帰り道
【短歌九首】
爪切る音に目覚める朝にも新しく伸びようとする指先
日に焼けた木の葉がひらりと舞い落ちる夕陽に会いたい
夜空には鎖骨の泉にゆれる月影に星影を浮かべて
傷口に入道雲が綿となり鱗となりて秋の空かな
サンダルと日傘に落ちる夕立と交互に響く透き間の雨脚
向こう空夕立雲がもくもくと雨糸を光らせた魚籠
搾ったヒンヤリタオルの柔肌に涼風が沁みゆく動脈から
勘違いされているかもしれない風に言い訳はせず
星を見上げ
帰る家がある道を照らすようなあの笑顔は夕陽だったねきっと