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魔女万事屋の血魔さん  作者: 樱川由纪
第一巻 探偵編
11/17

第八話 人界のリオナ姉妹

1

最近、ゾーラはよくトラブルを起こしに来る。

朝、エラがベッドから起き上がると、血でできた飛びナイフが窓から飛んで来た。彼女は咄嗟に身をかわし、飛びナイフは壁にまっすぐ刺さった。

ダイアナがベッドから起きたときには、二人はもう部屋の中で殴り合いを始めており、部屋中が血まみれになっていた。

あるいは、エラが買い物に出かけたとき、ゾーラは路地に待ち伏せして、彼女が油断した隙に何十本もの暗矢を放ったり……

それとも、エラが入浴しているときに、空から巨大な刃が降ってきたり……

「そろそろついて帰りなよ、愛しの妹よ!」

今日もいつも通り、二人の姉妹の刃が激しくぶつかり合い、鋭い火花を散らす。

ダイアナはあくびをした。今月に入って31回目、万事屋での喧嘩だ。

「私を連れて帰れるものなら、やってみなよ」

「やってやる!お前の両足もぎ取って、二度と逃げ回れなくしてやる!」

二人は啖呵を切り合い、周囲は低温の怒りに包まれたようだ。

万事屋には至る所に修復の跡があり、彼女たちがこんな風に騒ぐたび、お互いの血をそこら中に飛び散らせ、どちらかが力尽きるか、出血多量で倒れるまで続く。

最初のうちはダイアナも止めに入ったものだが、今ではただ静かに観戦するだけだ。

「魔族の連中は普段からこんな挨拶するのか?あまりに暴力的だな」彼女は思わず考えてしまう。

部屋中を刀槍が飛び交い、彼女たちはソファの上で戦ったり、ゾーラが一太刀で今月12回目となる交換のソファを真っ二つに切り裂いた。そして梁に跳び乗ると、今度はエラが天井に大きな穴を開けてしまう。そして二人はその穴から外へ飛び出し、空中で絡み合う。

しばらくすると、空から吸血鬼の少女が一人、落下してきて部屋に大きな穴を開けた。

ダイアナが慎重に穴を覗き込むと、全身真っ赤な少女がいた。

彼女はがウンのローブから小さな手帳を取り出し、書き込んだ。

「30対1、エラの勝ち」そして軽快に手帳を閉じ、空に向かって叫ぶ。

「エラ!騒ぎが終わったら、さっさとサファイアに連絡して、あの吸血鬼を引き取りに来いって言ってよ」

ダイアナが周りを見回すと、そこら中が崩れかけた壁や残骸だらけだった。

「ついでにソファと屋根の修理代はあいつのツケにしといて!」ダイアナが付け加える。

このままではいけない。ダイアナはひそかに考えた。

2

今日、万事屋には特別な依頼が舞い込んだ。

依頼人不明、差出人不明。とにかく手紙が一枚、万事屋のドアの隙間から差し込まれていた。

エラが朝起きると、ダイアナはもういなくて、ペレドメールのクレアのところへ用事で行くというメモを残していた。

エラが床に落ちているドアの隙間からの手紙を拾うと、そこにはこう書いてあった。

魔女万事屋様へ

街に魔法石泥棒が現れ、魔法石店で魔法石を盗んでおります。どうかご助力ください。――本当に困っている魔法石店店主より

追伸:路地裏の『魔女の家』という魔法石店をまず訪ねることをお勧めします。

裏面にはさらに、

追追伸:一人でも二人でも、手が足りないなら助っ人を探してください。本当に時間がありません。

床には地図も落ちていて、魔法協会に魔法石消失届を出した魔法石店が丸で囲まれていた。

「あの蛇女、また何か企んでるんだろうな」エラは不満そうにつぶやいた。

あの『魔女の家』はサファイアが経営する魔法石店だと彼女は覚えている。

彼女が何を考えているにせよ、今日は買い物のついでに寄ってみよう、とエラは考えた。

同じ時刻、ダイアナとサファイアは万事屋の傍らの茂みに潜んでいた。

「ダ、ダイアナ……こ、こんなので……ほ、本当に……だ、大丈夫?」サファイアはたどたどしく尋ねた。

「大丈夫よ、前もって手配済みだから」彼女はサファイアにOKのサインを見せた。

「あ、あんまり……安心できなくて……」サファイアは心の中で途切れ途切れに考えた。

つい先日、ダイアナはこっそりサファイアと会い、吸血鬼姉妹を仲良くさせる計画を立てたのだった。

ダイアナはこの計画を『無敵シスターズ仲良し大作戦』と名付けた。

ひどい名前だ。サファイアはそう思った。

そして二人は魔法協会の現会長ソフィアを見つけ、魔法石窃盗事件の依頼を引き受けた。ただし、ゾーラを促すため、盗まれていないはずの『魔女の家』も、盗まれた痕があるように装わなければならない。

