お土産
…無線が切れてからおよそ30分が経過した
一隻にこんなに時間が食われてるのか…?本当に?今さっきはすごいスピードで沈めてたけど…いや、戦ってる場所が遠いのもあるとは思うが未だ望遠鏡で水平線の彼方を覗いても誰一人戻ってくる気配がない
「…いや、いいか。この空き時間を使ってお土産でも買いに行こう」
お土産って言ったって、この島にお土産になるような物もないんだけど…
あっ、そういえば日本にまだいた時に買ったカステラとか羊羹を持ってきていたはず。
うーん、こんな物で喜んでくれるだろうか…?
…そうだ。この綺麗な海がどこまでも見渡せる絶景ポイントを探しに行くのなんてどうだろうか?
よし、もうさらに決まりだ。逆にそれ以外がねえ!
「では私提督、山の方へ出撃いたします」
未だ何も聞こえない無線機を持ちながら、俺は山の中へと入って行く―――
「ふぅ、やっと倒せたね」
「なかなか手強かったのです…」
「そうだね。でもまぁ、敵に勝ってこうして帰投し始める事ができたんだから良いじゃないか」
さて、私は提督に無線を飛ばさないとだね…
…あれ?
……あれれ?
「…みんな、ここって無線が届かないぐらい遠かったりする?」
「うーん、僕は届くと思うけど…」
「私もなのです」
そうなのかな。そしたら何で無線が飛ばな…
「…あぁぁあ!!無線機壊れてるじゃん!!」
これは…やってしまったね。確かに想定以上の数の敵艦が迫ってきてて被弾箇所を細かく見ている暇がなかったのはあるけど…
「提督、心配してないといいですね…」
「いやぁ、うちの提督はかなり心配性だからなー。多分心配してくれてるよ」
「そうだね。もうこれ以上心配させないためにもいち早く帰投しないとだね」
そうして私たちは鎮守府へ帰る足を速くした―――
「うーん、やっぱりこの山は完全に開拓がされて無い、本物の自然だな。今のご時世、こんなに完璧な自然がある方が珍しいんじゃないか…?」
海と山に囲まれた鎮守府か…なかなか防衛力は高そうだな
「にしても山の上がりが厳しい…腰が痛え…」
自然豊かな山ならではの曲がりくねった木が自分の手すり的な役割になってはいる。なってはいるが
「何だよこれ想像以上に山広すぎんだろ」
頂上まであと20分はかかるか。20分かあ…暑い
暑すぎて野垂れ死ぬのが先か頂上から彼女たちを探せるようになるのが先か…
「…今更だけど、こんな疲れまくって行くような場所をお勧めはできないな…」
彼女達は喜んでくれるだろうか
彼女達が戦ってくれる分のお返しを出来るだろうか…?
もう日が沈んだからか、周りがよく見えない
こういう時のライトだってのに工廠に置いてきてしまったよ
「夜は怖いなぁ…川内だったらはしゃぎまくるのかな?」
自分は…彼女のようには振る舞えないなぁ…
だって、目の前すら見えないこの闇の中に希望を求める事は、あまりにも難しいように感じるから
「…よ、いしょっと…うぉぉ、綺麗だなぁ…いや、母校の電気を最低限しかつけてこないでよかったよ」
空には綺麗な星が何千何万と散りばめられていて、その下に輝く海がまるで鏡のようだ
「うーん…見えないなぁ、確かにここは絶景なんだけど、肝心の電達が見えない…」
うーん、あと30分ぐらいここから様子を見るか…
「提督ー!鎮守府に帰投したよー!」
「…?提督が居ないのです」
「提督、もう寝ちゃったんじゃないのかな…」
僕らが帰ってきた時には、既に提督は出撃前にいた場所からいなくなっていた
…そうだよね。いくら提督でもずっと僕たちを待ち続けるなんて……
「…時雨、そんなに暗い顔をするなよなー。提督はきっと次の作戦に備えるために早めに寝てるんだよ」
「でも、昨日は私たちが帰ってくるまでずっとここで待っててくれましたよ…?」
もしかして、僕たちがいない間に深海棲艦に襲撃をされた…!?
…いや、もし仮にそうだとしたら設備への損傷がないことはおかしいから無い…のかな
「…提督を探しに行かないかい?」
「えー?提督は海上に出れるわけじゃないからそこまで神経質になる必要はないと思うけどなー」
「私も、心配なのです」
うーん、でも言われた通り、提督に海上を渡る術は今はないし、かと言って襲撃されたわけでもないのであれば、探す必要もないのかな?
「ダメだ!海上にいつまで経っても黒い点の一粒すら現れやしない…あれか?俺が母港の光を最小限にしたせいで迷ったとかか!?だとしたらマズい…今すぐ降りないと…」
かれこれ30分ほど海上を見続けているが、未だ姿は見えないまま…
「…そうだな。灯台があるはずだから灯をつけに行こう」
そうして俺は彼女達が迷っている可能性を考え、灯台に明かりをつけるために山を降り始めた




