないわ!」
「……やっぱりバカにしているでしょ」
二人は笑いを堪えながら手を振ってお互いを見送った。