第9話
「ブルワァー!!」
魔物の鳴き声と共に戦闘が激化していく。
「本当にこれが中核部にいる魔物なのかよ!?」
魔物のブレスを避けつつも、余裕の無さがパーティー全体に見えてきている。
複数人のグループを2つ作り、二体のブラッドリザードを相手にしているものの、強さは互角ほどで戦闘の進展がない。
「このまま続けても埒が明かねぇ······」
「イリュース!俺が隙を作るからそのタイミングで前見たようにこめかみを狙った攻撃頼む!」
ブレウスはブラッドリザードの足を切り裂き、敵の注意をブレウスに引きつける。その隙にイリュースは昨日のように能力向上された拳をブラッドリザードのこめかみに叩き込む。
━━━カキーン!!
イリュースの攻撃は見事にこめかみに的中したが、ブラッドリザードは怯む様子がない。
「どうして······!?」
さっきから気になっていたが、昨日戦ったブラッドリザードとは比べ物にならないほどに強くなっているのはなんでだ?
みやは戦闘中にこんなことを考えていると近くにくっつくようにいるエモーラが思考を読んだのか、ふと一言溢した。
······ここも魔素が濃いな〜。こんなに濃いと私、身体を制御出来ないわよ······
魔素が濃いと制御出来なくて暴走してしまうのか······。
━━━そうか!この魔素が原因でブラッドリザードは昨日とは比べ物にならないほどに強くなっていて、凶暴的なのか。
理由は分かったものの、別にこの状況を変えることができるわけではないが······。
「あぁー!!」
ブラッドリザードの攻撃を避けきれず、エルサとジンカムは身体に大きな傷を受ける。
「大丈夫ですか!?」
「あぁ、大丈夫だ······」
二人とも生きてはいるが動けそうに無い。
みやは怪我をしている二人を一度安全なエリアに運ぶためにスキル《迅速》で素早く二人を回収して一時退避する。
「スマンなみや。迷惑を掛けるが少し持ちこたえてくれ······」
ジンカムの回復魔術を使って治すためには、少しの間詠唱時間を稼ぐ必要があるようだ。
「解りました!」
みやは二人が回復するまでの間、注意を向かせないために逆方向へ走り出す。
ブラッドリザードはみやの速度についていくために、完全にみやに集中している。
「ブルワァー!!」
ブラッドリザードは追いかける時でさえ、雄叫びを発している。
「すいませ〜ん!ブレウスさ~んそちらはどうですか~?」
「こっちも苦戦中だ!当分の間そっちで堪えててくれ!」
「もうこちらは限界です~!!」
そんな時だった······。
━━━━━━シュパッ!!
オモチャ刀のような短い刀身はブラッドリザードの硬い鱗を豆腐のように容易く切り裂く。
「今日も人助けはいいでござるな!!」
独り言のようなことを言って清々しそうにしている。
あいつは誰だ。変な奴だがなぜかあんなに強い。
「やぁやぁやぁ!どーも弱者諸君!もうここは安全だ!なぜなら我がここにいるから!!」
この人初対面の相手に失礼なことを平気で言えるタイプか······。
「助けてくれてありがとう!あなたが来てくれていなかったら僕らはどうなっていたか······」
ブレウスは初対面の相手でも気軽に会話をし始める。やはり、尊敬できる先輩冒険者だ。
「我もたまたま迷っていたからお礼は良いのだ!」
覆面の男(?)は機嫌が良いのか笑いながら答えた。
「道に迷っているということはあなたは単独者?」
「そうであるよ!これまで訓練一筋であった我は地図に弱く、不甲斐ないでござる」
「もし良ければ僕らと行きませんか?」
「良いのでござるのか!?」
「俺の名前はブレウス!あなたの名前は?」
「我の名前は影継でござる」
「これからよろしくな!」
「はいでござる!」
ブレウスと影継が会話し終えると丁度良いタイミングでエルサとジンカムが戻ってきた。
「リーダーそいつは誰なんだ?」
「俺たちを助けてくれた影継さんだ。これから共に戦うことになったから了解しといてくれ」
「解った!」
エルサたちが合流するとエモーラが思い出したかのように喋り始める。
······イリュースさんってどこにいるの?······
━━━イリュースさん···確かにどこにいるんだろ······。
どこか遠くから叫び声のような声が聞こえてくる。
「ブレウス-ダレカ-タスケテ-」
「誰か呼んだか?」
ブレウスは何かに気づいたのか、辺りを見回す。すると、遠くでブラッドリザードと戦闘しているイリュースがいた。
「忘れてたー!?イリュースに任せたままだったー!!」
ブレウス達は急いでイリュースが戦っているブラッドリザードを倒しに急ぐのであった。
「アァーー!!」