その後、二人はそれぞれ家に帰り、用事でクレアのところへ行くというメモを残し、翌日万事屋で待ち伏せした。

「ダ、ダイアナ……彼女……出、出てきたよ……は、早く……つ、ついて行こう」サファイアがせき立てる。

エラがドアから出てきて、小さなカゴを提げ、軽快に跳ねるように歩いて出かけて行った。

道中、彼女は至る所で人に挨拶し、街中の人々全員と知り合いのように見えた。

「おはようございます、ペラ夫人」

ペラ夫人は今日も入口でセーターを編んでいた。

「おはよう、エラちゃん」

「おはよう、ミルおじさん」

ミルおじさんは豚足を切っていた。

「おはよう、エラちゃん」

「おはよう、シャーロットちゃん」

「おはよう、エラお姉ちゃん」

「おはよう、ブルース」

「ワン!」

ブルースは前足をエラの手の上に載せた。

「エラちゃん……ご、ご近所付き合い……と、とても……いいんだね」エラの後をついて歩くサファイアが感心した。

ダイアナはなぜか少しむっとして、頬を膨らませた。

エラが市場から出てくると、人目につかない路地に入って行った。入る前に、彼女はきょろきょろと見回し、誰にも尾行されていないことを確認すると、安心して中へ歩いて行った。

「よし、サファイア、ここまでにしよう」

ダイアナはサファイアの肩をポンと叩いた。

「ダ、ダイアナ……な、なんで……も、もっと……つ、ついて行かないの?」

サファイアは首をかしげて疑問そうにした。

「どう考えてもバレるでしょ、それに……」

エラの感覚は鋭い。このままついて行けば、いつか必ず現場で捕まってしまう。

「それに、他にもやるべきことがあるんだから」ダイアナはわざと神秘的に言った。

3

ドアを開ける前から、吸血鬼の嫌な臭いがする。

エラは内心そう思い、むっとしてドアを開けた。

案の定、一本の飛びナイフが彼女の顔面を目がけて飛んできた。

彼女は慣れた様子でしゃがみ、慣れた様子で魔法のバリアを展開した。

続いて無数の血の飛びナイフが部屋中から飛び出し、彼女のバリアに刺さった。

彼女はバリアをしまい、何もなかったように中へ歩いて行く。

入るとすぐ、彼女は素早く右に飛びのいた。梁から、全身タイツに身を包んだ全身真っ赤な白髪の吸血鬼が落ちてきた。

彼女は大きな刀を手に持ち、勢いよく地面を刺した。

そして払い斬り、さらに刀からトゲが生え、トゲが四方八方に飛び散る。

その次は魔法攻撃……

エラは内心そう考えた。彼女はゾーラのことを熟知しており、仕方なくため息をついた。

エラは高く跳び上がり、一瞬にして血煙の中に消えた。

「隠れ潜んでないで、出てこい……」ゾーラが言い終わる前に、手刀が彼女の首筋に落ちた。

全身真っ赤な吸血鬼が目を覚ますと、彼女は椅子に縛り付けられていた。

「また負けた……」彼女は天井を見上げた。

これで何回目の負けだろう。

「あまり動かない方がいいわよ、お姉様。こんな目に遭うのも、毎日のように私に挑んでくる姉のせいでしょ」エラは魔法石でいっぱいの棚の上に座り、片足をぶらぶらさせながら、得意げにしっぽを振っていた。

