初めての入渠
「ところでさ、時雨はどこから来たんだ?そして電ちゃんは分かるけど、時雨は何で傷付いて…?」
「それが、僕にもわからないんだ。何も思い出せないと言うか…」
「そうなのです。戦闘が終わった時に気付けば近くで倒れていたのです!」
なるほど分からん。まぁ、何処の馬の骨かも分からないブラック提督から捨て艦として扱われていなくて良かった。
「そうか、それなら良い。さて、お前ら…入渠して来るんだ。今すぐに」
「え?でも僕はもちろん、電も擦り傷程度だけど…」
「どこが擦り傷程度なんだ!?思いっきり服とか破けて怪我してるじゃないか!!」
「そういうものなのです!」
「そういうものじゃねーだろ!」
まだこの鎮守府には明石がいないから俺が入渠の整備とかしないといけないのかあ…まあそんなもんか
「提督、私は大丈夫だよ」
「時雨が一番怪我してるんだから。ほら、俺が風呂溜めといてやるから…」
入渠とか大袈裟に言うけど結局はお風呂。お風呂っていいよねえ…
「いや大丈夫なのです!資材が勿体無いのです!」
「資材なんてどうでも良い!はやく全快して来るんだお願いだから!」
「でも、時間もかかるよ?提督」
「いいから!!」
…何とかゴリ押しで入渠させる気にさせた。させたので急いで風呂溜めないと…
「うぉぉ、なんか割と綺麗…」
風呂場を覗くと、普通に綺麗だし設備も新しいし…
これ本当に十数年も放置されてたのか?ってぐらいには綺麗だ。
というか、広さが風呂じゃねえ。銭湯…
「操作は少しめんどくさいけど…こんなもんか!」
風呂の湯を溜め始めて外に出る
「おーい、風呂まだ溜まんないっぽいからさ、建造してみようぜ」
「「!?!?」」
うぉ!?すごい勢いで食いついて来た
「本当ですか?本当なのですか?」
「建造、か。良いと思うよ」
「え、でもどうやって建造すんの?」
俺別に上司から教えられてる訳でもないんだけど?
「それは私たちに任せてください!何となくで分かります!」
「うん。だから資材を少しばかり持っていくね」
色々勝手に決められて勝手に推し進められたけど…本人達が楽しそうだしいっか
「じゃあ頼んだぞ。とりあえず今回は初回だから、最低限の資材で建造してみようか」
「わかったのです!」
そういうと工廠に篭ってしまった二人
…大丈夫だろうか?
「提督、もうそろそろ来ると思うよ」
えっはやっ
「誰が来てくれたんだろうなぁ〜、あぁよく分からんけど緊張して来た…」
「川内、参上!!」
「ちょっ、痛あああああっ!?」
「夜戦なら任せておいてね!」
うぉぉ、痛え…
腰にダイレクトで飛び蹴りをかましてくるのはやめたまえ…
「よ、よろしく…」
「提督さんが、提督さんが…」
「提督!?川内、提督に飛び蹴りをしちゃダメだからね…?」
「はーい、ねえ提督。提督は夜戦は好きかい?」
「え、夜戦は…電、夜戦に入ったことは…ないよな」
「はい、出撃したのが今日の昼で、帰って来たのが夕方になる前ぐらいなので夜戦はやってないのです」
なるほど、それにしても三人目かぁ…嬉しいなあ
「よっしゃ、三人目をお迎えしたんだし今日は祝杯を挙げよう!まだ着任1日目だけど!!」
「いいね。提督着任のお祝いも一緒にしようよ」
「お、わかってんねー」
「と言うことは今日の夜ってことだね。あぁ、夜が楽しみだよ…!」
「そうだな…あっ。お湯出しっぱだ」
やばい資材が無駄になる…うおお急げ…
そうして俺がお風呂改め銭湯に着いた時には―――
…既にお湯が溢れ始めていた
「あちゃー、やっちゃったね、提督!まあそんな日もあるさ!」
「まぁ、いいか。資材なんて集めればすぐだからな。じゃあ電と時雨は入って来ていいぞ。食事とかはこちらで用意しておくから」
「えー、私も入っちゃダメかな?提督」
「えっでも川内は損傷が…いや、いいよ。二人と風呂を楽しんできてくれ」
「やったね!ありがとう提督」
さて、俺はこの場を早々に撤退して食事を用意しないと…
…食事用意するの俺だけ!?
やばい。俺料理なんて作れたっけ?最後に作ったのいつだ?やばいやばい……昨日か
「できちゃった」
普通に料理出来たんだけど。まぁ、こんなもんでいいか。
さて、そろそろ三人とも上がって来るんじゃないか?
てかそろそろ上がってもらわないと困るんだけど…
冷めちゃうぞ飯が
「提督、上がったよ」
「おぉ、時雨か。電と川内はまだなのか?」
「うん。もう少しだけ遊んでるって」
「そうか。まぁ、時間がないわけじゃないんだ。みんなで囲む飯は冷えていても美味いからな。心ゆくまで楽しめば良い。それと、のぼせないように注意しといてくれ」
「うん。僕が今さっきしたよ」
さすがだな
「ありがとう…時雨、ここは気に入ってくれたかな…?」
「どうして?」
「いや、自分はまだ若い新米提督だから三人に負担をかけたりしてたら嫌だなって思って…と言うか今更だけどさ、俺って提督って呼ばれるのが正しいの?それとも司令官…?」
「うーん…提督でいいんじゃないかな?」
「ならいっか。まぁ別に俺の呼び方なんて各々で決めてもらって構わないんだけどね。俺はそんなに気にするタイプじゃないし…ただし、後で二人にも伝えるけど、上層部の方が偵察に来た時は真面目な雰囲気を出しといてくれ。俺が死ぬ」
「?…うん、わかった」
しばらくすると廊下の方からドタドタと足音が聞こえた
「ただいまー!もうすっかり辺りは夜だね!」
「ただいま戻ったのです!大勢とご飯を食べるのは本当に久しぶりで…泣けてくるのです…」
「…今は俺たちがいるんだ。ささ、食べようか?ほら冷めないうちに、それじゃ、せーのっ」
「「「いただきまーす!!」」」




