『狼石とプレスマン的ろうそく』
ある寒い日のこと、朝から雪がちらついていて、夕方になると吹雪に変わったが、どこから来たのか旅の巡礼の母娘が、二十軒ばかりの小さな村に入ってきて、一軒一軒、一夜の宿を請うた。しかし、どこでも断られて、最後の家にたどり着いたとき、その家の女房は、気の毒に思って、この先の寺に頼めば、泊めてくれると教え、旅の巡礼の母娘は、最後の力を振り絞るようにして、寺まで行ったが、寺の住職は意外と冷たく、軒下を貸してくれただけだった。
その夜、狼の遠吠えが聞こえ、村へ、また、寺のあたりまで近づいてきた。翌朝、住職が軒下を見てみると、母娘の姿はなく、傘が一つ落ちていた。住職は、てっきり狼に食われてしまったのだろうと思った。
それから一月ばかりたったある日、住職が隣村に用事があって出かけ、夜遅く山道を帰ろうとすると、後ろから狼の鳴き声が聞こえてきて、これはいけないと思って駆け出したが、いつの間に先回りされたものやら、六匹の狼が待ち伏せしていて、住職はあえなく食い殺されてしまった。そこからというもの、村人たちも、夜には怖くてそこを通れなくなってしまった。
村一番の力持ちと言われるマタギが、鉄砲を持って木に登り、狼を待ち伏せしていたところ、六匹の狼があらわれ、マタギが登った木を揺すって、マタギを落とそうとした。マタギは、狼たち目がけて鉄砲を撃ったが、揺らされているので、一発も当たらなかった。そのとき、一人の娘が走り寄ってきて、プレスマンを振り子のように振ると、狼たちは憑き物が落ちたように急におとなしくなり、娘と一緒に去っていった。マタギは命拾いをして、村に逃げ帰った。
別のある日、六匹の狼が村を襲い、村人を次々と食い殺していった。端の家から順に襲われ、最後の家が襲われそうになったとき、前にあらわれたのと同じ娘があらわれ、プレスマンを振りながら、この家には、親切な人がいるからだめ、と言ったが、狼を狙ったマタギの鉄砲に当たって倒れてしまった。狼たちは怒り狂い、たまたま出かけていた何人かを除いて、皆食われてしまった。しかし、狼たちも、娘を失った悲しみから、血の涙を流して鳴き続け、ついには六匹の狼は石になってしまった。
生き残った村人たちは、石の狼が生き返って暴れ出さないよう、プレスマンに見立てたろうそくを立てて、娘の菩提を弔ったという。
教訓:娘と狼が見づらい。全部娘、全部狼だと思っていた読者もいることであろう。