「こうなったら、あの蛇女に協力してあげるわ」彼女はそう言って、口をゆがめた。

ゾーラは彼女が何を言っているのか理解できなかった。

昨夜、店に戻ると、サファイアが何やら慌てふためいているのが見えた。

そしてサファイアは慌てて何かを隠し、自分を手伝ってほしいと頼んできた。

サファイアは店の魔法石が盗まれ、犯人が誰なのか探してほしいと言う。

「忙しいの!」彼女はきっぱり断った。

「ゾ、ゾーラ……お、お願い……今、今だけは」サファイアは彼女の前でもじもじしていた。

彼女は背を向け、できるだけサファイアを見ないようにした。

「ち、ちょっと……だ、だけ……だ、駄目?」サファイアは彼女の両側で焦って哀願した。

ゾーラは黙ったままだった。

「そ、それじゃあ……一つだけ条件を飲んで」彼女はほとんど聞こえないような声でつぶやいた。

「な、な、どんな条件?」見えなかったが、サファイアの長い髪の下の目が輝いているように感じ、口調も普段よりずっと早かった。

「あ、あたしの……頭を……撫でて」ゾーラはそう言いながら、顔が少し熱くなったように感じた。

「は、はい!」サファイアは承知すると、すぐに椅子を取ってきて彼女を座らせた。

サファイアはまずゆっくりと指先で试探し、指がゾーラの頭の角に触れた瞬間、ゾーラは震えた。

「だ、大丈夫……?」

「余計なこと言わないで早くしてよ」ゾーラはせき立てた。

そして、かゆいような感覚があり、続いて温かさが彼女の角を撫で、その温かさが彼女の髪の上を動き始めた。

顔を上げると、サファイアが微笑みかけていた。

「よしよし」サファイアは子供をあやすように言った。

「も、もっと……続ける?」

「もういい!」彼女はサファイアの手を払いのけ、部屋に戻って行った。

「手伝うのは、今回だけよ」彼女はそう言い残した。

そうして翌日、彼女は魔法石店に潜み、泥棒が来るのを待っていた。

残念ながら泥棒は来ず、代わりにエラが来た。まあいい、いつも通り戦うだけさ、彼女はそう考えた。

そうして今の状況になった。彼女は椅子に縛られ、エラが得意げに笑いかけているのを見ている。

「仕方ない、あの魔女の言う通りにしよう。魔法石泥棒を捕まえに行くわ」

「ちっ」ゾーラは舌打ちした。

「お前とは一緒に行動するつもりはない。足を引っ張るだけだ」

「あら、そう?」エラは淡々と挑発に応じた。

「でも、お姉様に選択肢はないわよ。素直に協力してくれたら、サファイアの前で少しは良いように言ってあげてもいいわよ」

「あの小娘は関係ない!」サファイアの名前が出ると、ゾーラは逆上した。

「はいはい、わがままなお姉様」

「ちっ」口喧嘩でも勝てないと知り、ゾーラは一時的に折れるしかなかった。

「じゃあ、どこから始めようかしら」

エラは地図を広げ、じっくり眺めた。

「まずはここね、【マグル互助協会 魔法石店】。ちっ、何て名前なの」エラはぼやきながら、魔法でゾーラの縄を解いた。

ゾーラは体を動かし、嘲るように鼻を鳴らした。

彼女が妹と一緒に行動するのは、ずいぶん久しぶりだった。

4

「ダ、ダイアナ……た、大切な用って……こ、これのこと?」

二人の魔女はすっぽんぽんだった。

「そうよ、前から楽しみにしていたんだから」ダイアナは嬉しそうに言った。

「で、でも……私……初めてだから……優、優しくしてね」サファイアは顔を赤らめて言った。

そして……

そしてタオルがかけられ、ダイアナはサファイアの背中を流していた。

「この温泉のお湯は魔力回復効果があるらしいよ。ちょうど海辺での一件で魔力を結構消耗したし」

ダイアナはそう言ったが、実は言い出しにくい理由がもう一つあった。

最近、エラの吸血がどんどんエスカレートしていて、食事のたびに、彼女は飢えた亡霊のようにしっかりと抱きしめ、ダイアナの感覚が天地が逆さまになるほど吸い取ってしまうのだった。

