自転車を買いに行って、色んな商品を見て、自転車を買うだけの話
長年乗っていた自転車がいよいよダメになってきたので、新しい自転車を買いに行くことにした。
自転車屋にて、私は店員に話しかける。
「すみません、新しい自転車が欲しいのですが」
「予算はどのくらいです?」
「二万円ぐらいですね」
決して潤沢な予算とは言えない。
遠出をするわけではないので、そこまでの性能は求めていない。しかし、出来る限り自分好みの自転車が欲しい。そんな気持ちだった。
「それぐらいのご予算ですと、これになりますね」
見せられたのはいわゆるママチャリ。
これでも不便はないが、安いだけあってデザインが洗練されておらず、どうも好みじゃない。
私が他にありませんかと聞くと――
「では、こちらはどうです?」
オートバイが出てきた。
まさか自転車屋でオートバイが出てくるとは。
「自転車より遥かに速いですよ」
それはそうだが、私は難色を示す。
「バイクは事故が怖いので……」
「なるほど、ではこちらはどうです?」
今度は自動車が出てきた。
ピカピカの新車で、カーナビなどの機能も完備しており、自動車として不足はない。
しかし、私は首を横に振る。
「車は渋滞に巻き込まれるので……」
「そうですか。では、これなんかどうです?」
飛行機が出てきた。
「これならば渋滞に巻き込まれる心配はありませんよ。最大でマッハ2まで出ますので、目的地までひとっ飛びです」
私は腕を組む。
「うーん、操縦が難しそうなので……」
「それでは、こちらはいかがです?」
スペースシャトルが出てきた。
テレビでよく見るスペースシャトルを小型化したような感じだ。
「なんとボタンを押すだけの簡単操作。火星にもほんの数分で着いてしまいます。さらにワープ装置も搭載しており、太陽系外の惑星に一瞬で行くことも可能です」
「うーん……」
確かにすごいけど、別に火星や太陽系の外に用はないからなぁ。
せいぜい自分の家から一駅分ぐらいの範囲をカバーできればそれでいい。
しばらく考えて、私は結論を出す。
「最初の自転車を買います」
「かしこまりました」
こうして私は二万円を払い、新しい自転車を買った。
一度買ってしまうとデザインが好みじゃないことなんてすぐに忘れてしまい、すっかりお気に入りになった。
今日も朝から自転車に乗って、最寄り駅まで出発する。
すると、遠くの方で小さなスペースシャトルが空に発進していくのが見えた。
私はつぶやいた。
「ああ、あの人はきっとあの店でスペースシャトルを買ったんだな」
完
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