第3話
エモーラは自信満々に道を案内しようとみやの前を浮遊して前進する。みやはエモーラをついていくように歩いていると、突然エモーラが立ち止まり右へ曲がる。
━━━あれ…北に進むと着くんじゃなかったっけ…?
みやはエモーラを見て不思議に思いつつもついていく。
また、エモーラは立ち止まり右へ曲がる。
━━━え?また右に曲がった…。さっきいた場所に戻るのでは?まさか······。
「迷ってたりしませんよね···?」
エモーラは図星を突かれたような顔をしている。
━━━これはあれだ…。自信満々と流暢に話していたら、道に迷って行き方を忘れてしまったやつだ…。
······いつまでこの時間が続くんだ…。俺が何か言うまでこの嫌な雰囲気は続くんじゃないだろうな…?
「とりあえず北に進みませんか?」
エモーラはみやの言葉にうなずいて前へ進む。
「おーい、エモーラさ〜ん!そちらは逆方向ですよ~」
エモーラは顔を赤らめて必死に恥ずかしさを隠すために北へと向かう。
······やっと着いた。
エモーラが話していた通り荒れた大地に小さな小城がぽつんと建っている。中に入るともぬけの殻だった。
「多分ここのことだと思ったんですが、違いましたかね?」
エモーラは小城の中がもぬけの殻の様子を見て間違っていたのではと考えて焦っているようだ。
突然、小城の天井から神様のような人影が現れる。みやはもちろんのことエモーラも驚いていた。この現象はエモーラにも見えているようだ。
「何ですかこの眩しい光は〜!あぁ~!!」
エモーラは神様の背後にある後光の輝きに自分の生命力を吸われていく。
「エモーラさん!神様の輝きの届かない場所へ~!」
危機一髪のところで近くにあった長椅子の裏に隠れる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です!」
神様に聞こえない程度の声で話す。少し時間が経つと神様が話し出した。
「ここまでよく来たわ鈴木みや!私は知性の神アルマ、君をここに転移させたのは私よ!」
知性の神アルマ様は百年に一度日本人から1人を選出し、転移させているらしい。世界の平穏には必要なことらしいが、詳しいことは教えてくれなかった。
「みや!君にはスキルを授けていなかったね…。ここで授けて上げましょう!」
アルマ様がそう言うととある能力をみやに授ける。
「何の能力を与えてくれたのですか?」
みやはアルマ様に問うとアルマ様は微笑をしながら答える。
「君に授けた能力は迅速…。つまり、ちょっと繊細になるということだわ!」
アルマ様は誇らしげにスキルを語っていく。聞くにつれてみやの表情は呆けていき、最終的に神様に期待したのがバカらしく思えてしまう。
「他にも凄いスキルが備わっているとか?」
淡い希望を祈るみやはアルマ様に問いかけた。アルマ様は満足気に佇むだけだった。
━━━これまでの人生…不自由ない普通の人生だったが、俺の運命がそういうものなのか···?
少し繊細になるだけのスキルだけを手に入れたみやは膝から崩れ落ちて自分の人生に絶望を感じる。
「大丈夫ですよ、みやさん!スキルを持っているだけで珍しいんですから!!」
「······スキルがどんなに珍しくても、迅速なんて言う役に立たないスキルじゃ意味ないよ…」
エモーラは落ち込むみやを元気にしようと試みるがあっさりとかわされた。
「そこに誰かいるのですか?」
アルマ様がみやに問いかける。
「···いえ!?だ…誰もいませんよ······?」
みやはエモーラの存在を必死になって隠す。その成果か、アルマ様にはこれ以上追求されることはなかった。
「━━━コホン!みやよ、あなたはこの世界で自由に生きてください!!私達神様はそれを望みます。充実した異世界ライフを送ってくださいね!そして、そのお話を死後に聞かせてください。それではまた会える日を楽しみにしておりますね!」
アルマ様は一言言い遂げると徐々に空へ昇り、身体が薄れて行ってしまった。
みやは「はい」と返事をして笑みを浮かべたのだった……。