このままでは干からびた屍にされてしまう、だから必要な時にエラに必要な魔力を提供できなくならないよう、体調を整えなければならないのだ。

「お先に入るね」彼女はそう言って引き戸を開けると、湯気がわっと上がってきた。

「あら、ダイアナさん!」湯船から見覚えのある人影が手を振った。

湯気越しに、それがティチアナだとわかった。

彼女の隣には、キセルを咥えた女性が座っている。

考えるまでもなく、それがソフィアだとわかった。

「こんにちは、ソフィアさんも温泉にいらしたんですか?」

ソフィアは彼女を見ず、煙の輪を吐いただけだった。

「普段から大量の魔力を消耗するので、魔法協会のメンバーはみんなここがお決まりなんだ」

ダイアナは湯船に入り、ソフィアの隣に座った。

後ろから、サファイアがゆっくり入ってきた。

「あなたがサファイアさんですね」ティチアナが挨拶した。

「は、初めまして……」サファイアは湯に身を沈め、頭を半分だけ出した。

「魔法協会ではよくお名前を伺いますよ。あなたのお店の魔法道具はお手頃で実用的だと聞いています」

「あ、ありがとう……ございます」

「わあ、どうしてまだバスタオル巻いてるの?そんな遠慮しないでよ」ティチアナはすぐさまサファイアの隣に泳いで行き、サファイアは顔を反対側に向けた。

「私……自分の……体の……線に……自信がなくて」彼女はもじもじと言った。

「大丈夫、大丈夫、サファイアさんもっと自信持たないと」ティチアナは励ました。

そしてサファイアはゆっくりとバスタオルを解き、一对の巨大なものが皆の視界に入った。

「うわっ」&「うわっ」皆は思わず感嘆の声をあげた。

「じ、じっと……見つめないで……ください」サファイアは素早く湯に沈んだ。

ティチアナは周りを見回し、眼前の三人を見て、それから自分を見下ろした。澄んだ湯の底に自分の太もももすねもありありと見える。

温泉の湯船のそばには六つの大きな石と二つのほとんど見えないほど小さい石が置かれているようだった。

ああ……

彼女は湯気が立ち込める空中を見上げた。

天はなんて不公平なんだ。

マグル互助協会魔法石店内

エラの勘違いかどうかわからないが、どうもこの店はまともな魔法石店には思えなかった。

例えば、入ってすぐに、魔法協会のものでも正統な魔法使いのローブでもない、奇妙なローブを着た三人の少年少女が見えた。

丸メガネをかけ、額に稲妻の跡がある少年、そばかすだらけで炎のような赤髪の少年、そしてふさふさした栗色の髪と賢そうな茶色の大きな目をした少女。

エラは強く自分に联想しないように言い聞かせたが、最近ペレドメールに確かにそんな小説があった。

店内に入ると、様々な奇妙だがあまり実用的ではない魔道具が目に入った。

例えば、しゃべる新聞、自分で動き回る巻尺、乗って飛行できる杖など。

彼女はついに確信した。この店の店主はただの熱心な小説ファンなのだと。

エラがカウンターに近づくと、明らかに誰か立っているのが感じられたが、何も見えなかった。

「出て来い!こっちはお前の手品に付き合ってる暇はないぞ」

エラは礼儀正しく挨拶しようと思ったが、ゾーラはもう我慢の限界だった。

空中から頭がのぞいた。それは30代ほどのおじさんで、透明になれるマントを着ていた。

「へへへ……」おじさんは気まずそうに笑った。

「お二人様、何かお探しでしょうか?例えば……オーダーメイドの魔法の杖とか、あるいは……フリスビーのように飛び回る義歯とか?」

「行くぞ、エラ」ゾーラはイライラして踵を返そうとした。

「え!待って待って」店主は慌てて引き留めた。

「お二人様、あの泥棒の調査にいらしたんですよね」

「ふん」ゾーラは頷き、店主に続けるよう合図した。

「当店はちょっとした魔法の玩具を売っているだけで、まともな魔法石店とは言えませんが」

エラはただその場に立ち、呆れながら彼の話を聞いていた。ゾーラは腕を組み、協力的でなければ酷い目に遭わせると言わんばかりの表情をしていた。

「ですが、当店も最近多くの魔法石を盗まれまして、しかもどれも高価な上等品ばかりで、小店の被害は甚大です」

「魔法石の仕入れ元は?外形に特徴は?」エラは小さな手帳を取り出し、真剣にメモを取った。

ダイアナがわざと試そうとしているなら、必ず発見できる手がかりを残しているはずだ。泥棒を捕まえてダイアナをやり過ごせば、もうあの短気な姉さんと一緒に行動しなくて済む、と彼女は考えた。

