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ウニとハリネズミ

作者: ひなた真水
掲載日:2025/11/21

ペンネームを変更したので、再掲載の短編です

楽しんでいただけたら幸いです

 ある日ある時ある所にひとりぼっちのハリネズミがいました

 仲間もいなくて恋人もいない

 気軽に話しかけられるのは空に浮かぶ雲だけでした



 ある日ある時ある波打ち際にウニがコロンと転がっていました



 満ち潮(どき)にうっかり磯の出っ張りで、居眠りしたのが運の尽き

 波に流され気がついた時には浜辺へ打ち上げられてしまっていたのです


 ウニの足は弱くてとても遅いので、元いた磯まで帰るには全然力が足りません

 このまま降り注ぐ陽の光に焼かれて干からびてしまう運命なのかと

 ほとほと困り果ててしまっていました



 そこへ通りかかったのがひとりぼっちのハリネズミ

 彼は初めてであった自分と似た姿のものに 思わず声をかけました


「やあ こんにちは」

「こんにちは」

「いい天気だね」

「まったくホントにいい天気 うんざりするくらいいい天気」


 えらく刺々しいもの言いと 元気のなさが気になって

 ハリネズミはウニの隣にちょこんと腰を下ろしました。


「溜め息なんかついて、どうしたんだい」

「家に帰れなくて困っているんだ」

「家って遠いのかい」

「とっても遠いよ 僕の弱い足では帰れないくらい」

「いったいキミはどこからやってきたんだい」

「向こうの方に磯が見えるだろう、僕の家はあんなに遠くにあるんだ」

「どんなに遠くかと思ったらすぐそこじゃないか

 僕ならすぐに連れて行ってあげられる」

「僕は家に帰れるのかい」

「簡単にね。その代わりに僕のお願いを聞いて欲しいんだけど」

「僕に出来ることは少ないよ ヒトデやウミウシにも勝てないし」

「そんなにたいしたことじゃないよ 僕とともだちになって欲しいんだ」

「ともだちに? ともだちになってどうするのさ」

「どうもしないよ

 こうやって時々はなしをしてくれればそれだけでいい」

「それくらいならおやすいごようさ

 ただし僕は磯から出られない 迎えに来てくれれば顔を出すよ」


 ハリネズミはウニをあっという間に磯まで抱えて運んでくれました

 別れ際にウニは殻から手を出してハリネズミと握手します

 今日から僕らはともだちだ



 それからハリネズミは引き潮の時間になるとやってきて

 2匹はいろんなことをはなしあいます

 山のこと 森のこと 磯のこと 海のこと

 お互い知らなかったことばかり 楽しい時間はあっという間に過ぎていきました



『ヤマアラシのジレンマ』って知ってるかい?

 寒さに凍えて近づきすぎるとお互いの針がお互いを傷つけ合って

 離れすぎると凍えてしまう

 フロイトっていう偉い学者先生が考えたお話だ



 だけどほんとは違うんだ。

 優しい気持ちの時は針をたたむことができるから

 相手を傷つけたりしないし

 ちゃんと寄り添うことだってできる


 でも僕はウニだから

 優しい気持ちになってもイガイガのままだし

 寄り添うことは相手を必ず傷つける



 今までずっとひとりぼっちだったハリネズミは

 僕に会いに来る ただそれだけのために

 毎日山の中にある自分の家から 海まで磯までやってきてくれる

 そうして針をたたんで僕に寄り添い はなしをしては帰っていく


 山には意地悪な山猫も怖いオオカミだっているはずなのに

 僕に見せたくて持ってきてくれる 木の実を集めて

 いつもいつも楽しそうだ


 持ってきてくれた木の実は どれもとっても綺麗だけど

 僕には絶対食べられないし 磯にも持って帰れない

 僕だってハリネズミが大好きなのに

 何にもできない非力な 僕


 ハリネズミの手足は傷だらけ

 きっと僕に会いに来るため 僕に寄り添うときに

 僕が彼を傷つけているんだ



 ある晴れた日

 ハリネズミが来なくなった



 どうしよう どうしよう どうしよう

 きっと僕が役立たずで なにか彼を怒らせるようなことをしてしまったんだ

 次の日雨の磯の中 一日中ウニは考えた

 はなしを聞いてあやまれば許してもらえるだろうか

 そればっかりを考えた



 そうしてウニは決心しました

 会いに行こう ハリネズミに会いに行こう



 満ち潮の波に乗って浜辺まで行き 頼りない足でのろのろ進みます

 彼の家は何度も聞いた

 この浜の端の崖を登って山に入ってしばらく行ったとことにあるって

 目印の話だってちゃんと覚えてる

 僕の足は頼りないけれど

 今日も雨が降っている 干からびることはないはずだ

 のろのろ のろのろ ウニは進む



 2日間降り続いた雨は明け方になってようやく降り止みました



 あの日 晴れの日 ハリネズミは 初めて仲間に出会ったんです

 とってもかわいいおんなのこ 2匹はすぐに恋に落ちました


 雨が降り止んで引き潮になったら いのいちばんに会わせてあげたくて

 ウニのいる磯に向かって2匹で駆けていきました


 崖を下る途中で季節外れの栗のイガを踏んづけてまた足を怪我してしまった

 きっとウニは心配するだろうけど

 ひとりぼっちじゃなくなった僕を 祝福してくれるに決まってる



 ハリネズミはウニに会えませんでした

 磯のみんなは 昨日の雨で波にさらわれてどこかへ行ってしまった

 そう教えてくれました。

 きっと海のどこかで僕のともだちは元気にしてるだろう

 ひとりぼっちじゃなくなったハリネズミでしたけれど

 やっぱり少しさみしく思いながら 恋人と2匹で海をながめたのでした


 おしまい


ハリネズミが踏んづけた季節はずれのイガ栗は、本当にただのイガ栗だったのでしょうか?

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

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ウニよ…
どうしようもなく切なくかなしい
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