「仕入れ元は全て公式のものです。外形は特に特徴はありませんが、どれも精品で、小店の損失は本当に大きいんです」店主は泣き真似をした。

「はい、ご協力ありがとうございます。ここにはこれ以上手がかりはなさそうですね。行きましょう、お姉様」エラは手帳を閉じ、地図を開いた。

次の目的地は――「今日の詠唱失敗なし」

この街にまともな魔法石店はないのか?エラは内心でツッコミを入れた。

5

六つの巨大な山脈と二つの小さな丘陵が、相変わらず水中にそびえ立っていた。

「ダイアナ、ちょうど良かった」ソフィアがダイアナに声をかけた。

「最近、君が【ヘパイストス】と名付けたあの道化師がまた復活したようだ」

不可視の殺人犯事件で、ダイアナとエラはヘパイストス組織の数人を捕まえたが、殺人道具を製造していた黒幕は捕まえられなかった。

「今回は様子が違う。もっと危険な意味を込めて現れた」

ソフィアはキセルを深く吸い、慎重に言葉を続けた。

「爆弾だ、ダイアナ、魔力で作られた爆弾が」

ダイアナは前回ビーチで使った爆発魔法を思い出した。魔法で引き起こされる爆発は非常に殺傷力が高く、軍隊では「魔法使い一人は大砲十門分」と言われる所以だ。

「奇妙なのは、魔法爆弾が使われたと分かっていながら、どう調べても痕跡が見つからないことだ」

「犯行予告を残し、多分本人だろうが、より可能性が高いのは彼の手下の一人だ」

「そして約束通り、予告された場所を爆破する」

ソフィアが湯船の外でキセルの灰を落とす。遠くでは、ティチアナとサファイアがどちらが遠くに水を飛ばせるか競って遊んでいた。

「最も重要なのは、ダイアナ、これを見てほしい」

ソフィアは湯船のそばのカバンから紙切れを取り出し、ダイアナに手渡した。紙には一行の文字が書かれている。

「【ヘパイストス】という名前は気に入った。さあ、私を止めてみろ、名探偵魔女ダイアナ――爆弾魔人パンドラ」

ダイアナは紙片をじっくり眺め、あごに手を当てて考え込んだ。

「何か私に手伝えることは、名探偵魔女ダイアナさん?」

ソフィアはからかうように言うと、ダイアナの肩をポンと叩き、真剣な口調で言った。

「ダイアナ、私はまだ君に借りがある。命の借りがね」

「あら、どういたしまして。それじゃあ、この紙を生産した製紙工場を調べてくれない?」

ダイアナはそう言い、水中から浮かび上がる泡を見つめた。

紙には果実酒の痕跡がある。シードルだ、ブランドはわからない。ダイアナは考えた。

インクの滲み方から、筆記者はペンを使い、非常に湿った環境で書いたようだ。かび臭く、紙には土もついている。地下か?

これ以上の情報は読み取れないが、口調からすると、彼は非常に自信に満ちているようだ。

ダイアナは頭を湯に沈め、ブクブクと泡を吹いた。

「今日の詠唱失敗なし」魔法石店の外

エラが入り口に着くと、鼻を刺すような薬品の臭いがした。

次の瞬間、店内から激しい爆発音が響き、木片とほこりが混ざったものが容赦なく二人の姉妹にかかった。

「ちっ」ゾーラは嫌そうに舌打ちした。

エラがドアを開けるより早く、木製のドアが枠から外れ、地面に落下した。

ほこりの中から、丸メガネをかけたおさげ髪の少女が現れた。顔中ほこりだらけで、割れた試験管を二本手に持っている。

「ゴホゴホ、いらっしゃいませ、ゴホゴホ、ようこそお越しくださいました」

店内は無残と表現するほかなかった。至る所が爆発と薬品の痕跡だらけだった。

「お二人様、ゴホゴホ、何か、ゴホゴホ、ご用で、ゴホ、しょうか?」

少女はさんざんな様子で尋ねた。

「失礼ですが、何をしていたんですか?」

この質問をすると大変なことになるとエラも直感していたが、好奇心を抑えきれなかった。

「ゴホン、魔法実験をしていたんです。ただ、失敗して爆発しちゃって」

答えは明白だった。エラは内心そう思った。

「でも、すごい現象を発見したんですよ!」

少女は割れた試薬の入った管を抱きしめた。

「実験が失敗して爆発するとき、魔力を含んだ試薬の威力は、魔力で作った爆発魔法と同じくらいなんです!」

少女のレンズが輝いている。

エラが現場の魔力を分析すると、そこら中に少女自身の魔力の痕跡があることに気づいた。

「中に何を入れたの?」

「えーと……そうですね」

少女は試験管に向かって首をかしげながら思い出そうとした。

こんなので本当に実験ができるのか? エラは内心で嘆いた。

「爆発虫の死骸から抽出した油と、魔獣の内臓、それに大量の魔法石の破片を入れました」

「えーと……そうそう、それに私の血も」

道理で、とエラは内心で納得した。現場に少女の魔力が充満しているので、魔力分析者から見れば、少女自身が店内で爆発したかのように見えるのだ。

その時、ゾーラが彼女の肩を押した。本題に入るよう促しているようだ。

「咳、魔法協会に魔法石失踪事件を届け出たのはあなたですよね?」

「魔法石失踪?」少女は首をかしげた。

「あああ、確かにそんなことがありましたね」

そして少女はうつむいて指をいじり始めた。

「でも、店の魔法石は全部実験材料として爆発させちゃったから、どれが盗まれたのかわからないんです」

沈黙が流れた。エラは少し頭痛を感じ、頭を押さえた。

「次の場所へ行きましょう、お姉様」

そう言って振り返り、去ろうとした。

「またのお越しをお待ちしてます!」

絶対、絶対に二度と来るもんか。エラは心の中でそう思った。

続いて「神秘的な出所の魔法石店」へ向かったが、店の魔法石はそもそも盗品で、この町のものではないことが判明し、店主はすぐに逮捕された。

「巻物に何を書いたか忘れた」は、物忘れの激しい老爺が店主で、自分が魔法石店を経営していることさえ忘れていた。

「罪深き森の魔法石店」は店内が魔法植物だらけで、ゾーラが入るとすぐに激しくくしゃみを連発し、魔法を乱用して植物を破壊したとして追い出され、多額の賠償金を払わされた。

「残業なし魔法石店」は、午後なのに店内には誰一人おらず、どういうシフトなのかさっぱりわからない、とエラは思った。

気がつくと、もう夕暮れ時になっていた。

彼女たちは相変わらず何も見つけられず、これが最後の店だった。エラが看板を見上げると、看板には「魔法石店」の三文字だけが書かれていた。

「はあ、何か手がかりがあるといいんだけど」エラはため息をついた。

ゾーラは傍らで腕を組み、どこからか取ってきたエノコログサをくわえ、まるで他人事のような態度だった。

エラはドアをノックしたが、中から反応はない。軽く押してみると、ドアに鍵がかかっていないことがわかった。

店内に入ると、エラはすぐに様子がおかしいと感じた。店内では三人の男がトランプをしていて、店主はカウンターで魔道具を拭いていた。

ドアが開くと、四人の男が同時に彼女たちを見たが、すぐに何事もなかったように自分の用事を始めた。

「いらっしゃいませ、お二人様、何かお探しでしょうか?」

店主は片眼鏡をかけた無精ひげの男で、言いながらも手元の魔道具を拭き続けている。

「魔法石失踪事件を届け出たのはこちらの店でしょうか?」

店主は座っている三人の男を見た。三人は一様に首を振った。

「すみません、そんなはずはないのですが、お二人様、間違えられましたか?」

エラは地図を取り出して確認した。

変だ、ダイアナがくれた地図には確かにこの店が載っている。まさか自分が間違えたのか?

「失礼しました」

エラは一礼して振り返り、去ろうとした。ゾーラはまだ入り口に微動だにせず立っている。

通りかかるとき、エラはゾーラにうなずいた。ゾーラの口元がほんの少し緩み、殺意すら感じる刃が彼女の手から飛び出した。

6

魔界に有名な姉妹がいた。

二人は高貴な王家の血筋を持ち、生まれた時から衆目を集めていた。妹は百年に一度の天才で、生まれてから様々な分野で成果を上げ続け、姉は驚異的な魔力耐性を持ち、戦闘スタイルは狂気じみて恐れられていた。

二人の姉妹はとても仲が良く、どこへ行くにもいつも一緒だった。

魔界魔法協会主催の魔法大会に一緒に出場し、難なく良い成績を収めた。

魔獣狩りにも一緒に出かけ、一方が魔獣の習性と進行方向を偵察し、もう一方が素早く仕留めた。

学校でも一緒で、クラスの威張り散らすいじめっ子を叩きのめし、二度と学校に来られなくした。

どこへ行っても、人々はこの姉妹を畏敬の念で見た。その才能だけでなく、その姓のためでもあった。

リオナ。

戦神のような家系、リオナ家は三種族戦争以来、魔界で注目を集めてきた。リオナ家の祖先、アレックス・リオナは、神族と人族の狭間で魔界を救った魔界の英雄だった。

500年来、リオナ家の者はいずれも例外なく様々な分野で奇跡を成し遂げ、科学者、政治家となり、そして魔神の殿へと進んだ――これは儀式であり、魔神の殿に入る資格を持つのはわずか五人、彼らは魔界全体のほぼ最強の力と知恵を集め、その発言力は魔界諸国の統治者さえも凌いだ。

ルシファー・リオナ、魔神の殿第三席、それがリオナ姉妹の父親だった。

リオナ姉妹は厳格な環境で育ち、友人を持つことは許されず、趣味を持つことも許されず、学校以外では特別な場合を除き外出も許されなかった。

二人の姉妹はお互いだけを頼りにし、彼女たちの日常生活は勉強だけであり、そしてお互いに殺し合ったり、自分たちより十数倍も大きい魔獣を狩りに行ったりして戦闘本能を鍛えていた。

彼女たちは生きるために支え合い、言うなれば、お互いの半身だった。

エラ・リオナが魔界最高の学校に合格するまで。ゾーラは数年前、魔法の使用が苦手で不合格になっていた。

エラはより一層厳しく要求され、まるでリオナ家の後継者候補として扱われた。

一方のゾーラは捨てられたように、父親は彼女に構わなくなり、どこへ行き、何をしようと気にしなかった。

そのような自由が彼女に嫉妬を抱かせ、そして彼女はエラの嘘に気づいた:小さい頃から、エラと彼女のいわゆる息の合った連携は、すべてエラの遠慮によるものだということを。

彼女にできないこと、できること、すべてエラには朝飯前で、エラは正真正銘の天才であり、自分は彼女の代用品に過ぎなかった。

エラのそんな作為的な遠慮と隠蔽が彼女をいら立たせ、こうして二人の姉妹は仲違いしてしまった。

ある日、魔界から突然通知があった。高位の血魔が、人界からの高位召喚術の契約に応える必要があるという。この種の最高位の召喚術は魔界全体で百年間見られなかった。

さぞかし偉大な事業に違いない。そう思ってエラは応召した。魔界の高才生として。そして人界で完全に音信不通になった。

彼女は再び父親の寵愛を得た。以前エラに任されていたことが、すべて彼女の責任となった。

彼女はエラがどれほど重い負担を背負っていたかに驚いた。処理しきれない文書、終わりのない試合、大小様々な事件にすべて自ら対応しなければならない。

しかし父親は相変わらず満足せず、彼女に暴力を振るい、そして「エラには及ばない役立たず」という言葉を残した。

その度に、彼女の心は怒りで燃え上がった。だからエラの痕跡を見つけたとき、彼女には一つの考えしかなかった。

エラの首を提げて父親に会い、エラよりも自分が強く、後継者の座にふさわしいと証明してやろう、と。

しかし彼女は成功せず、惨敗した。

あの日、縛られた椅子から目覚め、エラとあの高位召喚の魔法陣を作った魔女が、目の前でじゃれ合っているのを見た。

彼女は魔界との連絡を断ったわけではなかった。父親に直接、エラを見つけたので援軍をよこしてほしいと伝えることだってできた。

しかし彼女は何も言わなかった。こうして二人の姉妹は人界に消えた。

父親はいつか訪ねてくるだろう、彼女たちの居場所はほぼバレている。その時はどうすればいい?彼女は毎晩考えた。しかし翌朝起きて、朝食を作ってくれるあの魔法使いの少女を見ると、すぐにそんな雑念は消えてしまった。

ゾーラ・リオナ、この果断で向こう見ず、短気な吸血鬼の少女は、珍しくもこうしたことで足踏みしていた。

7

血の飛びナイフが空中を飛ぶやいなや、室内の四人の男は即座に散開し戦闘態勢を取った。

彼らは素早く杖を召喚し、無数の魔法攻撃が二人に向かって襲いかかる。

エラは慣れた様子でバリアを展開した。彼女とゾーラは一瞬視線を交わし、ゾーラは上方から突撃し、エラは地上で撹乱を仕掛ける。

室内には突然濃厚な血煙が立ち込め、無数の飛びナイフが煙の中を飛び交った。

四人の魔法使いは再び集まり、背中合わせになって、侵入不能な隊列を組んだ。

「敵は吸血鬼だ、血魔専用の法术を使え」

先頭の男が指示すると、他の者もすぐに法术を唱え始めた。

「甘い!」煙の中から全身真っ赤な吸血鬼が飛び出し、血のような斬撃が彼らのバリアを一瞬で切り裂いた。

そして吸血鬼は再び煙の中に消え、続いて赤い法术の爆撃、赤い錐が彼らに向かって襲来し、エラは反対側で冷静に火力で制圧した。

二人は息ぴったりに、一切言葉を交わすことなく、千軍万馬の勢いを見せ、四人の魔法使いに息つく暇も与えなかった。

「くそ、あれを使うしかない」先頭の魔法使いが言い、十字架に似た魔道具を取り出した。魔道具はきらきらと輝き始めた。

エラはダイアナから聞いたことがあるような気がした。発動後、距離に応じて魔法を抑制する魔道具で、発動には自身の莫大な魔力を消費し、使用者自身も魔道具の影響を受けるという。

「姉さん、下がって!」エラは警告しようとしたが、時既に遅し、ゾーラは空中で突然魔力の加護を失い、男たちは腰から剣を抜き、ゾーラを刺した。

ゾーラは素早く反応したが、太ももを刺されてしまった。

エラがすぐに魔法の制限を解き、コウモリを召喚して戦おうとした時、ゾーラは体勢を整え、親指を下に向けて、「へたれ」というジェスチャーをした。

そして彼女は一人の男の手から剣を蹴り飛ばし、空中で体操選手のようにその剣を奪い取り、ほとんど感知できないほどの閃光が二度飛び、二人の男がもがき苦しみながら倒れた。

そして彼女は倒れた男からもう一振りの剣を蹴り飛ばし、剣はまっすぐエラの方向へ飛んで行った。エラは仕方なさそうに笑って、柄を受け取り、二人は同時に左右から攻撃を仕掛けた。

手際よく剣を振るえば、四つの死体。二人の吸血鬼の少女が血の海の中に立っていた。

「姉さん、怪我したのね。早く座りなよ」エラがそう言った。

「ふん、余計な世話だ」ゾーラはエラの心配を冷たく突き放した。

「あら、そう」エラは冷たく応えたが、それでも治癒法术を使った。

ゾーラは口では悪態をついていたが、素直に地面に座った。

「姉さん」法术をかけながら、エラは顔を上げて、自分より数歳年上で、ずっとからの遊び相手であり、息の合った相棒を見つめた。

「ごめんね」彼女はそう一言言うと、うつむいて、優しくゾーラの傷口を撫でた。

何がごめんなんだ?

ゾーラは考えた。

ずっと騙していたこと?父親からのひいき?自分を置いて人界に消えたこと?

彼女にはわからなかった。エラに腹を立ててはいたが、目の前の妹のどこに謝るべきことがあるのか理解できなかった。

彼女は昔、魔界にいた頃を思い出した。まだ子供だった小さなエラが彼女の後をついて歩き、二人は視線を交わすだけで、完全に背中を預け合い、大人でさえ避ける魔獣を斬り倒した。

そして血の海の中でお互いに微笑みかけ、ゾーラは彼女の頭を撫でながら言った。「あなたは私の自慢の妹よ」

エラは無邪気な笑顔で答えた。「あなたは私の大好きなお姉ちゃん」

一粒の透明な涙がゾーラの目尻からこぼれ落ちた。彼女は急いで拭い、顔を背けた。

片手でエラの頭を押しのけ、もう片方の手で目を覆った。

「許してやる、この一分間だけは」ゾーラは涙をこらえてそう言った。

彼女にはエラの表情は見えなかったが、エラの撫でる手がどんどん優しくなっていくのを感じた。

優しすぎて、目の前の妹を強く抱きしめたくなった。まるで昔のように。

8

「やっぱりあなたの仕業だったのね、ダイアナ」

リオナ姉妹が家に帰ると、ダイアナとサファイアが食事の支度をしていた。

「あら、お二人さんお帰り、お疲れ様」ダイアナはアップルパイの入ったお盆を手に、笑顔で彼女たちに言った。

ダイアナは依頼を受けて数時間でさっさと事件を解決し、それから彼女たちにでたらめな、手がかりすら何もない魔法石店をたくさん回らせたのだ。

実は最後の店が答えで、彼らが他の魔法石店から魔法石を盗み、地下に隠していた。

エラは入った瞬間から違和感を感じていた。おそらくダイアナも同じようにして発見したのだろう。

魔法石店全体からは魔法石が放つ魔力が微塵も感じられず、魔法石はとっくにこっそり運び出されていた。

「それから、これは地下室で見つけたの」エラはダイアナに紙切れを投げた。

ダイアナは紙の内容に目を通し、思案しながらうなずいた。すべてお見通しだったかのように。

「やるじゃない、名探偵魔女ダイアナ。でも魔法石はいただいていきますよ――爆弾魔人パンドラ」

「まあいいや、とにかくみんなで食事にしましょう!」ダイアナは二人の吸血鬼を呼んだ。

ゾーラは「ふん」という一声をあげると、食卓に着いた。

「ゾーラ……と、ともて……頑張ってて、え、偉かったね」台所からサファイアが鍋料理を運び出した。

「まあね」ゾーラはさもないように言った。

「褒めるならエラを褒めてよ。主に彼女のおかげだもの」彼女は早口でそう言うと、顔を背けて、パンを口に放り込んだ。

「お姉さんったら、本当に素直じゃないんだから」エラは笑いながらからかった。

ダイアナとサファイアはリオナ姉妹を見つめ、一秒視線を合わせると、ともにほっとした笑みを浮かべた。

二人の姉妹の間の亀裂が完全に埋められたわけではなかったが、でも――ダイアナはそう考えた。

吸血鬼姉妹仲良し大作戦は、まあまあ成功したと言えるだろうか。

そう思いながら、彼女は手にしたスペアリブを大きく一口かじった。

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